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求古綺譚:Lucky Lore  作者: いろは
守紋と宿命:Heart or Crown【第三章 第一部】
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戴冠式

 夕刻の(うち)王令(おうれい)が出され、大急ぎで戴冠式(たいかんしき)の準備がされた。

 翌日は、朝から晴れ渡った青空だった。

 王の間には、大臣たちや、軍上層部たちが集まっていた。

 ざわざわと話声がする中、

 ピタリと話声が止まった。

 シーンと静まり返った中、

 コツ、コツと足音が聞こえてきた。

 王座の横にある深紅のカーテンから、

 新しい国王が歩いて出てきた。

 最高位の正装をしていた。

 そして、王座の横に立った。


 ギィーと王の間の扉が左右に開いた。

 一人の白髪の老人がゆっくりと歩いて入り、

 続けて、二人の少年がそれぞれ、王冠と聖剣(せいけん)を手に入ってきた。

 大臣の後ろの方からヒソヒソと声が()れ聞こえてきた。

(あれが、噂の五家(ごけ)当主(とうしゅ)の一人だそうだ)

麒麟児(きりんじ)なんて本当なのか。まだ子供じゃないか)

(聖剣とはな。まやかしではないか)

聖王(せいおう)など、ただの伝説ではないか)

 井々田(いいだ)総大臣が、ギロリと後ろの大臣の方を向くと

 ピタリとヒソヒソ声が止まった。

 源当主(みなもととうしゅ)は、王座の前まで来ると立ち止まった。

 (ゆう)(たまき)もその後ろで立ち止まった。

 源当主は一礼すると、

 悠から王冠を受け取り、

 国王“(りん)”の前に一歩進んだ。

 国王“倫”は片足をひざまずき、

 軽く頭を下げた。

 源当主は、頭の上に、そっと王冠を載せた。

 国王“倫”は立ち上がった。

 そして、源当主は環から聖剣を両手で受け取った。

 その聖剣を頭を下げたまま、両手で国王“倫”に手渡した。

 国王“倫”が両手で受け取ると

 源当主は後ずさりしながら下がり、

 悠、環と共に、井々田総大臣の横に移動した。

 国王“倫”は、聖剣を片手に王座の前に立った。

 そして、聖剣を鞘に納めようと動かした瞬間、

 剣から大きな光が広がった。

 王の間全体に広がっていくほどの光だった。

「おぉ!」

 王の間全体がざわついた。

 悠や環たちは、その光の中に四瑞(しずい)の姿をチラリと見た。

 国王“倫”はゆっくりと聖剣を(さや)に納めた。

 そして、ゆっくりと王座に座った。

 王の間全体に大きな拍手と祝福の声が響いた。

 少しして、井々田総大臣が国王“倫”を「こちらへ」と促した。

 国王“倫”は、バルコニーの方へと歩いて行った。

 バルコニーに出ると

 うわぁー!と大きな歓声と拍手が広がった。

 バルコニー前の王宮の広場には、

 臣下や兵や侍女たちが集まっていた。

 皆が笑顔で祝福していた。

 国王“倫”は、応えるように右手で手を振り、

 服の下に身に着けている(みお)から貰ったネックレスに左手を当てた。


(みん)王子のことを頼みます」

 戴冠式を終え、名前のない森へ帰る源当主に、国王“倫”は話しかけていた。

「確かに、お預かりいたしました」

 源当主は一礼して王宮から出ていった。

 その後ろ姿に、国王“倫”はしばらくお辞儀をしたまま見送った。


「倫国王、僕たちも帰ります」

 悠が声をかけた。

「あぁ、ありがとう。これからも倫さんと呼んでほしい」

 悠と環は顔を見合わせて迷った顔をした。

「分かりました」

 環が遠慮がちに答えた。

 悠と環は、王宮の門から出る直前、もう一度振り返って手を振った。

 国王“倫”も笑いながら手を振った。

 空を見上げると、雲一つない

 どこまでも青い空が広がっていた。

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