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求古綺譚:Lucky Lore  作者: いろは
守紋の記憶:Echoes of the Lost Realms
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開かれる扉

 今日は夏休み二日目。

 朝、目が覚めて初めて思った。この窓から見える景色も空も温度も全てがコードで電子制御されているなんて不思議な感じだ。今まで意識してなかったし、当たり前に存在していたから。僕の左手には小さなチップが入っていて、手をかざせば、家の鍵も開くし、学校の出席も取られるし、電車代もお店の買い物代も払える。病院に行った時も手をかざすだけで全ての手続きができる。タブレットにかざせば、生まれた時からの全ての記録が見れるし、ホログラムで再生もできる。誰がどうやって作ったのか、どうしてそうなのかなんて習ったこともないし、考えたこともなかった。

(全部コードノヴァってやつに制御されてるってことか……)

 なんだか窮屈に感じた。僕はTシャツとズボンを履いて、朝ごはんを食べにダイニングへ行った。父さんはすでに仕事に行ったようだ。

「おはよう」

 キッチンにいた母さんに言った。

「おはよう」

「……母さん、この食べ物も制御されているってこと?」

 冷蔵庫から出した牛乳を器に入れたシリアルに注ぎながら聞いた。

「そうよ。詳しくは知らないけど、電子制御されたロボットに作られてるそうよ」

「……」

 椅子に座るとシリアルとフルーツを口にした。食欲はあった。

 食べ終わった皿を食洗器に入れると、

「図書館に行ってくる。」そう言って家を出た。

 この時、僕はまだこのお皿や食洗器さえも全てロボットだけで作られているってことに気がつこうともしていなかった。

 学校の図書館まで少し駆け足で行った。夏休みの間でも図書館はいつものように開いている。扉に手をかざすと静かに戸が左右に開く。

 持ってきたタブレットをテーブルに置くと音はなく『何をお探しですか?』と画面に表示された。

 “コード”……と入力したところで手を止めた。

(全てが制御されているなら、タブレットに入力した時点でデータとして届いて検知されてしまうんじゃないか……)

 コードノヴァが何かも分からないけど、巨大な何かのように思えて、僕が調べていることを知られてはいけないような気持ちになった。

 タブレットの電源を切って図書館を出た。

 知りたいことは山ほどあるのに、一体、どこでどうやって調べれば分からず、ただ歩いていた。人とすれ違う中、目線の少し先の下の方で、何が動くものが見えた。視線を上げると店が立ち並んでいた。気が付くとショップエリアに来ていた。歩き進んでいくと、どうやら猫が店に入りたそうにしているようだ。

 猫がいる扉を見てみると

『この紋様が見える方、同じボタンを押してください』

 と書いてあった。

 扉の真ん中に、丸い円にギザギザがついたようなマークがあった。

 取っ手の横には、波のようなマークと丸い円にギザギザがついたようなマークのボタンがあった。

(これかな……)

 丸い円にギザギザがついたようなマークのボタンを人差し指で押すと、ポンッと小さな音が聞こえて、扉が奥へと開いていった。

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