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求古綺譚:Lucky Lore  作者: いろは
消えた大陸: The disappeared continent【第五章】

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行動を伴え

(やかた)の裏には稽古場のような広い場所があった。

奈国(なこく)よりも寒くはないヒンヤリした空気が、

高ぶった体に心地よかった。


「言葉を重ねるよりも、行動で見てもらうのが一番いいかなって」

(たまき)が、横にいる(ゆう)に話しかけた。

「うん、そうだね」

柔軟を軽くしながら、悠が答えた。


ゼンが剣を抜きながら、低い声で二人に言った。

「実践だと思って、来い」


悠と環は守紋符(しゅもんふ)を出した。

悠は“雪輪兎(ゆきわうさぎ)”の守紋符を手のひらに置いた。

すると、それはくるりと回転し、

ポンッと一瞬で守紋符から真っ白い雪輪と兎の姿が現れた。

雪輪はたちまち結晶となり、

剣の形へと変化し、悠は手に持った、


環は“鱗桜蝶(うろこさくらちょう)”の守紋符を手のひらに置いた。

すると、それはくるりと回転し、

ポンッと一瞬で守紋符から透き通る鱗と桜と薄黄色の蝶の姿が現れた。

鱗はたちまち集まり、

剣の形へと変化し、環は手に持った。


(ほぉ……修練の成果か)

(りん)国王は、守紋(しゅもん)の扱いが明らかに変化し、

顔つきも姿勢も良くなっている二人の様子に感心していた。


悠が、地面を蹴り上げ、ゼンの懐へ飛び込んだ。

キンッ!

ゼンは剣で受け止め、体ごとはじき返した。

悠は再び、剣を振り上げ、ゼンに向かった。

キンッ!キンッ!

全てを見切り、ゼンは悠の剣を受け止めながら、

環を誘うように移動していた。

環の間合いへと入った時、

剣を構えながら環は、ゼンの懐へ飛び込んだ。


それを待っていたかのように

ゼンの目が一瞬笑ったかのように見えたのを

環は見逃さなかった。

しかし、気づいたときには遅かった。


ボォォオォ!とゼンの剣から大きな炎が立ち上がり

悠と環の剣を巻き込み、一瞬で溶かした。


――剣が守紋符なのか!?


環は、炎が立ち上がる瞬間、

剣に火炎宝珠(かえんほうじゅ)紋様(もんよう)が彫り込まれているのを横目に見た。


悠と環は、後ろに飛び下がった。

「火炎宝珠の守紋!?」

悠がゼンの剣を見ながら言った。


臙国(えんこく)刀匠(とうしょう)の剣だぞ!(あなど)るな!」

ゼンが悠の方に飛びかかっていった。

悠は急いで雪輪で幾層もの盾を作ったが、

ゼンの剣の一振りで払われた。

環は桜吹雪でゼンの視界を遮り

悠への攻撃を止めようとした。

ゼンは、剣を横に一振りし

あっという間に桜吹雪を消し去った。

そのまま剣を振りかぶり悠へと振り下ろそうとした瞬間、

真っ白い兎が悠の前へと飛び出した。

全てが一瞬の出来事だった。


ゼンは、兎の上でピタリと剣を止めた。


「ここまでだ」

ゼンはそう言うと、剣を鞘に納めて数歩下がった。


悠と環は、守紋を守紋符に変えてポケットにしまった。

「実力が違いすぎる……」

環がぼそっと口にした。

「うん……」

悠も大人しい声で言った。


ゼンが、二人の方に歩いてきて

ポンと悠と環の頭に手を置いた。

「知識を得るだけじゃなく、言うだけじゃなく、行動で示せるようになれ。何かを守りたいならその力をつけろ」


悠と環が、悔しそうな闘志あふれる目でゼンを見た。

ゼンは、ニッと笑うと手を離した。


「おまえたちに力があるのは分かった!だが俺も一緒に行く!タン、いいだろ?」

大きな声で志々度(ししど)総隊長の方を振り向きながら言った。


志々度総隊長は、確認するかのように

横に立っている二人を見た。

焔当主も倫国王も頷いた。

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