表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
求古綺譚:Lucky Lore  作者: いろは
守紋と宿命:Heart or Crown【第三章 第一部】
45/78

四瑞と聖剣

 (たまき)は抱えていた玉手箱を両手で持ち直した。

 王の間にいた全員が扉の方を見ていた。

 玉手箱の白色の丸印が二つふわっと光り

 うっすらと文字が現れて消え

 金色の丸印に変わった。

「仁と義……」

 環が言った。

「全部揃った」

 (ゆう)が言った。

 その瞬間、玉手箱の赤い紐がほどけて、

 ふわりと(ふた)が持ち上がった。


 ポンッと白い煙が立ち上がり、玉手箱は消えた。

 そして、煙から何かが出てきて、大きくなった。

「亀だ!」

 悠が声に出した。

 第二王子“(りん)”は、胸のポケットが熱くなるのを感じた。

 手を入れて、守紋符(しゅもんふ)を出した。

 すると、それらはくるりと回転し、

 ポンッと一瞬で守紋符から龍、鳳凰(ほうおう)麒麟(きりん)の姿が

 部屋いっぱいの大きさで現れた。

「龍、鳳凰、麒麟、亀……四瑞(しずい)は本当にいたのか」

 国王は驚きの表情で言葉にした。

 麒麟が、第二王子“倫”の方を向いた。

「お前はこれから聖王(せいおう)と呼ばれるであろう」

 第二王子“倫”は応えた。

「私は弱い人間です。完璧でもありません。聖王に相応しいかどうか……」

 麒麟は応えた。

「長年、完全な王や将軍ばかりを探していたのかもしれない。しかし、人はいつも不完全だ。不完全だからこそ、聖王になれるのかもしれない」

「平和な世になるよう努力し続けたいと思います」

 第二王子“倫”は応えた。

「お前が辿(たど)ってきた道と教えを忘れぬよう、聖剣(せいけん)を与えよう。そして、守紋(しゅもん)は多くの人には見えぬからな。聖剣という形で聖王の象徴として扱うとよいだろう」

 麒麟が言い終わると、第二王子“倫”の手元に

 龍、鳳凰、麒麟、亀が集まって、光となり、

 龍、鳳凰、麒麟、亀の四瑞は、四方向に飛んで行き、姿を消した。

 そして、光が消えると、手元に一つの聖剣が現れた。

 剣の持ち手の近くには、

 龍、鳳凰、麒麟、亀のそれぞれの刻印(こくいん)が入っていた。

 国王は、聖剣を手にする第二王子“倫”の姿を見て、微笑(ほほえ)んだ。

 そして、王の間を後にし、王妃と共に歩いていった。


 第三王子“(みん)”は、信じられない光景を目の当たりにし、

(かな)わないな――)

 と、すっかり戦意も自惚(うぬぼ)れも消失していた。

沙々山(ささやま)総隊長、明王子を北山(ほくざん)(ふもと)源家(みなもとけ)に預けてほしい。後で、当主(とうしゅ)への手紙を書いて渡そう」

「承知いたしました」

「それから、尾々木(おおき)内大臣の件は、志々度(ししど)中隊長と対応しておく。国の外に出すとまた厄介事(やっかいごと)を起こしそうだから、しばらくここで見張りをつけておく」

 沙々山総隊長は一礼すると、第三王子“明”と兵を連れて部屋を出た。

 扉の前で、二人の兵が靴紐で両手を縛られているのを見て、

 第二王子“倫”はすぐに、悠と環が自分を真似てしたんだと気がついた。

(やはり、賢いな……)


「倫王子」

 王の間の入口に、志々度中隊長が立っていた。

「入れ」

 志々度中隊長が、第二王子“倫”の傍に来て報告した。

井々田(いいだ)総大臣が大臣室で、騒ぎになる前に、尾々木内大臣たちを抑えてくれていました」

「さすがだな。こちらは収まった。今回のことは箝口令を敷く。井々田総大臣にそう伝えてくれ」

「承知いたしました」

 志々度中隊長は一礼して、王の間を出ていった。


 悠と環の傍に歩いていった。

「ありがとう」

「四瑞が揃いましたね」

 悠が嬉しそうに話した。

「美しい剣ですね」

 環が聖剣の刻印を眺めながら言葉にした。

「明日、王位継承の戴冠式(たいかんしき)となるだろう。二人には是非、見届けてほしいのだが」

「もちろんです!」

 悠と環は嬉しそうな声で答えた。

「あ、家に連絡したいんです。心配すると思うので」

 環が言った。

「もちろんだ。使いをすぐに送ろう。まずは食事を一緒にしないか?」

 三人は王の間を出た。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ