#10-2
「よーっす。男バスの部長いる?」
「どうした、倉科」
「後ろから声かけないで下さい」
「悪い。で、どうした?」
でっか!
「入部希望者です」
「この時期にか?」
「今日転校してきたんです。今井っていいます、宜しくお願いします」
じっと目を合わせられる
「ポジションは?」
「ポイントガードです」
「前はどこの学校にいた?」
「バスケをやっていなかったので回答する必要がないと考えます」
少しぽかんとした表情をするが、視線を外して咳払いをすると再度目を合わせる
「…いつからボールに触っていない」
「約2年前からです」
「最後の大会前に怪我でもしてそのまま辞めて高校でやらなかったわけか。何故また始めようと思った」
昔の話しを根掘り葉掘り…面倒だな
「個人的な問題なので回答は控えたいです」
「そうか。辞めた理由は」
「…予想通り怪我ですよ。それ以上は答えません」
「言いたくないことを聞いて悪かったな。だが、2年のブランクは大きい。きちんとやれるか」
思ったより悪い人ではないと思ってしまうのは、単純だろうか
「努力します」
「煮え切らない返事だな」
「断言する発言は嫌いなんです。いくら努力したって、出来ないことは出来ないんですから」
「そうかよ」
「今井くんブランクあるらしいじゃん。でも俺らと同じように練習に参加してたよね。まさか…嘘」
「なんのメリットがあって。それより、倉科さんのあれ…なに?」
「周り見るなんて余裕じゃん」
「誤魔化すってことは日常的なわけだね」
ため息を吐くと顔を寄せてくる
「入部した途端にレギュラー入り、成績優秀。容姿も性格も問題なし。誰からも嫌われないなんて漫画だけっしょ」
「倉科さんが成績優秀?なんの冗談?」
「他は否定しないんかい。ってか今日一緒に来たよね。どういう関係?」
「昔の知り合い。会ったのは本当に偶然」
この学校にいるなら補習組でもおかしくないと思ったのに、成績優秀か…
正直努力でどうにかなるレベルだとは思えない
「…辞めた原因に関係あんの?」
「ない。…と言えば嘘。でもあると言えるほど関係してはいないって感じかな。また始めるのは倉科さんのせいだけどね」
「ふーん。なぁなぁでずっと続けてる俺には分かんないな」
「続けるってすごいことだよ。だからそんな風に言わないで」
「なんか説得力ある。ありがと」




