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求古綺譚:Lucky Lore  作者: いろは
守紋と宿命:Heart or Crown【第三章 第一部】
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反乱

 部屋の奥に障子戸(しょうじど)が見えた。

 三人は、障子戸を開けて出た。

 すると右側に階段があった。

 五階に上がると、

 広い部屋があった。

 そして、部屋の真ん中にはポツンと一つの大きな木製の引き戸があった。

 三人は引き戸の前に歩いて行った。


 第二王子“(りん)”は引き戸の引手(ひきて)に手をかけ、開けてみた。

 が、戸はぴくりとも動かなかった。

「やはり、簡単には開かぬか……」

 (ゆう)は黒く丸い引手に彫り込みがあることに気が付いた。

「ここ、何か模様が彫られてませんか?」

「ほんとだ」

 (たまき)も引手に顔を寄せて確かめていた。

「僕、この火炎宝珠(かえんほうじゅ)と同じ模様が金蘭簿(きんらんぼ)にあります」

 悠が金蘭簿を出して二人に見せた。

「同じだな」

 第二王子“倫”が引手と見比べながら言った。

 悠が金蘭簿に手を入れて、中から何かを掴んで出した。

 手のひらには、ふわりと火炎宝珠が浮かんでいた。

 そして、ゆっくり引手に近づけようとした。

「倫王子!!!」

 三人はびっくりして後ろを振り返った。

 そこには、汗びっしょりで、息を切らした男の人がいた。


志々度(ししど)!?」

 第二王子“倫”が驚きの顔と共に声を発した。

(みん)王子が反乱を起こしました!国王のお命が危険です!」

 ――くっ。

 第二王子“倫”は目を固くつぶった。

 が、すぐに目を開け

「二人は先に進むんだ。私は国に戻る」

 二人の目を見ながら、迷いなく早口で言った。

「僕たちも一緒に行きます」

 悠は火炎宝珠を金蘭簿にしまいながら言った。

 環も戸を背に一緒に行こうとしていた。

「分かった」

 第二王子“倫”は玉手箱を抱えたまま、

 志々度中隊長のところまで走っていった。

 悠と環も走って後をついて行った。

(なぜ、志々度中隊長はここに来れたのだ?いや、今はそのことよりも、国王の元へ……)

 第二王子“倫”の頭の中は、一度に様々なことがよぎったが

 一刻も早く国に戻ることを一番に考えた。

 五重塔(ごじゅうのとう)の外まで駆け下りていき、

緊急事態(きんきゅうじたい)ですので、説明は後で」

 志々度中隊長はそう言うと、

 パン!と両手を叩いた。

 ポン!と大きな陶器(とうき)の壺が現れた。

「この中に入っていただくと王の間の建物の裏に出れます」

 三人とも初めて見る出来事に聞きたいことばかりだったが、

「分かった」

 第二王子“倫”はそういうと壺の中に飛び込んだ。

 スッと第二王子“倫”の姿が消えた。

「お二人も早く」

 声に促され、悠と環も壺の中に飛び込んだ。

 最後に、志々度中隊長も壺の中に飛び込んだ。

 壺の姿がスッと消えた。


 第二王子“倫”は、スッと壺の中に入ったかと思うと、

 直ぐに地上に飛び出た。

 続けて、悠、環と壺の中から飛び出てきた。

 最後に、志々度中隊長も壺の中から飛び出てきた。

 壺の姿がスッと消えた。

 第二王子“倫”はすぐにここが、王の間の建物の裏だと分かった。

 静かな声で志々度中隊長に聞いた。

「状況はどうなっている?」

「はい。明王子が夕刻の会議の後、5名の兵を連れて、王の間に乱入してきました。1名は通路、2名は扉前、2名は中におります。中では、沙々山(ささやま)総隊長のみで国王をお守りしています。私は、明王子が突入してきた時に、倫王子を呼び戻すために出ました」

「騒ぎが起こっていないな。軍は使っておらぬようだな」

「はい。内々(ないない)に事を運ぼうとしているようです」

井々田(いいだ)総大臣と尾々木(おおき)内大臣はどこだ?」

「それが朝儀(ちょうぎ)の後、姿が見えません」

「……尾々木内大臣が裏で動いてるのかもしれぬな。私は国王のところに行く。志々度中隊長は、大臣たちを探し、軍を動かされないようにしてくれ」

「分かりました」

 志々度中隊長は足早に駆けていった。

「君たちは私の後ろから離れないように」

 悠と環は(うなず)いた。

「それと、これを持っていてくれないか」

 環に玉手箱を渡した。

「よし、こちらだ」

 第二王子“倫”は、建物の壁のレンガから一つレンガを抜いた。

 中に手を入れると、ズッと下の方で四角い穴が空いた。

「これは国王と王位継承者だけが知る隠された通路だ」

 第二王子“倫”は、レンガを元に戻すと

 悠と環に先に入るように促した。

 第二王子“倫”も体を(かが)めて中に入っていった。

 そして、中に入ると穴を元通り塞いだ。

「こちらだ」

 小さな声で二人に話しかけると、

 足音を立てないよう歩いて行った。

 一階の階段横の窓のカーテンの裏に出た。

 そっと辺りを伺い、誰もいないを確かめて

 第二王子“倫”は出ていった。

 そして、足早に階段を駆け上がっていった。

 悠と環も黙って、後ろをついて行った。


 三階まで上がっていくと通路の角で立ち止り、

 そっと先の様子をうかがった。

 通路に一人、兵がいた。

(志々度中隊長が言っていた明王子の兵か……)

「ここで待っていてくれ」

 二人に小声でそういうと、第二王子“倫”はサッと駆け出し、

 あっという間に兵の懐に飛び、気絶させた。

(は……早い)

 あまりの一瞬の出来事に二人は驚いた。

 第二王子“倫”は、兵の靴紐で手早く両手を縛ると

 手招きして二人を呼んだ。

 そして、手で静かについてくるように合図した。

 通路を進んでもう一つの角で立ち止ると、

 そっと先の様子をうかがった。

 王の間の扉の前に、二人の兵がいた。

(情報通りだ……よし)

 第二王子“倫”はサッと駆け出した。

 第二王子“倫”に気づいた二人の兵は剣に手をかけた。

 が、一人の兵の懐に素早く飛び込み、気絶させた。

 もう一人の兵が剣を抜き振り上げた瞬間、

 やはり、懐に素早く飛び込み、気絶させた。

 そして、勢いよく扉を開けた。

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