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#2-4
「あの、今井くん。土曜のお礼がしたくて…。その、今日一緒に帰れない…かな」
「ごめん、今日は約束があるんだ」
「そうなんだ。急に誘ってごめんね」
そんな風におどおどされると遠巻きに見て僕がなにかしているみたいだから止めてほしい
「ううん。それにお礼をされるようなことでもないし。じゃあまた明日」
「うん、また明日」
「黄朽葉さんにお礼って言われてたけど」
顔がうるさい
「ショッピングモールでナンパされていているところに声をかけただけだよ」
「それでお礼ってもう決まりじゃん!」
なにが決定されたと言うのだろう
ため息を吐かれても分からないものは分からない
「よく分からないけど、待ち合わせ相手のフリをしたらすぐにどこかへ行ったんだ。だからなにもしてないようなものだよ」
「ピンチを助けてくれるだけで株は急上昇なんだよ!」
「…へぇ?」
宇崎くんに肩ががっちり抱かれる
「今井くんに乙女心は難しいみたいだな」
「乙女心…」
いやいやいやいやいやいやいや
「お、気付いた?気付いた?」
「し、知らない!ほら着いたよ」