#8-1
「第一回今井くん争奪戦、料理対決ー。どんどんパフパフ」
「家庭科の授業でマフィンを作りました」
目の前に透明な袋に入ったマフィンが置かれる。口がとめてあるリボンの色は青と赤
ボクシングですか、じゃあ殴り合って決めて下さい
「どうしたんですか?早く食べて下さい」
正直に言おう
どちらも美味しそうに見えない
赤が少し焦げているのは砂糖の入れ過ぎが原因だろうか
青は半生な気がする
でもプレーンだと決まったわけじゃない
いや、その前に言っておかなくてはいけないことがある
「あのさ…勝負をするのは別に良いんだけど、僕彼女募集してないからね?」
「勝負してる最中に気が変わるかもしれないじゃないですか。良いから早く食べて下さい」
「う、うん…」
青いリボンをほどき、マフィンを頬張る
「うっ…!」
ゴミ箱に向かって駆け出し、抱え込む
昼に食べた物も全て出した
「だ、大丈夫ですか…?」
「折角作ってくれたのにごめんね、ちょっと…バナナが苦手で」
「そうだったんですね…すみません」
心底申し訳なさそうな顔をする
こんな状況で大丈夫だと言っても、その場しのぎの言葉でしかない
桃矢さんに言ってあげられることは…
「次の勝負が決まったら呼んで。今日は帰るよ」
「そんなフラフラのまま帰せるか。休んでから帰れ、な?」
「そんな風に心配そうな顔をされていたら落ち着けないよ。大丈夫」
小さく手を振って部室を出た




