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求古綺譚:Lucky Lore  作者: いろは
消えた大陸: The disappeared continent【第五章 第一部】
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封印の中のメッセージ

 五人は(みお)王妃の方を見ていた。


 (りん)国王が尋ねた。

「どうやって封印を解くのだ?」


 澪王妃は、右手の中指から指輪を外し、

 左手の手のひらに乗せた。

「この指輪が封印を解く鍵になります。言葉が失われてしまうことも想定して、封印を解く言葉と同じ音がこの指輪に仕掛けられています」


 澪王妃が、テーブルに置かれていた

 二つのネックレスを自分の手元に引き寄せた。

 ネックレスの白い丸い玉の近くに指輪を持っていった。

 指輪の裏面で何かを探っているようだった。


 カチャリ――


 指輪から小さな音がすると、

 聴いたことのない音が聞こえた。

 短く高い音だった。


 キィ…カチャ――


 ネックレスの白い丸い玉から音が聞こえ、

 ネックレスからポロリと外れた。


 (ゆう)が、墓標から持ってきた方のネックレスの中を確かめた。

「何も入ってないです……」


 倫国王が、澪王妃から貰ったネックレスの中を確かめた。

「こちらは……チップが2枚入っている」


 白い丸い玉を左手のひらに向けて

 2つの小さなチップを出した。


 それは数ミリの小さなチップだった。


「こちらは記録再生用のチップですね」

 (たまき)が、一方を指差して言った。


「再生しよう」

 倫国王がテーブルの横を押すと、

 テーブルの中央から小さな箱が出てきた。

 その箱の非接触スイッチに指をかざすと

 チップを入れるスペースが空いた。

 そこにチップを入れると、自動的に閉まり

 青い光が出てきた。


 ぼやっとした青い光は

 すぐに人物の輪郭を現した。


 悠も環も倫国王もその人物が、

 ソラクアの研究所で会った悠の高祖父(こうそふ)だと直ぐに気がついた。


『私は源渡(みなもとわたる)源家(みなもとけ)が代々研究しているヒューマノイドは未来への希望でもある。だが、人がつくるものは完璧ではない。時には予想もしない結果も生むことがあるのは歴史を振り返れば分かる。だからこそ、この研究をはじめた人物が、研究を無効にするコードをこのチップに入れた。これを使うことがないことを願うが……万が一、ヒューマノイドを止めなくてはならない事態になった時は、これをアカツキノ大陸のジェノコードに読み込ませるのだ。それで全てが自動消滅される。このチップを決してジェノコードに気づかれるな――』


 ブォンと小さな電子音がなり、青い光も消えた。


陽向(ひなた)は……ジェノコードは、これを探していたんだ」


 悠が倫国王の持つチップを眺めながらつぶやいた。

 そして、ここにいる誰もが、

 ジェノコードが探していたチップはこれだと本能で分かった。


「これを元のネックレスに戻せるか?」

 倫国王が手のひらを差し出し、澪王妃に尋ねた。


「はい」

 澪王妃は倫国王の持つチップを白い丸い玉の中に戻し、

 金具を回してネックレスにつけた。


「封印は解いていますので、ここを回すといつでも開けられます」

 そう言いながら、倫国王にネックレスを渡した。

 倫国王はネックレスを受け取り、

「ひとまず私が預かろう」

 と言いながら再び首に掛けた。


羽国(ばこく)へ行き、アカツキノ大陸へ行く方法を探ろう」

 倫国王の言葉に、悠、環、志々度(ししど)総隊長、ゼンは頷いた。


 澪王妃は、ふと窓の外に目を向けると

 薄暮(はくぼ)の頃だった。


「日も落ちてきました。今日は、王宮でお休みになってください。羽国に向かうのは明日の朝になさってはどうでしょう」


 澪王妃の言葉に、五人は窓の外を見た。


「もう、こんな時間か……。今から行っても休んでいるだろうな。皆、今日はここで休んでくれ。食事と部屋を用意しよう」


 悠、環、志々度総隊長、ゼンはお互いの顔を見ながら、

 同意するように頷き合った。


 窓の外は見る見るうちに暗くなっていった。

 窓の端から月が綺麗に見えた。


 ――早く羽国に行きたい

 ――夜がもっと短ければいいのに

 悠は、(はや)る気持ちを持て余しそうになっていた。

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