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求古綺譚:Lucky Lore  作者: いろは
はじまりの守紋: The beginning【第四章 第一部】

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師匠

 (ゆう)(たまき)は、名前のない店にいた。

 カウンターに座っていた。

「夏休みも、あと1か月かぁ。戴冠式(たいかんしき)からもう10日も経ったよ」

「そうだね。(りん)さん、元気かな」

「今日は僕たちだけかな?相変わらず、呼び出しは蝙蝠(こうもり)だったよね」

「慣れてきたけどね」

 悠と環が楽し気に話しながら待っていた。

「待たせたね」

 カウンターの奥から志音(しおん)ともう一人出てきた。

「悠、環。紹介しよう。琴滋(ことじ)だ。錬金術(れんきんじゅつ)壌家(じょうけ)で一番の腕前だ」

「はじめまして。悠です」

「はじめまして。環です」

 スラリとした綺麗な顔立ちであり大人な女性の姿に

 悠と環は背筋が伸びた。

「はじめまして。今日からビシビシと鍛えるからね」

「え?」

 悠と環は、きょとんとした顔だった。


 驚く二人に志音が丁寧に説明をした。

 今日から二人は夏休みの間1か月集中で、

 ここ名前のない店で守紋(しゅもん)の修練をしてもらいたいこと。

 師匠は琴滋であること。

 親には許可を取っていること。

 五家の当主たちは、近いうちに起こるであろう不測の事態に

 備えておきたいと考えていること。

「二人はどうしたい?」

 志音が改めて聞いた。

「もちろん、します!」

 悠が即答した。

「僕もします。……だけど、僕はお役に立てることがあるのでしょうか?」

 環が少し不安げに聞いた。

「役に立てるとか、立てないとか考えなくていいんだ。ただ、四瑞(しずい)と接した人はほとんどいない。だから、君たちが守紋の知識を持ち、力を高めておくのは今後、無駄にはならないと思うんだよ」

 琴滋がゆっくりとした口調で話した。

「そうですね」

 環はかすかな迷いが吹っ切れた顔で答えた。

「では早速、部屋に行こう」

 琴滋が、店の奥に二人を案内した。


 扉を一つ開けると、

 そこは木造の古い建物の中のようで細い廊下があった。

 両壁(りょうかべ)には、所狭しと古い掛軸(かけじく)扁額(へんがく)や額などが飾られてあった。

 悠と環は、はじめて見るそれらをキョロキョロ見ながら歩いた。

 琴滋はそれらに目もくれず、まっすく歩いて行った。

 そして、二つ目の扉を開けた。

 ――うわっ。

 悠と環は思わず声が出た。

 そこは広い部屋だった。

 ここでも所狭(ところせま)しと古いものがたくさん置かれていた。

 壺に徳利に置物に皿に花瓶にランプに時計に茶道具に

 見たことないものばかりが置かれていた。

 琴滋はそれらに目もくれず、奥へ歩いて行った。

 そして、片隅にある三つ目の扉を開けて言った。

「この部屋だ」


 ――うわぁ。

 悠と環は、また思わず声が出た。

「すごい!まるで外にいるようだ」

 悠が空や木々を見上げながら興奮気味に言った。

「これ、本物なんですか?」

 環が足元の草に触れながら聞いた。

「本物もあれば、作り物もある。この部屋は錬金術で作った守紋の修練用の部屋だ」

 琴滋は二人の前に立って話を続けた。

「二人が今、持っている守紋符を見せてくれないか?」

「はい」

 悠と環がポケットの金襴簿(きんらんぼ)から守紋符(しゅもんふ)を出した。

 悠は、“雪輪兎(ゆきわうさぎ)”と“竹虎(たけとら)”と“金烏玉兎(きんうぎょくと)”の3枚を

 環は、“鱗桜蝶(うろこさくらちょう)”と“牡丹蝶(ぼたんちょう)”の2枚を

 それぞれ、自分の手のひらに広げた。

「四瑞の守紋は四方へと飛び立ったと聞いた」

「はい。倫さんの戴冠式の時、聖剣が現れた後、飛び立っていきました」

 悠が、琴滋に言った。

「そうか。きっと聖剣(せいけん)に跡を残しているのだろう」

「そうです!剣の下の方に四瑞の刻印がありました」

 環が、琴滋に言った。

「おそらくだが、その聖剣は守紋符のような役割もあるだろう。改めて、守紋について伝えておこう」

 琴滋が、環の“鱗桜蝶”を手にした。

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