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求古綺譚:Lucky Lore  作者: いろは
守紋と宿命:Heart or Crown【第三章 第一部】

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欲望

 第三王子“(みん)”は歩きながら考えてた。

 あと一手で手に入りそうな王座のことを。

 ほしい。ほしい。この国の頂点に立ってみたい。

 私が一番ふさわしいはずだ。

 兄の(りん)はどこにいったのだ。

 朝議(ちょうぎ)の場にはいなかった。

 側近の志々度(ししど)中隊長はいたというのに。

 もしや王宮の外に出たのか――。


 尾々木(おおき)内大臣は、廊下を一人歩いていく第三王子“明”の後ろを歩いていた。

 角を曲がり、周りに人気がなくなるのを確認すると

 足早に距離を詰めていった。

 近づく足音に気が付き、振り返る第三王子“明”に(ささや)いた。

「倫王子は今日、一人で奈国(なこく)へ行っております」

「なぜ、それのことを私に?」

「私は明王子がなすことに全て賛同いたしましょう」

「おまえ一人で何の影響力があるというのだ」

 第三王子“明”の(さげすむ)む目に、目を伏せながら話した。

「大臣たちの半数はわが手中におさめました。その時には、私めにしかる立場をお与えいただけば……」

「自らの手は汚さぬ……というわけか」

 第三王子“明”は、無表情のまま前を向き歩いた。


 第二王子“倫”、(ゆう)(たまき)の三人は

 名前のない店を出た。

 名前のない森へは、奈国の外に停めてある第二王子“倫”の専用機で行くことにした。

「倫さんの国の乗り物に乗るのは初めてです」

 悠が少しわくわくした表情で話した。

「そうか。志音さんの話では守紋(しゅもん)で行っても専用機で行っても、さほど時間は変わらないそうだ」

 第二王子“倫”が悠と環の前を歩きながら話した。

 しばらく歩くと奈国の門が見えてきた。

 門のチェックを通り、奈国を出た。

 人気のない角を曲がり、少し歩くと専用機が見えてきた。

「すごい。最新の技術で作られているのが分かります」

 悠が駆け寄っていった。

 ――!

 あっという間に、何かの大群が専用機と三人を囲ってきた。

 ――守紋!?なぜここに!?

 第二王子“倫”は猛スピードで囲ってくる大群を目を凝らして見た。

 ――菊の花!?

 小さな菊の大群の渦はだんだんと小さくなってきて

 三人を圧迫するかのようだった。

 悠と環がポケットからそれぞれ守紋符(しゅもんふ)を出そうとしているのを見て、

 第二王子“倫”は叫んだ。

「待て!出すな」

 第二王子“倫”は、自分の胸のポケットから“流水楓鹿(りゅうすいふうろく)”の守紋符を出した。

 くるりと回転し、

 ポンッと一瞬で守紋符から(かえで)と鹿の姿が現れた。

「守紋同士で争うなんて(おろ)かな。守紋たちが哀れとは思わないのか!」

(倫さんは僕たちの守紋を守紋同士で戦わせたくないんだ)

 倫の言葉に悠も環も(さっ)した。

 第二王子“倫”は声を荒げると

 すぐさま現れた楓の大群が菊の大群を押しのけていった。

 現れた隙間に第三王子“明”の姿が見えた。

 ――やはり明か……鹿の姿が見えない?

 そう思った瞬間、上からの影が見えた。

 ――しまった!

 そう思った時は遅かった。

 上から第三王子“明”の鹿が飛び降りてきて、

 第二王子“倫”に襲い掛かった。

 横にいた鹿が第二王子“倫”を(かば)うように間に入った。

 鹿は鳴き声を上げて伏せた。

 反射的に、悠と環はポケットからそれぞれ守紋符を出した。

 くるりと回転し、

 ポンッと一瞬で守紋符から竹虎(たけとら)鱗桜蝶(うろこさくらちょう)が現れた。

 虎の姿を見ると第三王子“明”の鹿は高く飛び逃げた。

 蝶の大群が菊の大群を散らした。


 第三王子“明”は菊と鹿を呼び戻すと逃げた。

 ――なぜあの子供たちは守紋が使えるのだ?

 ――なぜ、倫はあの子供たちと一緒にいるのだ?

 予想もしなかった展開に第三王子“明”は

 しくじった怒りと共に王宮へと急いだ。

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