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求古綺譚:Lucky Lore  作者: いろは
守紋と宿命:Heart or Crown【第三章 第一部】
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宿命

 第一王子“(けん)”が亡くなってから約一年、

 宇宇国(ううこく)は表面上はいつものように日々が過ぎていた。


 第二王子“(りん)”、(ゆう)(たまき)の三人は

 奈国(なこく)の“名前のない店”に呼び出されていた。

「また夏休みの一日目だよ、ここに来るの」

 悠が薄暗い店内に入りながら、環に話しかけていた。

「悠のところにも蝙蝠(こうもり)が来た?」

「うん、朝起きたらベランダにいてさ、びっくりしたよ」

「蝙蝠ってしゃべるんだね」

「いや、守紋(しゅもん)の蝙蝠だからじゃない?」

「あ、倫さんだ」

 カウンターに座っていた第二王子“倫”は、振り向いて悠と環の方をみた。

「倫さんのところにも蝙蝠が来た?」

「あぁ、蝙蝠からの伝言でここに来た」

「蝙蝠ってしゃべるんだね」

 環が同じことを第二王子“倫”にも聞いていた。

「あぁ、守紋の蝙蝠だからじゃないか?」

 第二王子“倫”も悠と同じ言葉を返していた。

 悠と環もカウンターに座ると、

 カウンターの奥から、志音(しおん)が出てきた。

「三人とも呼び出してすまないね」

「何かあったんですか?」

 悠が尋ねた。

「環のお母さんの(しおり)と、伯父さんの(りょう)から半年前の話を聞いた」

東湖(とうこ)でのことですか?」

 環が確認するように聞いた。

 志音が頷いて、続けた。

「“四瑞(しずい)”と“麒麟児(きりんじ)”の話は聞いたことあるかい?」

 カウンターの上に置いていた第二王子“倫”の右手がぴくりと動いた。

 悠と環は顔を見合わせて、さっぱりという表情だった。

「倫は知っていそうだね」

「いや、詳しくは知らないが……“聖王(せいおう)”が現れる前兆と聞いたことがある」

 第二王子“倫”はカウンターの上に置いていた右手をぎゅっと固く握った。

 ――まさか、この二人が“麒麟児”なのか。

 第二王子“倫”は今までの二人の行動と

 導かれるように集まってきた守紋のことを思い出すと

 あり得ることだと思えた。

「――『四瑞の出現は平和な世へ導く聖王の現れる前触れ』と言われているんだよ」

 志音は、悠と環にも分かるように伝えようとしていた。

「そして、聖王が世の中を治める時に現れる優れた少年のことを“麒麟児”と言われている」

 志音は、第二王子“倫”、悠、環を真っすぐに見て言った。

「私は、倫が聖王に、悠と環が麒麟児ではないかと思っているんだ」


 三人とも言葉を失ったかのような沈黙が一瞬あった。

「……私がそんなはずはない。この二人はそうかもしれないが……」

 第二王子“倫”はカウンターの上に置いていた右手を

 何かを考えるかのように口元に当てた。

「悠、君は“雲龍(うんりゅう)”の守紋符を。環、君は“瑞雲麒麟(ずいうんきりん)”の守紋符(しゅもんふ)を持っているね」

 悠と環は頷いた。

「そして、君たち三人は“桐竹鳳凰(きりたけほうおう)”の屏風(びょうぶ)で、ユニアからここに帰ってきた。その“桐竹鳳凰”の屏風は今もここにある」

 志音は第二王子“倫”の前に歩いてきた。

「倫、こちらに来てみてくれないか」

 第二王子“倫”は椅子から立ち上がると、

 志音の後をついて部屋の奥へと進んだ。

 悠と環も後をついていった。

 奥の部屋に行くと金色の美しい屏風があった。

 それはユニアから帰ってきたときの屏風だった。

「君が(あるじ)ならば、守紋は応えてくれるだろう」

 志音の言葉に促されるかのように、

 第二王子“倫”は屏風の前に立った。

 そして、優しく右手を屏風に添えた。

 すると、それはくるりと回転し、

 ポンッと一瞬で守紋に変わり、

 第二王子“倫”の手の平に浮かんだ。

 美しい桐竹鳳凰の紋様だった。

「あとは亀の守紋だ――。龍、麒麟、鳳凰。そして“亀”により“四瑞”が揃うのだよ」

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