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エロゲ世界の悪役公爵子息に転生したけど、聖女を救うと世界が滅ぶらしい  作者: 海鳴雫


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第2話 悪役公爵の振る舞い

翌朝、魔法学園はいつも通りの喧騒に包まれていた。


 貴族子弟たちの談笑。

 平民特待生の緊張した表情。

 そして、どこにいても視線を集める“聖女”の存在。


 昨日と同じ光景のはずなのに、俺の目にはすべてが違って見えた。


 ――もう、引き返せない。


 それを自覚した瞬間から、行動は決まっている。


 廊下を歩く俺の足音に、周囲の空気がわずかに変わる。

 公爵家。

 それだけで、この学園では一種の圧力になる。


「……見たか? グラントヴァル公爵子息だ」


「また何かやらかすんじゃないか?」


 ひそひそとした声が、あえて耳に入る位置で交わされる。


 構わない。

 むしろ、好都合だ。


 俺は誰とも言葉を交わさず、目的の教室へ向かった。


 魔法理論基礎。

 原作でも序盤の重要イベントが集中する授業だ。


 教室に入った瞬間、視線が集まる。

 その中に、はっきりとした一対があった。


 リリアだ。


 昨日と同じ、少し疲れたような微笑み。

 だが今日は、俺と目が合った瞬間、ほんのわずかに表情が硬くなった。


 ――それでいい。


 俺は何も言わず、最前列の席に腰を下ろす。


 一行改行


 授業が始まり、教師が魔力循環について説明を始める。


 その途中、事件は起きた。


「……っ」


 後方で、誰かが短く息を詰まらせた。

 振り向かなくても分かる。


 魔力暴走の兆候。


 原作知識通りだ。

 基礎が甘い平民生徒が、魔力制御に失敗する。


 そして――本来なら、ここで聖女が癒す。


 ざわめきが広がる教室。

 教師が制止の声を上げるより早く、リリアが立ち上がった。


「大丈夫です。私が――」


「座れ」


 短く、冷たい声が教室に落ちた。


 全員の視線が、俺に集中する。


 リリアが驚いたようにこちらを見る。


「で、ですが……」


「教師がいる。規則もある。勝手に動くな」


 言い方は、完全に悪役だった。

 わざとだ。


 教室の空気が一気に冷える。


「公爵子息、言い過ぎではないか」


 教師が眉をひそめる。


「彼女は聖女だぞ。癒しを――」


「癒しが万能だと思っているなら、この授業は不要ですね」


 教師の言葉を遮る。


 数人が息を呑んだのが分かった。


 ――嫌われる。

 それでいい。


 一行改行


 結局、教師が制御魔法で事態を収めた。

 大事には至らなかったが、教室の空気は完全に俺を敵に回している。


 休み時間。


「ちょっと、いいですか」


 声をかけてきたのは、原作主人公――

 勇者枠の少年だった。


 平民出身。

 実直で、正義感が強い。


 だからこそ、厄介だ。


「君のやり方は間違っている」


 真正面からの言葉。

 逃げも、打算もない。


「彼女は人を救うためにここにいる。止める理由が分からない」


 正しい。

 この世界の価値観では、間違いなく。


 だから俺は、笑わなかった。


「分からなくていい」


「……は?」


「分からないまま、正義を貫け。俺は邪魔をする」


 教室が静まり返る。


「それが――役割分担だ」


 勇者は、理解できないという顔をしていた。


 一行改行


 その日の放課後。

 中庭で、リリアとすれ違った。


 彼女は少し迷った後、立ち止まる。


「……なぜ、あの時」


 問いかける声は、責めるものではなかった。

 それが、余計に胸に刺さる。


 だが俺は、立ち止まらない。


「君は救う側だ。それ以外を考えるな」


「それは……」


「考えなくていい」


 冷たく、突き放す。


「余計なことを考えると、壊れる」


 誰が、とは言わなかった。


 リリアは、それ以上何も言えず、俯いた。


 一行改行


 自室に戻り、窓の外を見下ろす。


 今日一日で、俺は確実に“悪役”になった。

 評判は落ち、信頼は削れ、敵は増えた。


 それでいい。


 これは、序盤だ。

 まだ、世界は壊れていない。


 ――壊させないために、俺は嫌われる。


 誰にも理解されなくても。


 それが、この物語での正解だからだ。


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