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求古綺譚:Lucky Lore  作者: いろは
守紋と宿命:Heart or Crown【第三章】

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玉手箱の解

 建物を出ると三人は、(ゆう)の祖父のあとをついて歩いた。

 しばらく歩くと木々の中に、少し開けた場所があった。

 そして、その奥に小さなお堂のような古い(ほこら)があった。

 四人はその場で立ち止った。

 とても静かだった。

 鳥も虫の声も聞こえず、風も吹いてなかった。

 ふと、祠の横の木から、葉っぱが一枚落ちた。

 その葉っぱが落ちる微かな音が聞こえるくらい静かだった。


「あの祠の中に(いにしえ)より伝わる玉手箱が入っているそうじゃ。しかし、その扉を開けることができたものはおらぬ」

 悠の祖父は、祠の方を見て話した。

 第二王子“(りん)”は、ゆっくりと歩いて行った。

『知らない人から急に話しかけられたら、驚くだろう?神様たちもきっと同じだ。まずは会釈し、そして名乗ってから話しかけるものだ』

 子供のころから王族の儀式などで神社などに参る時、

 国王から言われていたことが習慣になっていた。

 祠の前に来ると一礼した。

(私は宇宇国(ううこく)の第二王子“倫”と申します。扉を開けてもよろしいでしょうか?)

 第二王子“倫”は、心の中で祠の中に話しかけた。

 ふいに木々がザザッと揺れるほどの風が吹いた。

「ほぉ、開ける前に(われ)に話しかけてきたものは、初めてじゃ」

 祠の中から声が聞こえてきた。

「今までのものは、礼もせず、何も言わず、いきなりガタガタと扉を開けようとするものばかりじゃ。しかし、そなたは礼儀正しいのぉ」

「あなた様にとっても、私にとっても初対面でありますゆえ」

 再び、静けさが戻った。

「開けよ――」

 第二王子“倫”は、そっと扉に手をかけた。

 すると、すっと扉が左右に開いた。

 中は薄暗かったが、両手で持てる位の箱が置かれていた。

 第二王子“倫”は、両手でゆっくりと箱を手に取り、手元に引き寄せた。

 パタン――。

 同時に扉が閉まった。


「ありがとうございます」

 第二王子“倫”は、一礼した。

 手元の箱を見ると、黒塗(くろぬ)りの箱に、五つのうっすら見える白色の丸印、

 両端から赤い紐が結ばれていた。

 白色の丸印が一つふわっと光り、うっすらと文字が現れて消え、

 金色の丸印に変わった。

 第二王子“倫”は、箱を手に三人のところへ戻った。


「おぉ、これが玉手箱か――」

 悠の祖父が目を輝かせて見ていた。

「この紐はほどけるの?中は見れる?」

 悠が聞いた。

「ちょっと持ってくれるかい」

 第二王子“倫”が(たまき)に玉手箱を手渡し、紐を引っ張ってみた。

「ほどけないな……」

 第二王子“倫”が思い出したように、悠の祖父に聞いた。

「さっき、この玉手箱を手にしたとき、ここの金色の丸が一つ光って文字が見えたんです」

「文字は?」

「確か……礼……だったと思います」

 悠の祖父は、少し考えて答えた。

「もしかしたら、丸が5つあるから五常(ごじょう)のことかもしれんのぉ」

「五常ですか」

「おそらく、仁、義、礼、智、信の礼のことじゃろう。それがこの玉手箱を開ける鍵かもしれん」

「玉手箱が開くと亀が見つかる?」

 悠が聞いた。

「それは分からぬが、この玉手箱は古より北山(ほくざん)から来たもので、この祠に長年、(まつ)られておった。これを持って、北山に行ってみるとよいじゃろう」

 悠の祖父は、(ふところ)から鍵のようなものを出した。

「これは、宝鑰(ほうやく)という鍵じゃ。これで北山の塔まで行けるじゃろう」

 そして、宝鑰を第二王子“倫”に手渡した。


「これでどうやって行くの?」

 想像もつかないなという顔で悠が聞いた。

「何度かこの宝鑰で、北山の塔に行ったことがあるが、亀を見たことはなかった。じゃが、玉手箱を持っていけば、会えるかもしれん」

 悠の祖父はそういうと、手元に鍵を持ったふりををして

 扉の鍵を開けるように右に回した。

「このように扉の鍵を開けるようにするんじゃ。そうすると、扉が見えるじゃろう」

 第二王子“倫”は、まるでそこに扉があるかのように宝鑰を右に回してみた。

 カチャリ――。

 鍵が開く音がして、うっすらと半透明の両開き扉が見えた。

 キィィ――。

 扉が開いた。

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