#1-2
「おはよう」
「おは…よ」
振り向いた瞬間顔色が変わった
なんだろう?
「宇崎くん、おはよう」
「…………」
「どうしたの?」
なんだか嫌な予感
「別に。けど話しかけんな」
「それって別に、で済ませられることじゃないよね」
「うるせぇな、じゃあここで言ってやろうか」
「それが良いかもね。少なくとも宇崎くんと出会ってからはやましいことをした記憶がない」
力強く睨まれる
「それは俺と会う前にならあるってことか」
「悪意を持ってやったことはないよ。だけど落とし物を拾って窃盗、人にぶつかって傷害、どんなことにも難癖はつけられる」
「そうかよ、じゃあ昨日田野にしたこともそういうことなんだな」
話しをどこに着地させたいのか分からない
教室を出るまでは普通だったんだから、僕に敵意を向ける理由は放課後にあると考えるのが妥当
でも全く心当たりがない
ここは強く出ない方が良いけど、無暗に謝るのは得策とは言えない
「僕に自覚はないから、無意識にした言動が田野さんを傷付けてしまったのかな。なにか聞いているのなら教えてほしい。田野さんに謝るよ」
宇崎くんは大きなため息を吐いた
多分なにかに気が付いたんだろうけど、一体なにに気が付いたんだろう
「田野」
怯えたような表情
だけど、演技
「お前俺に嘘吐いたな」
「確かめたの?それでやってないって言ったから信じたの?」
「いや、確認はしてねぇ。けど嘘だ。第一本当なら普通学校なんて来れねぇだろ」
…なるほど
なんとなく分かった気がする
「なんなのそれ。悪いことしてないアタシに、逃げろって言いたいわけ!?」
「そうじゃねぇよ。そういう考えだから来るのは確かにそうかもな。ってか今井くん、なんも言わねぇな。つまんねぇ」
「え?」
「田野が俺に嘘を吐いたことは気に食わねぇ。でもコイツがつまんねぇから遊んでやろうと思ったんだろ」
そういう解釈をするのか
平穏な学校生活が送れそうにはない
「そんなところ」
「コイツがつまんねぇのは事実だ。けどこの嘘広めるなよ。それ以外は干渉しねぇ」
「なんでよ」
「俺も一応男だからな。されると心底困る。誤解される行動があったならまだしも、全くの潔白だろ。遊びでやることじゃねぇ」
そこを助けてくれるのは有り難いと言えばそうだし、宇崎くんが言っていることは間違いじゃない
でもその言い方だと…
そのつもりなんだろうけどさ
「…分かった。こんなつまんないのに構ってる暇なんてないしね」
男女のカースト1位に即刻切られた僕に、このクラスで友達が出来ることはなかった
BAD END 2