表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
青春代行課-今井歩の部活動青春  作者: ゆうま
バスケ部編
59/75

#11-3

「帰るまでに雨、弱くならなかったなぁ…」


予報ハズレの雨だからか、昇降口で立ち往生している生徒は多い

折りたたみ傘だけど常備していて良かった


「それにしても…喧嘩でもしたのかな。なんでバラバラでいるんだろう」




「澤田さんも傘持ってないの?折り畳みだから小さいけど入って行く?」


「ありがとう。でも今井くんが風邪引いちゃうから弱くなるまで待ってるよ」


それに…と小さな声が聞こえた気がした

一瞬視線が動いた先には倉科さんがいる

僕はそれに気付かないフリをして、空を見上げた


「多分このままだよ」


「でも…」


「うーん…まぁ、僕がひとりで傘を差して帰ったら僕は風邪を引かないだろうね。でも澤田さんは風邪を引くだろう。もしかしたら高熱で寝込むかもしれない。2人で帰ったら2人が軽い鼻風邪だとしよう」


「え?うん…」


突然長文で話したからか、少し戸惑いながらも返事をくれる


「――僕はね、誰かが100点であるために誰かが80点である必要があるなら、全員で90点が良い。そう思うんだ。だから澤田さんが高熱で寝込まないなら、鼻風邪くらい良いんだよ」


「ふふっ、変わってるね」


「僕は真面目に話しているんだけど」


「うん。入れてもらおうかな」


傘を開くと少し傾けて澤田さんを傘に入れる








「茜ちゃんがいること、気付いてたよね…。どうして私を入れてくれたの?」


「他にバスケ部の子もいたし、倉科さんに声をかけるのはどうかなと思って」


「…あからさまだし、気付くよね」


「というより本人から釘を刺されてね。安易に手を貸すことは本人のためにならないなって。でも本当に困っているなら頼ってほしいな」


そう、僕が勝手に悩むことじゃないから

悩んで協力してほしいって言うならする

でもそんな未来は訪れないと思う。倉科さんは悩んでいないから

切実に困っていないから


「優しいね。普通は関わりたくないよ」


「倉科さんじゃなかったら、そうなんだろうね。でも本気で助けを求められたら行動するかもしれない」


「どうして?」


中学の頃、憧れていた人だから

罪悪感を持ったままだから

今も、あの頃のことを後悔をしているから


「嫉妬とか妬みとかって誰も悪くないと僕は思うんだ。だからって、もちろん嫌がらせは良くない。それだけだよ」


「茜ちゃんが釘を刺した理由、なんだか分かる気がする」


「変に首を突っ込めば酷くなるだけだもんね」


「違うと思うけど…でも、それで良いと思う」


にこりと笑うと、くるりと回ってバス停の屋根の中に入る


「どういう意味?」


「雨の日はこのバス停から乗って帰るの。ここまでありがとう」


「いつもは駅なんでしょ?駅まで行くよ」


「良いの。元々そのつもりだったんだし、良いの」


憂いのある表情に、それ以上は言えなかった


「そっか…、気を付けてね」


「うん、ありがとう」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ