#2-3
「出掛けるの?休みの日なのに珍しい」
「今日は新刊の発売日だからね」
「外でやる趣味も見つけなさいよ」
「はいはい。いってきます」
「いってらっしゃい」
家を出たは良いけど、どこに行くか決めていなかった
どうしようかな…
確か近所に本屋があったと思うけど、場所が曖昧だし小さな書店だったから入荷しているか分からない
少し遠くて面倒だけど、安パイの駅中にしよう
「あって良かった」
「止めて下さい」
「良いじゃん、ひとりなんでしょ?」
よくやるよ
ってあれは…
「待たせてごめん」
「今井くん…!」
「チッ、男連れかよ」
すぐに立ち去ってくれて良かった
「あ、ありがとう…」
「どういたしまして。本物の待ち合わせ相手が遅れているみたいだね。来るまで一緒に待とうか」
「待ち合わせ相手はいないの。人が行き交う景色をただ眺めるのが好きで…」
それがなんの役に立つのかは分からない
けれど、僕が趣味としている読書だってなんの役に立たない場合もある
共感は出来ない
でも黄朽葉さんにとっては必要なことなんだろう
「そっか、普通は絡まれる可能性の方が低いもんね」
「うん。初めてでどうして良いか分からなくて…」
女性がこんなことに慣れなくて良い世の中になれば良いなぁ
「あ、あの…今井、くん…?」
知らず知らずの間に黄朽葉さんの頭を撫でていた手を慌てて隠す
「ごめん」
「ううん、大丈夫。あの、わたし帰るね。さっきはありがとう。また学校で」
「うん、また」