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求古綺譚:Lucky Lore  作者: いろは
消えた大陸: The disappeared continent【第五章 第一部】

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太陽の紋章 月の紋章

「月の紋様がある……」

 (ゆう)がじっと見ながら言った。


「これと全く同じだ」

 (りん)国王が、首元のボタンをいくつか外し、

 身に着けていたネックレスを外して、

 差し出した。


「えっ!?」


 悠と(たまき)が即座に驚いた声を上げた。

 志々度(ししど)総隊長とゼンも驚いた表情で

 悠と倫国王が手にする

 全く同じ二つのネックレスを眺めていた。


「これは(みお)王妃から貰ったものだ」

「ネックレスについて何か聞いているのですか?」

 悠が尋ねた。

「いや、お守代わりに貰ったものだった……一度、話を聞きに戻るか」

 悠も環も、もっと知りたいという表情をしていた。

「志々度総隊長、王宮に戻る。頼む」

「承知いたしました」

 志々度総隊長が、パン!と両手を叩くと、大きな陶器の壺が出てきた。

 倫国王、悠、環、ゼンと順番に壺の中へ飛び込んでいった。

 志々度総隊長が、壺の中に入ると、スッと壺の姿は消えた。


 倫国王は、スッと壺の中に入ったかと思うと、

 直ぐに地上に飛び出た。

 続けて、悠、環、ゼンと壺の中から飛び出てきた。

 最後に、志々度中隊長も壺の中から飛び出てきた。

 壺の姿がスッと消えた。


 王宮の建物の裏に出ていた。

「庭の方から王妃の居室へ行ってみよう」

 倫国王の後をついて、五人は東の庭園の方へ歩いて行った。

 東の庭園へ行ったところで人影が見えた。


「倫国王!」


 嬉しそうな声で、澪王妃が速足で五人のところまで来た。


「澪、ここにいたのか」

「お早いお帰りですね。皆様もご一緒なのですね」

「まだ途中なのだが、澪に尋ねたいことがあって寄ったのだ」

「尋ねたいことですか?」


「このネックレスのことだ」


 倫国王が首からネックレスを外した。

 そして、悠がポケットからネックレスを出した。

 二つのネックレスを目にして、

 澪王妃の表情が固まった。


「ここでは……客間に参りましょう」


 五人と澪王妃は客間に行くと、

 ソファに座った。


「もう一つのネックレスは誰が持っていたのでしょう?」

 澪王妃が、五人の顔を見ながら尋ねた。


「名前のない森の源家(みなもとけ)の墓標に隠されていました」

 悠が手に握っていたネックレスをテーブルの真ん中に

 そっと置きながら答えた。


「そうですか……源家で守られていたのですね」

 ほっとした様子で答えた。


 倫国王も、手に持っていたネックレスを

 その横にそっと置いた。


 澪王妃はネックレスが揃って置かれたのを見た後、

 隣に座る倫国王の顔を一目見て、話はじめた。


「実は、このネックレスの真の意味を知ったのは、結婚式の前日でした。それまでは、宇田国(うたこく)の王妃が代々継承するネックレス以外の意味があるとは思ってもいませんでした。ただ、真の意味を知っても、倫国王がお持ちになっている限り、きっと本来の役割が果たせると思い、お渡ししたままにしておりました」


「真の意味とは?」

 倫国王が尋ねた。

 四人は、二人の言葉を聞き逃さないよう静かに聞いていた。


「アカツキノ王族とツクヨミノ王族のことはご存じでしょうか?」


「あぁ、源当主から聞いた。消えた大陸は、アカツキノ大陸だということも」


「そうですか。では、我がツクヨミノ王族の話からいたします。(いにしえ)からアカツキノ王族と五家の方々は、守紋(しゅもん)の結びはイメージの力です。ツクヨミノ王族は、守紋の結びは“言葉”なのです」


「守紋との結びつきが、言葉でできるのか……」


「ええ、かつては。ただ、その言葉はもう途絶えてしまい、ツクヨミノ王族は守紋を扱えなくなりました」


 澪王妃が、右手の中指から指輪を外して、

 ネックレスの傍に置き、五人に見せた。


「これは、結婚式の前日、母から受け継いだ指輪です。ネックレスと共に代々、王妃に継がれてきたものだそうです」


 指輪には、美しく白く輝く石がついていた。

 ネックレスと同じように三日月の紋様(もんよう)がうっすらと見えた。


「ツクヨミノ王族の証である“月の紋章”です。アカツキノ王族は、“太陽の紋章”です」

 澪王妃が、倫国王の目を見た。


「アカツキノ王族とツクヨミノ王族は、この太陽と月が象徴するように、二つの王族で世界の均衡を守っていたのです」


 澪王妃が、五人の顔を見て静かに話しを続けた。

「ここからがネックレスの真の意味です。私の母の祖母は、源家の出身です。このネックレスの中にあるものは、母の祖母が源家から託されたものです。母の祖母はこのネックレスにそれを封印し、代々守り続けてきました」


「ネックレスの中にあるものは、何だ?」

 倫国王が尋ねた。


「“世界の均衡を守るもの”とだけ聞いています。母が言っていました。このネックレスは、月の守紋の力で、持っている本人が望まない限り、体から離すことができない封印をしていると。なので再会した時、母は私がネックレスをしていないことに気づきましたが、私が望んで倫国王にお渡ししていることを悟っていました。」


「そのような封印をしていたとは……誰かに奪われることをそこまで恐れていたのか」


「はい。それから、源家にあったネックレスの中は空です」


 五人は驚いた顔をした。


「万が一に備え、ダミーを作っておいたそうです」


「そこまで一体何を警戒していたのだ?」


「源家から託されたということは、高祖父がしていた研究と関係あるんじゃないでしょうか?」

 ずっと沈黙して聞いていた悠が、強い口調で言った。


「そうだな。澪の母の祖母となると、時代も同じくらいだ」

 澪王妃は、倫国王の目を再び見た。

 倫国王はそれに気づいた。


「……もしかして」


「はい。今日がこのネックレスの封印を解く時だと思います」

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