六古衆
「焔当主、はじめまして。宇宇国の国王、倫と申します」
「はじめまして、悠です」
「はじめまして、環です」
焔当主の傍に行き、一礼をしながら挨拶をした。
「堅い挨拶は抜きだ。六古衆も呼んでおる。すぐ来るだろう」
その時、トン……トントンと扉を叩く音が聞こえた。
焔当主は、トントン……トンと椅子のひじ掛けを叩いた。
ガチャリと扉が開くと、五人の人物が入ってきた。
焔当主は、座っていた椅子を部屋の隅に動かすと
「外は寒かったろう。暖炉の前で話そう」
焔当主に促されるまま、
全員が、暖炉の前のフカフカの敷物の上に座った。
「まず、自己紹介だな」
焔当主が、対面に座る倫国王の方を見た。
「宇宇国の国王、倫と申します」
「悠です」
「環です」
座ったままで、一礼をしながら挨拶をした。
続いて、焔当主が左右に座る人物の方を見た。
「剣術のゼンです」
赤肌の寒さに強そうなしなやかな出で立ちの赤い短髪の男性だった。
「柔術のセトです」
髪を後ろに縛り女性かと思うほど肌艶の美しい男性だった。
「薬術のトコです」
焔当主の次に大きい体格のどっしりとした日に焼けた男性だった。
「芸術のシガです」
この中で一番長い黒髪をサラリとなびかせた声の美しい男性だった。
「戦術のビゼです」
物静かな眼鏡をかけた男性だった。
「忍術のタンです」
悠と環は驚いて志々度総隊長の方を見た。
ニッと志々度総隊長が笑い返した。
焔当主が、口を開いた。
「倫国王、我らは有事の時には、即座に動けるよう待機しております」
倫国王は、頷いた。
「少し話は長くなるが……」
倫国王は、この一年半に起こった出来事を話した。
そして、消えた大陸を探しに行くことを伝えた。
「気に入らんな」
ピリッと張り詰めた空気が流れた。
「ゼン。どうしたんだ?」
セトが、場の空気を和らげるかのように尋ねた。
「こんな子供が、麒麟児と言われているのか」
ふんっといった態度でゼンが言葉を返した。
(まずい……何か怒らせたのだろうか)
(僕、思いあがっていたのかな……)
悠と環は背中に汗が流れるのを感じた。
「あの……僕たちじゃダメでしょうか」
悠が、恐る恐る口にした。
ギロッと悠を見た。
「宿命か何か知らんが、こんな子供に背負わせるのか!と言っているんだ」
「お前はいつも言葉の使い方が粗い……」
はぁ……とセトが、口をはさんだ。
「今までは無事でいられたかもしれんが、これから先は分からん!こんな……こんな子供に。俺たち大人は何もできないのか!?」
ゼンは、イラつくように言葉を発した。
少なくとも僕たちが頼りなくて怒っているのではないんだと
思えた悠と環は、ほっとした。
「あの……僕たちと一度、手合わせをお願いしてもいいですか?」
環がゼンの方を見て小さな声で言った。
悠も、それはいい考えだと言わんばかりに、うんうんと頷いた。
「お……おぉ」
予想外の提案にゼンは少し戸惑いながらも受け入れた。
焔当主も倫国王も黙って静かに見ていた。




