二人の少年
第二王子“倫”はそれから5年間、
コードノヴァとソラクアを行き来して過ごしていた。
少しずつ染み込むようにアナログの世界“ソラクア”に惹かれ、
ソラクアにいる時は、心が穏やかになっていくのを感じた。
コードノヴァにいる時の政権争いや
管理されている社会がますます息苦しくなっていった。
そして、25歳になった夏、
二人の少年“悠”と“環”に出会った。
全てが突然だった。
ソラクアに突如現れた悠と環。
第二王子“倫”の心の闇が呼び寄せた黒龍。
禍々しい灰色の雲と共に現れた黒龍を見た第二王子“倫”は、
(私自身が呼び寄せたのか……)
と、もう陽の射すところに戻ることができないように思えた。
「このソラクアとコードノヴァの世界のどちらを選ぶ?」
第二王子“倫”と黒龍の問いかけに
悠は真っすぐに答えた。
「僕はどちらも選ばない!僕たちはどちらも選ばない!」
悠のその言葉に第二王子“倫”は、
胸の奥で何か呼び覚まされるような感覚がした。
どちらも選ばない――。
そんな選択肢は頭の中に微塵も浮かんだことがなかった。
(白か黒か……でなくてもよいのか…)
胸の奥でずんと重く感じていたものが
少しずつ軽くなっていくようだった。
黒龍を覆う灰色の雲が白い雲へと変わっていくように
目の前に広がる澄んだ空のように
何かが蘇っていくようだった。
悠と倫の眩しいくらいに真っすぐな純粋さが
コードノヴァとソラクアのどちらも選ばないという選択が
第三の世界“ユニア”を開いた。
そして、
ソラクア、ユニア、コードノヴァの
三つの世界は再び繋がった。
“歴史”も“本物”も戻ってきた。
悠と環の二人の少年の選択が、
分断された世界を一つに再生した。
そのことを目の当たりにした倫は、
真っすぐに純粋に向かう姿に失った何かを思い出した。
――心を強く持つ。
自分の中で忘れていたことだった。
第二王子“倫”は、早く宇宇国へ戻りたいと思った。




