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求古綺譚:Lucky Lore  作者: いろは
はじまりの守紋: The beginning【第四章 第一部】
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学ぶ力を持て

 修練の二日目、

 琴滋(ことじ)に案内された扉を開くと

 床から天井までぎっしりの本で埋まっていた。

 まるで巨大な図書館のようだった。

「今日から、午前中はここで座学(ざがく)。午後から昨日の部屋で実践だ」

「すごく古い本から新しい本まであるんですね」

 (たまき)が本の前をゆっくりと歩きながら話した。

「琴滋さんは全部読んだんですか?」

 琴滋の方を振り返って、少し興奮気味に環が尋ねた。

「大体は目を通したかな。今日は壌家(じょうけ)の話もしよう」

 琴滋がどさっと数冊の本を置いて座った四人掛けの机に、

 (ゆう)と環も座った。


「壌家は(いにしえ)から錬金術(れんきんじゅつ)守紋(しゅもん)たちを補佐している。これは一番古い錬金術の本だ。」

 琴滋が開いた古書(こしょ)は、悠も環も読めない文字が書かれていた。

 絵も見たことないものばかりだった。

「代々、試行錯誤しながら様々なツールを作ってきた。例えば、守紋符(しゅもんふ)をしまう金蘭簿(きんらんぼ)や、(おうぎ)巻物(まきもの)などの移動具(いどうぐ)もそうだ」

「えっ、琴滋さんが作ったんですか?」

「私が作ったのもあるし、代々の壌家のものが作ったものもある。金蘭簿を出してごらん」

 悠と環が金蘭簿を出した。

「これは、守紋符と移動具が傷つかないよう持ち歩けるように作ったんだ」

 琴滋が、悠の金蘭簿を手に取った。

「ちょっと借りるよ」

 そう言うと、両手で金蘭簿を包み込むように持ち、

 パッと両手を開いた。

 袋から小さな手帳に変わっていた。

「これは袋にもなるし、カードホルダーのような手帳にもなるんだ。探したいものが見つけやすいように、どちらで使ってもいいようになっている」

「凄い……」

 悠が手帳になった金蘭簿のページをめくった。

「午前中の座学の時間だけで教えられることは限られる。空いた時間はいつでもここに来ていいから、好きなだけ好きな本を読むといい。今の金蘭簿の使い方もこの本に載っている」

 琴滋が別の本を開きながら話した。


「知識は裏切らない。物事をよく知るんだ。行動するために、学ぶ(ちから)を持ち続けるんだ」

 琴滋は真剣な目で、悠と環を見た。

 二人は瞬きもせず、琴滋を見ていた。


「守紋について書いている一番古い本はどれですか?」

 環が尋ねた。

 ――鋭いな。

 琴滋は椅子から立ち上がると、

 一番奥の壁際(かべぎわ)に行き、二冊の本を手にして戻ってきた。

「私の知るところでは、この二冊がそうだ。この本でも書かれているが、守紋や守紋符は錬金術でも作れない。それは自然の(ことわり)だからだ」

 悠が口を開いた。

「僕、一年前のあの時、今教えてもらっているようなこと、もっともっと知っていたら、もっともっといい選択や行動ができていたんじゃないかと思うんです……」

「そうだね、僕もそう思う」

 環も同調していた。

「そうか。もう一度言おう。行動するために、学ぶ力を持ち続けるんだ」


 悠と環は、かつてなく一心(いっしん)に学んでいた。

 学びたい、

 知りたい、

 もっと動けるようになりたい、

 何一つ取りこぼしたくない、

 と心から湧き上がってくる

 強く熱い想いがあったことに、

 本人たち自身がそのことに驚いてもいた。

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