表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
求古綺譚:Lucky Lore  作者: いろは
守紋と宿命:Heart or Crown【第三章 第一部】

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

31/78

別離

 東の隣国である奈国(なこく)は中立国として、

 宇宇国(ううこく)と良好な関係を続けていた。

 毎年、奈国への友好の証として、使節団を送り交流していた。

 第二王子“(りん)”が19歳、王女“(みお)”が17歳の秋のことだった。

 この年の使節団には、王女“澪”が行くこととなった。

 その知らせを聞いた第二王子“倫”は、国王の元へ行った。

「国王、私を使節団の護衛に入れてください」

「だめだ。お前は西の羽国(ばこく)へ行ってもらいたい」

「羽国へは私以外のものを」

「だめだ。羽国の軍備について調べてくるのだ。軍のことに関しては第一王子“(けん)”よりもお前の方が()けておる」

「わかり……ました……」

 それ以上は国王に意見することはできず、

 第二王子“倫”は王の間を後にした。

 このとき、第二王子“倫”は小さな胸騒ぎを感じていた。

 奈国への使節団が出発する日よりも一日早く、

 第二王子“倫”は、羽国へと出発することとなった。

 その日の早朝、東の庭園では王女“澪”が日が昇らない内から待っていた。

「倫王子、お気をつけて」

 王女“澪”は、首から銀色のネックレスを外した。

 そして、第二王子“倫”へ手渡した。

「これは母から受け継いだものです。きっと倫王子を守ってくださります」

 手渡されたネックレスを見ると、丸い(ぎょく)のようなものがついていた。

 そして、それを自分の首につけた。

「ありがとう。私はあなたに、あげられるものを身についけていない……」

「よいのです。ご無事で帰ってきてください」

「それは、あなたも同じです」

 第二王子“倫”は、この時はじめて王女“澪”を引き寄せ抱きしめた。

 心から全身が満たされていく感覚だった。

 同時にこのまま時が止まれば……とも思った。

 そして、それが王女“澪”を見た最後の姿だった。


 第二王子“倫”が羽国に向かった2日目の午後、知らせが届いた。

 奈国に向かう途中、王女“澪”が乗った専用機が事故にあったと。

 第二王子“倫”は、すぐに宇宇国へ引き返した。

 ――おかしい。コードノヴァの世界では全てが電子制御されているのに、事故などないはずだ。

 あの時感じた小さな胸騒ぎが大きくなっていき、緊張していくのが分かった。

志々度(ししど)中隊長、直ぐに事故現場へ向かう」

「倫王子、すでに事故現場は片づけられているそうです……」

 志々度中隊長は続きの報告を言えずにいた。

 そのまま終始無言で、宇宇国についた第二王子“倫”は王宮へ向かった。

「王女は!王女はどこにいる」

 王宮の全ての人は暗い顔で、第二王子“倫”と顔を合わそうとしなかった。

「倫……」

 第一王子“健”が階段を降りてきた。

「こちらだ」

 そういうと、北塔に第二王子“倫”を連れて行った。

 ――まさか!まさか。

 第二王子“倫”は背中が冷えていくのを感じた。

 足の感覚がなくなっていきそうだった。

 第一王子“健”が、北塔の扉を開けた瞬間、

 何が起こっているか理解できなかった。

 目の前には棺が一つ置かれていた。


 棺の横では王妃が涙を流していた。

 早く確かめたいのに、足は少ししか動かなかった。

「倫王子……見ない方が……」

 王妃が(かす)れる声で言った。

「専用機ごと炎上してしまったのだ。もう分かる状態じゃない」

 第一王子“健”が静かに言った。

 それでも一目確かめたかった。

 第二王子“倫”は、震える手で棺をゆっくり開けた。

 その場に崩れ落ちた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ