理由
一瞬の出来事だった。
堅い何かに体を噛まれ、空を飛び、この白い建物まで連れて来られた。
悠は恐怖よりも、
何故自分だけが連れて来られたかということに
意識がいっていた。
ひと際高い白い建物の白い前庭に
獅子は降り立つと、
口からそっと悠を地面に置いた。
キィ――
建物の玄関の扉が開いた。
カツン……カツン……
ゆっくりと少年が近づいて来た。
2~3歳位年上に見える
白い髪に皮膚に服に全てが白いその少年は美しい姿だった。
優雅に歩いてくる姿を見ながら
悠はアカツキノ大陸に上陸した時のことを
思い出していた。
なぜこんなにも閑散としているのだろう。
ロボットも姿も他のヒューマノイドの姿も見えない。
軋む機会音が聞こえてくるだけの寂しさを覚える景色。
導かれるよう誘導されているように思える感覚。
全てが完全であるような心象。
人である自分自身が異物のようにさえ思えたことを。
それらの感覚、感情が全て
その少年に覚えるものと同じであり、
そのものだった。
悠は深く息をすることができなかった。
前庭に座り込んだまま、
少年がこちらに歩いてくる姿から目を離せなかった。
「君と話がしたかったよ、悠」
座ったままの悠に手を差し伸べながら
少年は話しかけた。
悠はとても自然に、その手を握り立ち上がった。
その手は、温かくも冷たくもなかった。
白く透き通った美しい目を見ながら
「僕を知っているの?」
と尋ねた。
「だって僕はジェノコードだもの。全て知っているさ」
少年は表情も変えず答えた。
そして、悠の手を取ったまま、
建物の中へと導いて行った。
一階の奥の部屋へと入っていくと
見覚えのあるような部屋があった。
「この部屋から、ジェノコードもコードノヴァも全てが生まれたんだよ」
その言葉に、悠は記憶が瞬時に蘇った。
ソラクアで高祖父と会った研究所の部屋と似ていたことに。
(ここからはじまったんだ……)
悠は、ゆっくりと部屋の中を見回した。
微かにこの部屋だけに色彩が残っていた。
「この建物は源家が作った研究所だったんだよ」
悠は聞きたかったことを尋ねた。
「なぜ、僕だけをここに?」
少年は表情も変えず答えた。
「君こそアカツキノ大陸の王に相応しいからさ」




