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青春代行課-今井歩の部活動青春  作者: ゆうま
軽音部編
43/75

#7-5

「第四回今井くん争奪戦、書道対決ー。どんどんパフパフ」


「今回は古典の授業で習字を書いたので、それです!」


「古典の授業で書いたのか。俺もやったな」


「なんでなんですか?全然意味分かんないんですけど」


意味の分からないものを対決にするってどうなの

別になんでも良いけど


「毛筆が昔の書くものだったからじゃないか?手紙を書くときとかに、筆を執るって言うだろ」


「言いませんけど」


「柿谷自身が言うか聞いてるんじゃねぇ、一般的にそう言うだろって言ってんだ」


「はぁそうですか。まぁ知りませんけど」


え、知らないの?

一般常識的にそれはどうなの


「終わったことなんで、分かんないなら良いです。それより先輩、決めて下さい」


目の前に出された2枚の半紙には「歩」と書いてある

正直ゾッとした


「直接対決には関係ないんだけど、先にひとつ聞いても良いかな」


「良いですよー?」


「書く文字は自分で決めたわけじゃないよね…?」


「柿谷さんならまだしも、私がそんな気持ちの悪いことするはずがないじゃないですか」


こんな勝負をしている時点で桃矢さんも大概だよ


「ちょっと!わたしならってどういうこと?」


「そのままだけど?」


「ストップ、ストップ。決めるから落ち着いて」


「これで勝負が決まるんですから、ちゃんと決めて下さいね」


初めて聞いたんだけど

引き分けの可能性もあるけど、どうするんだろう

でも今聞くのなんか面倒…

後にしよう


「分かったよ」


じっと見られると居心地が悪い

早く片付けてしまおう


「…右にするよ」


「引き分け…!?やっぱりなにかもうひとつ勝負を…!」


僕の深いため息が部室に響く


「いい加減にして」


「どうしたんですか?」


声が震えている

でも、そんなことしたって僕の気持ちは変わらない

それどころか益々嫌な気分だよ


「どうしたもこしたもないよ。僕は初めにきちんと伝えたはずだよ。勝負をするのは自由だけど、彼女を募集していないって。別にもうひとつ勝負をしたって良い。だけど僕はどちらとも付き合わない」


「ここまで付き合っておいて今更なに言うんですか」


「だから、今更じゃない。僕は初めに言ったんだから、むしろ初志貫徹だよ」


筆を執るって知らなかったし、初志貫徹とか分からないかな


「別に良いじゃない。付き合いたくない人と付き合ってなんのメリットがあるの?」


「沙理ちゃん…!?」


「私は柿谷さんがやるって聞かないから付き合っただけ。結果今井先輩と付き合うことになっても良いとは思ってたけど、引き分けなんだから大人しく引き下がるしかない。違う?」


「なにそれ…やりたくないならやりたくないって最初っから言えば良いじゃない!」


言った言わないの水掛け論になるのかな

すごく面倒


「そうなると思って録画しておいたぞ」


「そんなの嘘!1年のわたしと沙理ちゃんが教室で話したことを録画出来るはずがない!」


「だな」


物凄い剣幕でなにか言いそうな柿谷さんの肩に手を置いて落ち着かせる


「柿谷さん、気付いたよね」


「…………」


「僕が勝負をしてほしくない、彼女を募集していないって言ったことは認めてし」


「そうやって揚げ足を取るんですか!」


キンキンした声で話さないでほしい


「本当は分かっているから騒いでいる。そうでしょ?いくら騒いだって意味ないんだから諦めたら」


「沙理ちゃんのそういうところ本当に嫌い」


そう言い放って部室を出て行ってしまう

軽音部の部員を探すのは大変だろうから、この機会に廃部にしないかな


「今日は解散」











「こんにちは~」


なんで来れるんだろう?

しかもすごっく普通の顔してる


「先輩、あれから冷静に考えたんですけど、わたしムキになってただけで先輩のことそんなに好きじゃなかったです。だからごめんなさい」


「なんで僕が振られたみたいになるの」


「あれ?違います?」


「和ませるにしても、もう少し分かりやすい冗談にしてくれないかな」


気不味い思いをしているのは柿谷さんのせいだけどね


「気を付けまーす」


平和に解決したわけだし、まぁ良いか


「じゃあ文化祭に向けて練習するぞ」


「早いね、気合が入ってるの?」


「初心者がいるんだし当然だろ」


まさか…


「ボーカルって言ったよね?!」


「ベースも弾いてもらうがボーカルだ。嘘は吐いてない」


確かに嘘ではないけど、偽って誘ったってことじゃないか!


「認めません!」


そっと左肩に手が置かれる


「諦めて頑張って下さい」


「そんなぁ。柿谷さんもなにか言ってよ」


「知りませーん」


音楽雑誌をめくりながら興味がなさそうに言う


「振られましたね」


「振られたな」


「分かったよ!やれば良いんでしょ、やれば!」


なんだかんだ、この時間が楽しいと思う

最低限のものを守ってゆけるのなら、こうして流されて生きていくのも悪くないかもしれない

NORMAL END 1

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