#9-3
「せんぱーい!」
「柿谷さん、待って…!」
「ど、どうしたの…」
目立つから止めて
「沙理ちゃんのこと振ったんですか?」
桃矢さんの話しから考察するに、これは友達が振られたことに怒っているわけではないだろう
それなら言うことはひとつ
冷静に
「そもそも告白されていないよ」
「本当ですか?」
「うん」
「何度もそう言ってるんですけど、信じてくれなくて」
振られている方が話しが早いからかな
桃矢さんじゃないなら自分
そうなると思っているのだろうか
「じゃあ沙理ちゃん、正々堂々勝負ってことで良いんだよね」
「どういう意味?」
「勝負して先輩と付き合う方を決めるってことですよ!」
「待って、僕は」
「どっちか決まってるんですか?」
睨むように見られて、思わず声のボリュームを下げてしまう
「そもそも彼女を募集していないんだけど…」
「じゃあ別にアプローチするのは自由ですよね。それとも彼氏は募集してるんですか?」
「柿谷さん!なんでそん…!」
桃矢さんの言葉を手で遮ると柿谷さんをじっと見る
「彼女を募集していない理由も、仮に彼氏を募集しているんだとして、その理由も、自分に関係があると思っているの?」
「あります…!わたしが先輩と付き合いたいと思うなら、あるはずです」
「そう、じゃあ勝負でもなんでも好きにして。でも言っておくよ。僕はどちらとも付き合う気はない」




