#12-2
「おはよう、今井くん」
「おはよう。珍しいね、今日は朝練に参加するの?」
「ううん、そうじゃなくて…。言いたいことがあって」
「僕に?」
僕に話しかけて来たんだから愚問なんだけど、なんだろう
想像出来ない
「うん」
頷いて大きく深呼吸をすると僕の目をじっと見る
「私と…付き合って下さい」
「………!????」
名前を呼ばれたから人違いではないし…
下駄箱に手紙入れ間違えたとかなら漫画でよくあるけど、そもそも面と向かっているわけだしないか
「ごめん、恋人は募集していなんだ」
「茜ちゃんも?」
「え?そうだね…恋人を募集していないから」
どうして当たり前のことをこんなに至近距離で聞かれているんだろう
「そっか…。理由は聞いても良い?」
適切な距離感に戻ると妙に落ち着いた雰囲気で問われる
「…本当の恋を探しているんだ。きっと、あるはずなんだよ」
「それって…茜ちゃんに関係あるんだよね」
関係があるどころか主軸にあると言っても良い
倉科茜という人物に恋をしていたことが事実なら、二度と恋なんてしたくない
だから僕は恋を探す
つまり僕は、倉科茜に恋をしているんだ
でも認めたくない
認められない
「かもね」
「…うん、分かった。これから友達としてよろしくね」
誤魔化しだと、恐らく気付いている
それでも澤田さんは踏み込まなかった
友達もまともに作れない僕に、これ以上本物に近い恋を見つけることは出来るのだろうか
NORMAL END 3




