めぐり逢う二人
宇宇国では美しい紅葉の季節が終わり、
空気も冷え込み、冬がはじまった頃だった。
「源当主、お久しぶりです。今日は?」
王の間で、倫国王が突然訪ねてきた源当主に尋ねた。
源当主が挨拶の礼をした後、
「倫国王、戴冠式以来です。今日はお知らせしたいことがございます」
と、ゆっくりと伝えた。
「どうか、二階のお部屋まで一緒に来ていただけますか」
倫国王は王座から立ち上がり、
王の間を出て、源当主の後をついていった。
(……源当主は信頼できる一人だ。おそらく大事な用件だろう)
階段を降りて、二階の部屋の扉の前で止まった。
「ここは、来賓客の控えの間だな。誰かいるのか?」
倫国王が言い終わるかどうかという時に
源当主が扉を開けた。
――!!!
倫国王は目の前に立っている人物を見て、目を疑った。
「これは一体……」
入口に立ったまま、言葉にした。
逆光で、窓の前に立つ人物の顔は見えないが
倫国王は、その姿、その纏う空気に
一目で誰かが分かった。
そして、鼓動が高鳴っていった。
「澪殿を私、源家の養女としてお迎えいたしました」
源当主が静かに口を開いた。
「養女?」
「はい。宇宇国との縁談を進めていただければと思っております」
「……!」
倫国王は、横に立っている源当主の顔を見た。
源当主は、倫国王の方に体を向けて続けて伝えた。
「これは明王子の提案でもあるのです。源家でお預かりして約半年、今も勉学と稽古に励んでおります。我が家の蔵書に書いてあった昔の事例を読んで思いついたそうです」
「昔の事例?」
「はい。随分、昔のことのようですが、王族に嫁ぐ際、格式を合わせるために他家の養女となり、嫁ぐこともあったそうです。僭越ながら、これまでの経緯は前国王から直接伺いました。また、前王妃から澪殿がどのようなお妃教育を受けてきたかも伺っております。宇宇国をお支えする王妃としても、澪殿は申し分ないかと思っております」
(……何より今も想い合うお二人を引き離すのは忍びない)
源当主は、本心から伝えたい言葉はあえて飲み込んだ。
倫国王は、突然のこと過ぎて思考が回らなかった。
忘れようとしていた胸の奥が熱くなっていく感覚と
愛おしく思う気持ちで、満ちていくのが分かった。
カツン……カツン……
倫国王は、一歩一歩、前に歩いて行った。
そして、手を取った。
「澪、我が王妃となり、この宇宇国を共に支えていってくれますか?」
「はい……」
――謹んでお受けしたいと存じます。
あぁ、きちんとお応えしたいのに、
言葉にしたいことはたくさんあるのに、
澪は、今は胸がいっぱいで
それ以上の言葉を出せなかった。
そして、扉が開いた瞬間から、
澪は倫国王の目を見つめていた。
倫国王は、澪の目の輝きに
心からの喜びが伝わってくるのが分かった。
源当主はそっと扉を閉めた。
「年甲斐もなく、話過ぎたかの」
ぼそっとつぶやくと廊下を歩いて行った。




