日韓併合なき世界
『望郷の果てに』
解説
小説を読んでいただくにあたって、ある程度の予備知識が必要ですので
敢えて解説を前文に持ってきました。
昨今の日韓摩擦は残念ながら拡大の一途をたどっています。
イ・ミョンバク前大統領の竹島上陸に始まり、パク・ウネ大統領の反日侮蔑運動は日韓にとって致命的となりかねない傷を両国民に与えています。
韓国は元来反日教育を徹底したおかげで、歴代大統領も反日を訴えないと政権が持たないという内部事情を抱えていますが、自己の政権支持率を上げるための反日運動は如何なものでしょう?
結果、大統領の支持率は上がるかもしれませんが、日韓関係は冷え込み経済摩擦を生み
最終的には失脚を余儀なくされてしまうのが今までの歴代の流れです。
なぜそこまでして・・・と思うのですが、国民に植え付けてきた反日感情が根本にあることは間違いありません。
韓国はこれからもこの路線で突き進んでゆくのでしょうか?
少なくとも反日教育を続ける限り、路線変更はあり得ないでしょう・・・
しかし、その結果は・・・そして両国の未来は・・・
この小説は、その危惧を書き上げたものです。
小説内には過激な表現や事象も含まれていますが、過去に記録のある中国で起こった通州事件、李王朝時代の庶民の生活を映した写真、イザベラバードをはじめ西洋の旅行家が書き残した文章、など、事実として伝わっている事柄や、戦後韓国で作られた朝鮮戦争物の映画などをもとに文章を造作しています。
また主人公が登場する討論番組もユーチューブなどで実際に流れたものをモデルにしております。
ですので、SFものといえどもでたらめな記載で両国の関係を煽るものではないことを申し加えておきます。
ストーリーの主材は日韓併合がなかったらというイフの世界です。
はたして両国の関係は好転しているのか・・・また韓国経済は自力で活性出来るのか・・・
なにはともあれ、侮蔑外交を国のトップがするという異常事態は自粛していただかなくてはなりませんね
筆者
一
俺は日本人、特に反韓番組が好きなネット右翼にはちょっと顔が知れている。
ある日韓討論番組で、日本人学生に対して、悪いことをしたらまず謝る・・・それが人間の常識というものだ・・・とにかく謝れと連発してやった!
これは多くの日本人に深い印象を残したようだ。
俺自身、日本で暮らす在日派だが歴史を改ざんし、過去の過ちを顧みない奴らを心から軽蔑している。
もち論表向きは日本人に対していい顔はしているが、裏では舌を出している!
ざまぁ見ろ日本人!
この間の討論会では日本側の学生は私の発言に、ぐうの音も出なかった・・・
完全に論破して胸がすぅっとしたところだ。
誇り高き朝鮮民族!五千年の歴史を持つ最も優秀な血がこの体に流れていると思うと
物まねしかできない日本人が下等に見えて哀れさえ感じるところだ!!
しかし、ある時見知らぬ日本人に声をかけられた。
ネットの討論会を見て、是非話をしてみたいと思ったというのだ。
ここでも朝鮮民族が如何に優秀かを懇々と説いてやったのだが
この日本人、終始笑顔で私の話を聞いていやがった・・・
ちょっと薄気味悪くも感じたのだが、気持ちが高ぶりすぎて「お前ら日帝には必ず天罰が下り、われら朝鮮民族にひれ伏す時が来るぞ!」と捨て台詞を吐いてしまった・・・
その時だけは流石にその日本人も真顔になりやがった。
そして言いやがった・・・あなたは伊藤博文をしっていますか?と・・・
もちろん知っているさ・・・朝鮮人にとっては大逆賊だ!八つ裂きにしても余りある位・・・
そして彼を誅殺した安重根はわれらの英雄!わが民族は受けた屈辱に対しての恨みは決して忘れないのだから。
ところがその日本人、また笑顔に戻ったかと思うと
実はこの世の中にはパラレルワールドという別の次元が存在していてるっていうじゃないか・・・
全く現実味のない話で、こいつ俺のことを馬鹿にしているんじゃないかと思ったんだけど、
聞いているうちに話に吸い込まれちまったんだ・・・・
「パラレルワールドってご存知ですか?」
「なんだそりゃ?オカルトの話ならごめんだぜ!」
「実はこの世の中には別の次元が存在していて、この世の中と並行して存在しているんです。向こうの世界にも貴方や私がいて、同じような生活をしているかもしれない…
ただ稀にこちらの世界にしか存在していない、或いは向こうの世界にしか存在していない人間がいるんですよ。
この異次元もまた一つとは限らない・・・これも無数にあるのだけれど
その中でもたった一人しか存在が確認できない人間・・・
その人は本人の希望さえあれば、あちらのパラレルワールドに次元旅行が出来るんですよ!もう一つの別の世界を垣間見ることが出来るんです。
ただ一つ制約が・・・一度旅立つともうこちらの世界には戻ってこれないんですよ。
向こうで生涯を送ることになります。
だから希望さえあればと念を押しているんですけどね。」
「まぁ、話の内容は信じがたいけど、言わんとしていることはわかった・・・でもなんで俺にそんな話をするんだい?」
「あなたがその選ばれし人だからですよ」
「?!」
「私はこの次元ワールドを監督監視する次元官・・・未来ではこの次元ワールドを行き来するシステムが完成していて、旅のお手伝いを出来るようになっているのです」
「それはいいとして、なんでそんな手間のかかることをするんだい?」
「それは・・・」
次元官はまた曖昧な笑顔を作って、その問いには触れずに話を進めた。
「あなたは歴史を直視しない日本人を嫌っておいででした。日本による支配が朝鮮民族の積年の恨みになっているともおっしゃってましたね。
その根源が伊藤博文だとも・・・。
実はある次元のパラレルワールドで、ちょっと空きがありましてね…」
「空って?」
「いや・・・ちょうど伊藤博文がハルピンにて会議に出席する次元に渡れる時間の空きができたということなんです。そのタイミングで最もふさわしい人間をそちらの次元に飛ばすとこが出来るのです。
伊藤博文の暗殺に立ち会うことが出来る・・・いや、あなた自身が歴史を塗り替えることが出来るかもしれませんよ。
安重根よりも先に伊藤博文を誅殺したなら貴方が朝鮮民族の英雄になれるかもしれない!」
「なんだかおもしろい話にはなってきたが、安重根は日帝らによって処刑されてしまっている。処刑されたんじゃ割に合わないね」
「いや・・・今回は貴方の熱烈な支持者がこのパラレルワールドにお供します。彼女が貴方をお守りしたいと申しています。彼女はもうすでにあちらの世界で貴方を守るための地下組織を結成して逃がす段取りを整えているはずですよ。」
「・・・女か、旅のお供に華を添えるわけだな・・・美人かい?」
「貴方の手で日韓併合を阻止してみてはいかがでしょう?」
「わかった・・・今こそ考え続けてきた日本への恨みが晴らせるんだな?
また日韓併合という忌まわしい侵略から朝鮮を守れる・・・
いい話じゃないか!こちらの世界にはもう未練など何もない、向こうで理想の社会を築き上げるというのも悪くないか!いったいどうすればいいんだい?」
男は鞄から一錠のカプセルを取り出した。
「さぁ、これを今お飲みなさい!少しうとうとしてきますので、あちらのベンチにでも座って・・・目が覚めるとあちらの世界にわたっているという手はずです」
「随分と簡単じゃないか!あはは・・・」
「こちらの世界で別れを言う人はいますか」
「いや、なんにもない・・とっとと渡ろうか」
私は一口でカプセルを飲み込んだ。
実は早くこの世界から立ち去りたかった・・・
座談会の映像が流れてからというもの、親しくしていた日本人から敬遠されるようになっていたのだ。
君の言い方はあんまりだよ・・・歴史を直視していないのは君の方じゃないか!過去に縛られていたら未来は見えないんだよ!
そんな説教をする友達もいたが、すべては疎ましかった。
今に見ていろ日本人!
「それでは行ってらっしゃいませ・・・アン・ジュンチェさま・・・
貴方のご先祖様は安重根の・・・」
だんだん意識が薄れていく中で、次元官の最後の言葉が頭の中で溶けて行った・・・
「こちらの世界では伊藤博文は日韓併合には反対派でした・・・安重根の暗殺がきっかけで反対派勢力の力が弱まり、かえって併合に拍車がかかったとか…
あちらの世界での伊藤は併合派の急先鋒です。彼の暗殺で、確実にこちらの世界と違う世の中が来ましょう・・・
どんな世界になるか楽しみですね・・・そして貴方は朝鮮民族の本当の恐ろしさを
し・・る・・・で・・・・しょ・・・・・
アン・ジュンチェこと私はパラレルワールドの扉を開いたのであった。
二
何やら騒々しさに目が覚めた。
何とも埃っぽい広場のベンチに俺は座っていた。
ぼぅっとした意識がだんだん鮮明になってくると、自分がパラレルワールドの薬を飲んだことを思い出した。
そうだ・・・薬を・・・っということは、ここはハルピン?
プラカードを持った群衆が何やら大声を上げながら抗議のデモをしている。
その前には警備の一団であろう制服姿の警官が多数・・・
デモの群集は皆薄汚い白装束・・・この姿は映画やドラマで見たことがある…
ハングル文字に朝鮮語・・・間違いなく朝鮮人である。
見知らぬ制服姿の警官は、おそらく日本人だろう。
駅舎にはハルピンと漢字で書かれた看板が掛けられているところを見ると
間違いなくここは中国東北部にあるハルピン駅前の広場なのだろう。
遠くで汽笛の音が聞こえてくる。
間もなく伊藤博文を乗せた機関車が構内に入線・・・そんな場面なのであろう。
「アン・ジュンジェさん?」
突然背後から女の声がした。
そこにはすらりとした女性が、周りをはばかるように佇んでいた。
「お待ちしていました。私はパク・ウシュンといいます。貴方のファンなんですよ!会えてうれしいです。私もあちらの世界から渡ってきたんです。」
にこっとした顔はなかなかの美人だが、歳の頃は三十代半ばくらいか・・・
「もうすぐここに朝鮮総督の伊藤博文がやってきます。あちらの世界では安重根義士が暗殺をすることになっていますが、私は貴方にこの役をやっていただきたいのです。
あちらの世界でのあなたの主張は迫力がありましたわ。
日本人を論破する姿は私の中ではヒーローそのもの・・・
私はそんな貴方に、私だけではなく朝鮮民族の英雄になっていただきたいと思っておりますの。」
俺は困惑した。
渡る前は俺の手で日本人を叩き出してやるとの気概十分だったけれど、いざその場面になると流石に手が動かない。
なんせ俺の生きた時代は平和そのものの日本なのだ。
革命は見たことも触れたこともない。
それにしても、この殺気漂う威圧的な空気はなんなんだ・・・
何が起こってもおかしくない・・・そんな騒然とした雰囲気が辺りを包んでいた。
パク・ウジュンは辺りに注意深く用心しながら紙袋を手渡してきた。
中を覗くと一丁の拳銃が・・・
「ジュンジェさんは伊藤に近づき、この銃で仕留めてください。私たち革命の同志が伊藤に近づけるよう手はずを整えます」
一段とデモの気勢が上がった・・・どうやら伊藤が駅から広場に出てきたようだ。
それからの出来事は夢とも現実ともつかない・・・
革命の同志といわれる連中に両腕を抱えられながら伊藤らの前まで連れていかれたこと・・・拳銃を持った腕を同志に振り上げられながら、自分とも他人ともわからない意識の中で引き金を引かされた感触・・・その中でもはっきりしているのはズドンと体に浸みわたる銃声音が三発・・・逃げる時も丸で担ぎ上げられるかのごとく自分の足で歩いた感覚すら記憶の中になかった。
後で聞いたところによると、俺の盾となって死んだ同士がいたという。
名は安重根・・・なんと皮肉なことにあちらの世界で英雄になった彼は
俺の盾となって死んでしまったということらしい。
翌日の新聞には『伊藤博文暗殺される』の見出しが大々的に載り、その後も新事実が発表されるたびに一面をにぎわし続けたという。
三日後の新聞に犯行声明文が掲載され、朝鮮系新聞には『アン・ジュンジェ義士は朝鮮民族の英雄』と掲載された。
俺は英雄になったのだ。
次回から独立を果たした大韓帝国のifの世界が広がります。
真実を垣間見る主人公に出会ってください。