屏風の中
雪輪兎の後を入っていくと、中は暑くも寒くもなかった。
少し薄暗く灯りが点々と続いているのが見えた。灯りはゆらゆらと揺れていた。
「これを持って」
雪輪兎は、ゆらゆらと揺れる灯りの方を指した。その灯りの方へ進みよく見ると緋色にゆらゆらと光る炎のようだった。
(なんだ、炎ホログラムか……)
(あれ……でもなんだか温かいな)
温かさを確かめようと炎に手を近づけた。
「あぶない!」
雪輪兎の大きい声に手を止めた。
「それは本物の炎よ。触れると火傷するわよ!」
「本物?」
「コードノヴァの世界ではデジタルの光や炎だけど、ソラクアの世界は本物だから熱いのよ。その下の棒を持って。それを灯りにして進むの」
棒を持って、雪輪兎の後を追った。棒も多分、ソラクアの世界のものだろう。確かめたかったが、これ以上は聞くのをやめた。
少し進んでいくと目の前に一面、青々とした竹林が現れた。雪輪兎の後ろに立ち止まると、ヒュゥーと風が吹き竹がさらさらと揺れた。 竹と竹の隙間から黄色と黒の縞模様が、ゆったりゆたっりと動くのが見えた。少しだけ近づいてよく見てみると、虎が右に左にゆっくりと歩いていた。
雪輪兎のいるところまで戻って
「虎がいる」
と雪輪兎の方を見た。
「よく見て」
「何か咥えているようだね」
「虎が咥えている巻物が、ソラクアへの入口よ」
「え?」
それ以上の言葉は出てこなかった。
(あぁ!母さんによく考えてから行動しなさい。といつも言われていた)そのことを思い出した。 そして、ここにいることを少し後悔した。
「どうしたらいいの?」
小さな声で雪輪兎に尋ねた。
「どうしたいかはあなた次第」
よく考えてから――という言葉を思い出した。 昨日の出来事から思い出してみた。このまま行くことも、帰ることもできる。自分の中に帰るという選択がほんどないことに気がついた。おなかの下あたりが熱くなるのを感じた。ぎゅっと炎の棒を握った。少し炎が大きくなった。
「行ってみるよ」
悠は、虎の方へ 一歩踏み出した。