繋がれた虎
竹の向こうで虎は左右にゆっくりと行ったり来たりしていて、こちら側に来る気配はなかった。手に持った棒をぎゅっと握って、一歩一歩ゆっくりと近づいて行った。
ジャラ……ジャラリ……。
金属の音が聞こえてきた。よく見てみると、虎の後ろ右足に鉄の鎖が繋がっていた。
虎は止まってこちらを見た。大きく力強い目だった。鎖の繋がっている先を目で追うと、地面の中から鎖が出ているようだった。虎の右足に金属の輪っかのようなものがはまっていて、それから鎖が繋がっていた。
ゆっくりと虎の足元へ近づいていった。虎は動かなかった。右足の金属の輪っかを見ると、何かマークのようなものがあった。玉の周りに炎が出ているようなマークだった。
(……これと同じマークを見た)
握っている棒の上の方を見た。炎が立ち上がる下で、同じマークがあった。虎の方を見ると、こちらをじっと見ていた。このまま近づけてみようかと思ったが、熱いんじゃないかと思い直した。そして、棒を振って火を消してみようとしたが消えなかったので、地面の中に差してみたが抜くとまた火が出てきた。
(うーん……)
試しにそろりそろりと棒の先の炎を輪っかのマークのところに近づけてみた。そっと虎の方を見てみた。まるでそれが正解だと言うように虎は全く動かなかった。
ポンッ。
鎖が外れて、炎も棒も鎖も消えた。
虎は咥えてた巻物をこちらにころころと転がした。
「金襴簿を見て」
いつの間にか雪輪兎が足元まで来ていた。
ポケットに入れていた金襴簿を出してみた。巾着のマーク一つだったのが三つに増えていた。
「その袋の紋様は、金嚢、火炎宝珠、巻物の紋様よ。宝尽くしと言われる古くからの紋様で、関りがあるとそこに紋様が出るの。数が増えると守護の力も強くなるわ」
初めて見たり聞いたりすることばかりで、混乱気味だったが、怖さはなかった。
「さぁ、ソラクアへ行きましょう。」
雪輪兎と竹虎は、くるりと回転すると守紋符になり、右手の前でふわりと浮かんだ。それを右手で掴むと、金襴簿にしまった。
(行こう)
悠は、地面に広げた巻物へ足を置くと、するりと巻物の中へ体が沈んでいった。