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求古綺譚:Lucky Lore  作者: いろは
守紋と宿命:Heart or Crown【第三章 第一部】
28/77

継承

 ――美しい。なんて綺麗なんだ。

 第二王子“(りん)”は、目の前に現れた鹿と萩を眺めながら思っていた。

 少し輝いているようにも見えた。

(いにしえ)から動物と自然は幸運を運ぶ人の守護として存在していた。動物や自然のものが組み合わさり、人を守護してくれているものが、“守紋(しゅもん)”と呼ばれている」

 国王は続けた。

「このように動物の姿になったり、守紋符(しゅもんふ)と言われるカードの形になったりする」

 国王が手のひらを上に向けると

 鹿はくるりと回転し、

 ポンッと一瞬で守紋符に変わり、国王の手のひらに収まった。

 国王は、第一王子“(けん)”へその守紋符を手渡した。

「おまえの守紋は“萩鹿(しゅうろく)”だ」

「さきほど見た鹿と萩ですね」

 第一王子“健”が言った。

「そうだ。第二王子が“楓鹿(ふうろく)”、第三王子が“菊鹿(きくか)”だ。代々、王位継承者に“萩鹿”を継ぐこととなっている」

 第一王子“健”が顔を上げ、国王の目を見た。

 国王も第一王子“健”の目をしっかりと見ていた。

 第二王子“倫”は横で、第三王子“(みん)”が一瞬悔しそうな表情を浮かべた気がしたが、

 この時はさほど気に留めなかった。

「気づいていると思うが、我が王族の鹿角の家紋と同じ鹿だ」

 三人とも、国王が座っていた椅子を見た。

 椅子の背もたれには鹿角の家紋が施されてあった。

「古から宇宇国(ううこく)の守護の一つは鹿である。これが必要な時は、おのずと分かるはずだ。全ての人が守紋を見れるわけではない。むやみに人には見せないようにすることだ。もう、下がってよいぞ」

 国王は後ろを向き、国王の椅子に戻った。

 三人は、一礼して王の間を出た。

 三人は廊下を歩いていた。

 守紋とはなんだ?どんな時にどんな風に使うのだ?

 知りたいことはたくさんあったが、

 国王はいつも言葉少なかったので、

 これ以上は何も聞けないだろうと三人とも思っていた。

 この時、第一王子“健”はこの時12歳、第二王子“倫”は11歳、第三王子“明”は9歳だった。

 年齢も近かったので、子供の頃はよく三人一緒に王宮で、遊び、学んでいた。

 自然とその頃、よく遊んだ南の庭へと足が向いていた。

 第一王子“健”は、守紋符を手のひらに置いて眺めた。

「美しいな」

「そうですね。まだただのカードにしか見えませんけど、ね」

 第二王子“倫”も答えながら、守紋符を眺めた。

 第三王子“明”は違っていた。

(健兄上は病弱で優しすぎる。倫兄上はただ武道に優れているだけだ。文武ともにバランスが取れている私こそが王に相応しいのに。ただ生まれた順番が最後だということだけで……)

 まだわずが9歳ながら、

 心の奥から湧き上がってくるその感情に

 第三王子“明”自身は気づいているのだろうか。

 まだ無意識下であるのか。

 何も言わず、何も表情も変えることなくそこにいた。

「今日は、兄上の12歳の誕生パーティーですね。そろそろ着替えて広間にいかなくては」

「そうだな、ではまた広間で会おう」

 第一王子“健”はそう答えると、

 三人とも別々の方向にそれぞれの部屋に戻っていった。

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