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求古綺譚:Lucky Lore  作者: いろは
はじまりの守紋: The beginning【第四章 第一部】
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ジェノコード

 ――やはり、何か見落としているんだ。


 (りん)国王は、ソラクアに行き始めてから、

 長年、(かす)かな違和感を覚えていた。


 その違和感の正体が、

 “さっきの少女であること”を本能で理解した。


 止まないちらつく雪の中、少女を追いかけた。

 それは、名前のない森の方向だった。


 志々度(ししど)総隊長は、

 これほどまでに険しく青ざめている倫国王を見たことがなかった。

 それ故に、ただ事ではない気配を感じ取っていた。

 ただ、黙って倫国王の跡をついていった。


 倫国王は少女に気づかれないよう

 距離を取りながら追いかけた。

 歩きながらずっと考えていた。


 ――ソラクアで会った少女が、なぜこの時代にいる?


 ――ありえないが……ありえないことが目の前に存在しているのはなぜた?


 ――私は陽向(ひなた)に会うとき、一度だって他の人がいたことがあったか?


 ――いや、()()()()()()()()()()()()だった!


 倫国王は、陽向が“人”ではないことに確信を持った。

 少女が、名前のない森へ入った瞬間、

 くるりと振り返った。

 そして、数歩、近づいて来た。


 倫国王と志々度総隊長は

 突然のことで、ピタリとその場に立ち尽くすしかなかった。


「倫さん、久しぶり。後ろの方、はじめまして」

 少女がにっこりと笑った。


「陽向なのか?」

 倫国王が、恐る恐る聞いた。


「ええ。あなたなら研究所への道を開いてくれると思って、泳がしていたの。思った通りだったけど、私が中へ入った時は、ほしいものはなかったわ。残念」

 陽向は、ニコニコしながら答えた。


「一体、何者だ?何が目的だ?」

 人ではない陽向に、倫国王が強い声で言った。


「ふふふ、ようやく気づいてくれたのね。ここでの名前は陽向。だけど本当は、“ジェノコード”。ふふふ、教えてあげる。コードノヴァを作ったのは、私」

 陽向は、ニコニコしながら答えた。


「ジェノコード……」

 倫国王と志々度総隊長が同時に声にした。


 ――コードノヴァを作っただって?


 倫国王も志々度総隊長も初めて聞く言葉に戸惑った。


「私、チップがほしいんだけど。倫さんなら知ってるんじゃないかしら?」


「何のことだ」

 倫は警戒しながら聞いた。


「あら、研究所に入ったでしょう?アイツが隠していたチップがあったはずよ。大人しく渡してくれれば、見逃してあげるわ」

 陽向は、ニコニコしながら答えた。


(なんなんだ、この陽向の優越感はどこから来ている)

 倫国王は、陽向の自信たっぷりで余裕のある様子に

 不気味さを感じていた。


「ジェノコードも、チップも、さっぱり何のことか分からない」

 倫国王は、はっきりと答えた。


「なんだ。知らないの。じゃ、あなたもういらない」

 陽向は、無表情で言うと、

 片手を差し出しながら近づいてきた。


 志々度総隊長は、瞬間、危険だと察知し、

 倫国王の前に飛び出した。


「無駄なことを」


 陽向が、無表情に志々度総隊長の脇腹を払うと

 軽々と横に吹っ飛んだ。


「ヒューマノイドか……!」


 倫国王は、その力と無機質さに、即座に察した。

 そして、志々度総隊長は、失いそうな意識の中、

 ギリギリで倒れず踏みとどまった。


「ふぅ……」

 志々度総隊長は、深呼吸すると

 陽向を真っすぐに見た。

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