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求古綺譚:Lucky Lore  作者: いろは
失われた守紋:The Lost Guardian【第二章 第一部】
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覚醒

「早くここから出なくては」

 牡丹蝶(ぼたんちょう)守紋符(しゅもんふ)をしまい、(りょう)が上を見上げながら言った。

「この…」

 亮が(たまき)(ゆう)に話しかけようとした時、声がした。

「落ちぬか……」

 電子守紋(でんししゅもん)麒麟(きりん)が目の前にいた。

「おまえは本物の麒麟とは全く違う!」

 覚醒した環が力強く言った。

「麒麟を丸ごとコピーしたと言ったけど、おまえは破壊や争いを生むばかりだ。だけど、本物の麒麟はそんなことは望んではいない!」

「私は知ったのだよ。過去の歴史と繋がった時、(いにしえ)の歴史を知ったのだよ。古から、人々の歴史は戦いの歴史ばかりだ。人には戦いが必要なのではないのか?だから、守紋の敵である電子守紋を作ったのだよ」

 電子守紋の麒麟は続けて言った。

「お前も今、私と戦おうとしているのではないか?」

 環は言葉を失った。

「環、きっと答えは自分の中にあるんだ」

 環の横に立った悠が言った。

 環は確かめるように自分の中に問いかけた。

「この電子守紋の麒麟から(みんな)を守りたいと思う」

 そして、環は電子守紋の麒麟を見ながら続けた。

「――電子守紋の麒麟は、本物の守紋と同じように人を守れないのかな?」

「ふっ、戯言(ざれごと)を。私はそんな風には作られていない」

 電子守紋の麒麟はすぐに言葉を返した。

 環は、電子守紋の麒麟が、

 僅かに後ろをかばうようにする仕草を見逃さなかった。

 太い(つた)の向こうに一つの扉が見えた。

 亮は麒麟を見ていた。

 環が確かな言葉を発する毎に

 鮮やかな色彩が戻っていく姿を。

 悠は気づいていた。

 環が電子守紋の麒麟の後ろにある扉を見つけたことを。

 環がその扉の方へ一歩踏み出した瞬間、

 電子守紋の麒麟の黒い炎が勢いよく壁のように立ち上がった。

(あの扉の向こうに何かがある――)

 胸が高鳴った。

 その時、横たわっていた麒麟はむくりと立ち上がった。

 環の動きと言葉に呼応するように

 美しく鮮やかな色彩が戻っていた。

 麒麟は力強く立った。

 環、悠、亮はこの黒い炎を超え、

 あの扉の向こうに行くことに

 もう心が決まっていた。

 麒麟はそのことが分かったかのように

 少し(かが)んで、三人に背中に乗るように促した。

「そこの扉へ!」

 環がそう言ったと同時に、

 麒麟の周りに赤い炎が立ち上がり、黒いの炎の方へと

 早い速度で地を這うように

 黒い炎を払うように、広がり、立ち上った。

 黒い炎の壁に少しの隙間ができたことを

 見逃さず、麒麟は飛び出し、

 黒い炎も電子守紋の麒麟も超えて行った。

 そして、電子守紋の麒麟が追いつくよりも早く、

 扉の中に入っていった。

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