#4-8
「急でごめん」
「ううん、どうせ暇してたから」
「小説の話しが、したいと思って」
大方そんなところだろうとは思った
ただ、なんで少しもじもじしているんだろう
「そうだと思って色々持って来たよ」
「…察しが良い」
「でしょ」
赤城さんは結構読み込んでいて、随分話し込んでしまった
「あ、もう外が暗いね。帰ろうか。送るよ」
「うん」
「――あのさ、なんで私の方に来たの」
同時だったのは僕が先約優先であることを察していたから、恨みっこなしでとそうしたわけか
でもそれだと、まるで2人が僕のことを好きみたいだ
自意識過剰は良くない
「黄朽葉さんは目的が読めなかったし、行く理由がなかった。でも赤城さんは目的に察しがついたし、そうしたいと思った。それだけだよ」
「じゃあなんで私が誘ったと思う」
「僕と同じ理由だと思ったけど、別の理由があるの?」
大きく頷く
「好きだから」
好き…スキ…すき…………!??
「そういうところの察しは悪そうだから、はっきり言わないとって思って」
「そんなことしないと思うし、怒ると思うけど、まずひとつ確認させてほしい」
「なに」
「ドッキリじゃないよね」
否定されても俄かに信じがたいけど
「それなら会ってすぐに言う」
「確かにね…」
「それに、そんなことしない。そんなことを計画するような人と知り合いたくない」
「そうだね。僕もそう思うよ。そうしたら赤城さんにこんな失礼なこと言わなくても良かったのに」
一歩僕に近づいて優しく頭を撫でる
「前の学校で上手くいってなかったの、なんとなく分かる。別に怒ってない」
「ありがとう。ごめん」
「それは返事?」
真っ直ぐな瞳で見つめられる
僕は見返せずに、視線を逸らした
「違う。でも返事はどう…なんだろう。なんだか――」
「現実味がない」
言うか迷った言葉が引き継がれて言われた
「…うん」
「じゃあ夢とか小説ならどうした」
「付き合うんだろうと思う。一応僕も思春期の男子だからね」
「欲望に忠実に生きていられる間はそうしていれば良い。恋愛が分からないって言うなら、最初は誰だってそう。傷付けたくないと思うなら、生きていたら無理」
断ったら傷付ける
そうじゃなくても、人は生きているだけで無意識に人を傷付ける
「思ったのと違ったって言って振られないように頑張るよ」
「もし私がそう言ったとしてもそれは「知らない部分を知って、その部分を好きになれなかった」って意味だから。だから頑張らなくて良い」
「うん」
笑いかけると優しく笑ってくれた
なんとなく、上手くいきそうな予感がする
L . HAPPY END 4




