企み
次の日、いつもより早い時間の早朝に
第二王子“倫”は、東の庭園に向かった。
いつも見ている風景なのに
全てが輝いて見えた。
初めての感覚だった。
昨日と同じ木のところから、王女“澪”は歩いてきた。
「初めて廊下でお見かけした時から、毎日探しておりました」
見つめる瞳には純粋さだけがあった。
「私もあなたを忘れることができずにいた」
第二王子“倫”も素直な気持ちを言葉にした。
それからは早朝、つかの間の時間を共にした。
人目につかぬよう、
また日々の暮らしの中で気づかれぬよう
注意を払っていたが、
二人一緒にいるときのまとう空気に気づく人はいるものだった。
第三王子“明”の傍によくいる尾々木内大臣も、その一人だった。
尾々木内大臣は、自分自身が一番自分の才覚を分かっているので
これ以上、能力的にも出世できないことを理解していた。
しかし、生来からの欲であろうか、
権力に対する執着を捨てることができずにいた。
第一王子“健”が王位継承者であるとはいえ病弱な身であるがゆえに、
いつか王位継承者が変わる機会をそっと待ち望んでもいた。
そして、まだ幼い第三王子“明”ならば、
上手く取り入ることができるだろうと
何かと傍にいたのだった。
尾々木内大臣は「このままでは大変はことになりますぞ」と、
第二王子“倫”と王女“澪”のことをそっと王妃に耳打ちした。
王宮の裏事など知る由もない王妃は、
そのまま国王に相談した。
「ふむ、それは少し面倒だなことだな……二人は血が繋がっていないとはいえ、今は宇宇国の王族同士であるからな」
「どうすればよいでしょうか。いっそ、王女をどこかの国へ嫁がせましょうか」
「いや……倫の性格からすると、駆け落ちでもしてしまうくらいだろう」
国王は王妃に伝えた。
「ここは私に任せてもらえるか?」
「もちろんです。分かりました」
王妃はそう答えると王の居室から出ていった。
「ふむ……」
国王はしばらく考え込んだ後、居室から出ていった。




