オレは最強の【スキルコピー】持ちだぞ……なのにどうしてこんな……
7話で完結。
完結まで毎日投稿します。
前略、オレはボコボコにされてノビていた。
ピクピクと全身を痙攣させ、地面に頭から埋まっている。
「なんなんだお前?」
敵1が呆れた声で巨大な剣を肩に担ぐ。
「敵1じゃねーよ。俺はブレイドって名前があるんだ」
ブレイドは丁寧にも自分の名前を名乗ってくれた。
ブレイドは筋肉質な体型の大男で、たぶん16歳くらいだと思う。
オレは大地に伏しながら文句を言う。
「くそう……オレは最強の【スキルコピー】持ちだぞ……なのにどうしてこんな……」
オレはここまでの出来事を思い出す。
交通事故にあって死んだオレ(中学生)は、ボーナスとして【スキルコピー】のスキルを貰ってこの世界に転生した。
【スキルコピー】の効果:相手が持つスキルを1つコピーして、自分のスキルとして獲得できる。
最強スキルじゃん!!!!!!
と、調子に乗ったオレは転生して早々に目についた3人パーティに戦いを挑んだ。
しかし、この3人パーティのスキルが滅茶苦茶にクセが強くて、
しかも同時獲得したときの相性が最悪だった。
敵1(ブレイド)からコピーしたスキル:【火事場のヒーロー】
【火事場のヒーロー】の効果:HPが最大値の5分の1より多いとHP以外の全ステータスが10分の1になるが、5分の1以下だとHP以外の全ステータスが10倍になる
敵2(サーシャ)からコピーしたスキル:【フォーカス・アナライズ】
【フォーカス・アナライズ】の効果:使用するたび、敵のスキルまたはステータスのうちまだ見ていないものからランダムに1種類見破ることができる。ただし、このスキルの所持者はレベルが上がらなくなる。
敵3(インテル)からコピーしたスキル:【インテリジェンス・マッスル】
【インテリジェンス・マッスル】の効果:賢さの値だけ固定ダメージを与える。ただし、このスキルの所持者はスキルをこれ以上取得できない
「ステータスが10分の1になった上にレベルもスキルも取得出来なくなったんだが??????」
オレは初手で詰んだことを悟った。
そしてボコボコにボコされ、今に至る。
「まあまあ、よくわからないけど、放っておきましょ。弱いし」
「はうっ」
敵2にグサッとくることを言われた。
敵2の名前はサーシャという。魔法使いといった感じの恰好の女だ。たぶん16歳くらいだと思う。
名前はコピーした【フォーカス・アナライズ】で知った。
「そうですね。それよりも、ジェリーを探さないと」
敵3の名前はインテル。CPU入ってそうな名前だけあって、丸眼鏡でスラッとした体型の賢そうな男だ。たぶん18歳くらいだと思う。
こいつの名前もコピーした【フォーカス・アナライズ】で知った。
「おう、そうだったな。先を急ごう。まったくジェリーのやつ、どこに行ったんだか……」
「…………」
サーシャがなにか言いたげな表情をしていたがそれに気づかず、ブレイドたちはどこかへ行ってしまった。
「く、くそ……動けない……ガクリ」
オレは動けず、そのまま気絶してしまった。
…
……
………
「おーい」
「…………………………………………ハッ!」
目覚めたら、一人の小さな生き物がオレのことを枝でつついていた。
「……クラゲ人間?」
「妖精だ!」
バシッ!
「痛い!」
枝ではたかれた。
自称妖精は15センチくらいの身長で宙に浮いていた。女だ。
透明感のあるひらひらしたドレスがふわふわと動いていて、クラゲみたいだった。
羽根は生えてないが、そのひらひらで浮いているみたいだ。
「その妖精さんがなんのご用で?」
「べつに用なんかないよ。ただ倒れてたから心配してただけだ」
オレは体を起こした。
よし、なんとか動けそうだ。
「オレはタクマ。オマエは?」
「ボクの名前はジェリーだ」
「やっぱオマエ、クラゲだろ」
「妖精だ!」
ぺちん!
今度は手のひらで叩かれた。
ちょっと痛い。
クラゲは英語でジェリーフィッシュ。
最近覚えたばっかりだからな。
「ところでオマエ、どうしてこんなところで倒れてるんだ?」
「かくかくしかじかで……」
オレは簡単に事情を話した。
「なるほどね……」
フムフムとジェリーは話を聞いてくれた。
そしてなにかを思いついたようで、オレに話してくれた。
「なら、アステルダムに行くといいよ。ボクもちょうどそこに用があって、そこへ行くところなんだ」
「アステルダム? そこにはなにがあるんだ?」
「【スキル消滅】のスキルを持つニンゲンが、そこにはいるってウワサだよ」
「なるほど!」
天才であるオレは察した。
オレは【インテリジェンス・マッスル】のスキルのデメリット能力で、スキルを新たにゲットできなくなっている。
だから【スキルコピー】を使っても、コピーできない。
だが、【スキル消滅】で【インテリジェンス・マッスル】を消せば、俺は再び【スキルコピー】で能力をコピーできるようになるのだ!
そうでなくても【火事場のヒーロー】を消せばステータスが10分の1になっているデメリットを消せるし、
【フォーカス・アナライズ】を消せばレベルが上がらないデメリットを消せる!
オレは転生したばかりなのでレベル1だし、そこに加えてステータスが10分の1になっている。
ザコの攻撃で簡単に死んでしまうのだ。
「よし!」
オレは立ち上がった。
「じゃあ、オレたちは仲間だな!」
「――――……うん!」
オレたちは固い握手をした。
「行こう! アステルダム!」
「おー!」
ジェリーとともに拳をあげる。
そう、ちょっと初手でつまづいてしまったが、あきらめてはいけない。
オレのチート人生はここから始まるのだ!
……始まるよな?