帰宅
僕は、悠と一緒にリビングのソファに座った。
そして、東湖の出来事をお母さんに全て話した。
悠も話に加わった。
お母さんと雪輪兎は、話し終わるまで聞いてくれた。
それから、亮伯父さんから貰った“扇子”を見せた。
「これでお母さんもいつでも東湖に里帰りできるんじゃない?」
「これは誰でも開けるものではないのよ。これを開くことができる能力がある人だけが使えるの」
お母さんは、すっかり夜が訪れた窓の外を見た。
「今日はもう遅いわね。また、聞きたいことがあればいつでも話すわ。さぁ、二人とも疲れたと思うから今日はもう休みなさい」
僕は悠を一階のエントランスまで送っていった。
「じゃぁ、学校の見学は明日だね」
「うん、また明日」
悠は手を振って帰っていった。
家に戻るとお母さんが少し嬉しそうに言った。
「ふふ、温泉に入ったんでしょ?今日はもうお風呂はいいわよね」
「うん、おやすみ」
眠れることに安堵したした僕は、
もうこのままもうベッドで眠りたいと思った。
そして、その時の僕は、
お母さんが僕たちに言えずにいたことにまだ気づかずにいた。
“瑞雲麒麟”の守紋符を見せたとき、
懐かしそうに見ていた。
後になってお母さんから聞くことになるのだが、
東湖でお母さんが麒麟に言われたことは二つあった。
一つは
『もし私が闇に落ちることがあれば、世界は暗黒の時代になるだろう』
そしてもう一つは
『もし将来、私があなたの子供といるならば、聖王が現れる日も近い』
という言葉だった。
その時の僕は、そんなことも知ることもなく
ただ、この春休み一日目が終わったことにほっとしていた。




