#6-5
「今井先輩」
「あ、桃矢さん、どうし……なんか怒ってる?もしかして柿谷さんになにか言われた?」
「そうです。捻じ曲げられていると分かっていてもムカついています」
捻じ曲げられてって…
しかもそれを分かっている
押し切られなくて本当に良かった
「…柿谷さんのこと全く知らないのに不用意なことを言ったとは思っていたんだ。僕からも謝罪するよ。それで、詳しく聞かせてくれないかな」
「そのために来たんです」
僕は桃矢さんに昨日あったことを正直に全て話した
「――なるほど。確かに最後のは余分でしたけど、上手く避けましたね」
「こんなことになるなら「明るいしひとりで帰って」って言えば良かったよ。迷惑かけてごめんね」
「いいえ、そもそも無理矢理連れて来た部長が悪いので。それで私の方ですが、いまいち要領を得ないのに、ひとつひとつの言葉が重くて意味が分かりませんでした」
…と言われて僕はどうすれば良いのか分からない
一先ずなにに怒っているのか聞けば良いのかな
「そのこと自体に怒っているの?それとも重い言葉のなにかが引っかかっているの?」
「どっちも…ですかね。今井先輩と話したら落ち着きました。事情も分かりましたし」
「それなら良かった」
桃矢さんの笑みは、優しさと悲しみが混じったような笑みだった
「結論だけ言うと、どっちが今井先輩と付き合うか勝負で決めることになりました」
「僕の気持ちは…?」
「ありません。何故ならあの子は今井先輩が自分のことを好きだと信じているからです。そして、自分が勝つと信じているからです」
なにそのバイヤス
僕もそんな自信が欲しいよ
「沙理ちゃん!なんで勝手に先輩のところに行ってるの!?勝負するって言ったじゃん!」
「その報告をしにね。今もそうだけど、冷静に話せそうじゃなかったから」
そんなことはない、とは流石に言えないのだろう
握った拳をぷるぷるさせている
「私戻るから一緒に戻るよ」
手を引かれながら歩く柿谷さんが振り返る
「先輩!わたし絶対に勝ちますからね!」
2人が立ち去ったあと、僕は思わず呟いた
「そんな勝負しなくて良いよ…」




