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ドゥームズ・デイ・クロック  作者: レグルス
パラダイス・ロスト掃討編
15/16

"正義"の定義

 クロワ・シュヴアリエ学園。チームワークを重視し、連携攻撃を得意とする学園。彼女らはとある国の一角にある、富裕層の人間が沢山暮らす、高級住宅街へと派遣された。


 派遣されたのは、全部で5名。其々が得意とするポジションが違い、正に連携する事を重視して育て上げられた、精鋭部隊だ。


 この街は上層と下層に別れており、下層はスラムと化していた。


「何て有り様……こんなにも貧富の差が大きいだなんて……」


 リーダーであるシャロンが小さく、嘆く様に呟く。華やかな上層と違って、下層は大分荒れ果てており、其処中が血と泥と死体で溢れ返っていた。


 上層との間には検問の様な物が設置されていたが、誰も居らず門は破壊され、無惨に引き裂かれた死体と、飛び散った血の跡だけが遺されていた。


「うっ…… んぐっ!」


 控えめな性格の少女レリアは、初めて見るその惨状に思わず吐き気を催してしまう。そして皆から離れ、路地裏の方で嘔吐した。


「ゲフッゲフッ……ウェェ……」


 その様子を心配そうに見つめ、彼女に駆け寄り背中を擦る1人の少女、フランソワーズは只ひたすら宥め続けた。


「大丈夫でして、レリア? 無理はなさらないで」


 レリアは涙目で彼女を見つめ、ありがとうと一言呟き、皆の所へ戻って行く。


「すみません……余りにも惨たらしかったもので……」


 未だ顔色の悪いレリアは申し訳なさそうに謝る。


「仕方がないよ。僕らが前線へ出るのは初めて何だから」


 そう優しく宥める青年ユーグは、彼女を気遣う言葉を投げ掛けた。


「それにしても、許されざる犯行だ! どうすればこんな非人道的な事が出来るんだ!」


 そう憤るのはクロヴィスと言う、チーム1の体格を持つ青年だった。


 5人は門を抜け、階段を上がり街の上層部へと向かう。その道中にも夥しい、数の死体と血の跡で、溢れ返っていた。


 レリアは足取りが重くなり、途中で何度も気分を悪くしては嘔吐を繰り返す。


「レリアさん。無理なさらず帰還しても良いのですよ?」


 シャロンは彼女を気遣い、心配そうに見つめる。


「いえ……諦める訳には行きません……私もチームの一員何ですから!」


 レリアは決意を固め拳を強く握りしめて、歩みを止めずに階段を上って行く。


 段々と街へと近付くにつれて、騒々しい物音と怒号が聞こえて来る。


「今までの恨みだ! 死にやがれクソッタレが!!」


「何が金持ちだ! 金が有っても力が無きゃ、ただの屑だな!」


 街に出ると、スラム街で暮らして居たと思われる人々が、パラダイス・ロストから得た力を使って、警備隊や富裕層の人々を虐殺していた。


「へっざまぁ見やがれ!」


「おい! コイツ結構良いぜ!」


 男性は全身の骨を折られたり、殴り続けられサンドバッグ状態にされ、女性は集団に取り押さえられ、そのまま強姦されているのが現状だった。


「好き勝手やりやがって!」


 クロヴィスが真っ先に聖印武装(クラフト・アーツ)を展開して、民衆を止めに入る。彼の聖印武装(クラフト・アーツ)は盾型であり、そのままチャージタックルを喰らわせ、民衆を気絶させて行く。


 建物の中では、小さな子供ですらナイフ等で富裕層の人々を滅多刺しにしており、この区域は混沌と化していた。


「全く。何時1人で突っ込んじゃうんだから」


 シャロンは少し困った様な顔で独り言る。そして残ったメンバーに、民間人から死者が出ない様に注意しながら、この場を鎮圧するようにと言う少々難しい指示を出す。


「でもシャロン! この状況で死者を出さずに鎮圧するだなんて、無理では無くって!?」


 フランソワーズが反論するが、シャロンはこれが任務です、と笑顔で返した。その笑顔の裏には、逆らうなと言う意味合いを含んでいる事をメンバーは承知しており、思わず戦慄する。


「はいはい、分かってましてよ。全く、何時も無茶振りで困りますわ」


 フランソワーズは悪態を吐きながらも、2本のレイピア型聖印武装(クラフト・アーツ)を素早く構え、民衆の首筋に柄の部分で打撃を与え、気絶させて行く。


 レリアもマスケット銃型聖印武装(クラフト・アーツ)を展開して催涙弾を装填し、成るべく大勢が固まっている箇所に狙いを定め、引き金を引く。


 特殊な魔弾加工された弾丸が民衆の固まっている中央付近で破裂し、催涙ガスを霧状に散布する。強力な催涙ガスは民衆の目や鼻、口から体内に入り激痛を伴わせ、暴徒をその場で倒れさせて行く。


「さてと、これは僕もお仕事しなければ行けませんね」


 ユーグはランス型聖印武装(クラフト・アーツ)を展開し、指笛を吹いた。すると何処から途もなく、白い馬に翼の生えた様な姿をした一頭の魔獣が現れる。彼はそれに騎乗し、馬の前肢で民衆を蹴散らして行く。


「うんうん、皆さん良い働きですよ」


 シャロンはクスクスっと微笑み、右手を天高く掲げ一言呟く。途端、"ソレ"は現れた。空を覆う程の巨大な影が街全体を暗闇へと変え、巨大な何かが飛翔しているのが分かる。そう、それは魔獣の中でも上位クラスに位置する「ガルーダ」だった。


 ガルーダはシャロンと目を合わせ、またシャロンも微笑み返す。するとガルーダはその大きな翼を羽ばたかせ、街の中を飛翔する。その巨体故に、ただ通り過ぎただけで嵐の如き風が巻き起こり、暴徒達を吹き飛ばして行く。


「貴女が1番乱暴では無くて!?」


 吹き飛ばされそうに成っているフランソワーズが抗議するも、シャロンはニコニコと微笑むだけだった。そして、ガルーダはそのまま飛び去って行く。


 だが、これだけやっても次々と群がる民衆に悪戦苦闘する生徒達。制限付きで戦っている以上、本調子が出ないのだ。


 その時、空間に亀裂が入り硝子が砕け散る様に割れ、1人の少女が現れた。


「こんな雑魚に手こずる何て、それでも学園1位なのかしら? クイーン」


 皮肉の様な物を呟きながら現れたのは、水色のツーサイドアップの髪型に髪より少し暗い色の瞳をした容姿を持つ少女、ルミアだ。


 彼女は本来シャロン達とは別の部隊の隊長なのだが、デモの規模が大き過ぎると判断された為に、送り込まれた様だ。部隊は引き連れて居らず、単身此処に乗り込んだのである。


「此方は抑えとくから、元凶を叩いて貰える?」


 ルミアは勝手に指示を出すと、大勢の暴徒の前に1人躍り出る。そして、両手の指を狐の様な形にしてポーズを執り、交差させた。


 すると、周囲の硝子の破片が集まり透明な檻を形成して、暴徒達を閉じ込める。


「んじゃ、後はヨロシク♪」


 ルミアはそれでも群がる暴徒達を徒手空拳で倒しながら、告げた。要は丸投げである。


「相変わらず、お独りが好きなのですね」


 シャロンはそう告げて、更に上層を目指して進み始めた。


「さってと、ほら来なさいよ。このルミアちゃんが相手してあげるわ」


 そう言うと彼女は硝子の破片を集めて結晶化し、クリスタルソードとでも謂わんばかりに透き通り光沢のある、輝く剣を形成した。


「殺さなきゃ良いんでしょ? なら!」


 彼女は素早く暴徒の足の腱を斬り、立てない様にして行く。更に剣を砕いて再結晶化させ、無数の槍を形成し、壁に磔にして行った。その動きに無駄は無く、鮮やかに、そして流れる様に次々と制圧して行く。


 そう、彼女も実力だけ見ればシャロンと同格なのだが、独断行動を好むが故に、何時も部隊を放ってしまう為に、問題視されているのだ。


 彼女がある程度蹴散らすと、暴徒達は畏れを成して逃げて行き、1人残った彼女は服を(はた)くと、ため息を吐いた。そして、上層の方を見上げる。


「じゃあ、後は頼むわよ。残りの仕事も片付け無きゃ行けないし……」


 そう呟き彼女は暴徒が逃げた方向へと、歩み始めた。



 一方、シャロン達は更に上層へ向かう。だが、先程まであんなに騒がしかった筈が、打って変わって鎮まり返っており、辿り着いた先で見た物はとてつもなく()()()()()()だった。


 先程までとは比べ物に成らない程の夥しい量の血が其処中に飛び散り、最早原型を留めて居ない肉の塊があちこちに転がって居た。


「いっ……嫌……」


 レリアは再び怯え出し、両手で顔を覆って何も見ない様にした。


「待って下さい。彼処に女の子が」


 シャロンが示した先には、この異様な空間の中をフラ付きながら歩く、やや幼い少女の姿があった。


 少女は今にも倒れそうな程、足取りは覚束無く、ユラユラと左右に振れながら彷徨う様に歩いている。周囲をキョロキョロと見回し、何かを探している様にも見えた。


「あんなに幼い娘まで……私達で保護しましょう」


 シャロンが少女に近付き声を掛ける。


「大丈夫? 此処は危ないから、一緒に避難しましょう?」


 その言葉に反応して、少女は振り返って此方を見つめる。


「……だれ?」


 シャロンは丁寧に自己紹介をして、手を差し出した。


「えくす……ぺりめんと……? それ……おいしい?」


 少女はキョトンと首を傾げると、口から涎を垂らした。


「おなか……すいた……。たすけて……たべもの……ほしい……」


 少女は両手で腹部を抑え、蹲蹲ってしまう。


「これはマズいですね……早く保護しましょう」


 シャロンが少女を抱え様と近付いた時、彼女は自身の身体に痛みを感じ、立ち止まる。


 何が起きたか分からないシャロンは、痛みがする箇所に目をやる。すると黒い蜘蛛の脚の様な物が、自身の腹部を貫いているのが分かった。


「えっ……?」


 良く見ると、その黒い脚は少女の背中から無数に生えており、的確にシャロンを貫いていた。


「ああ……おいしい……」


 少女は口をモグモグと咀嚼する。その度にシャロンは体内を抉られる様な激痛に襲われた。


「くぅぅ……!」


 フランソワーズが急ぎその脚を切り落とし、シャロンを匿う。すると少女はゆっくりと立ち上がり、不気味に脚を蠢かせながらボソボソとか細い声で話す。


「たりない……まだ……たりないよ?」


 背中から生える無数の脚を一斉に伸ばして捕喰しようとする少女。クロヴィスがそれを盾で防ぎ、その背後からレリアが数発の銃弾を放つ。


「あぐぅ……」


 銃弾は少女の腹部や胸部に命中し、ヨタヨタとフラ付く。其処をフランソワーズが空かさず接近して、脚を幾つか削ぎ落とした。


「うぅぅ……いたいよ……なんでひどいことするの……?」


 少女は涙を浮かべ、撃たれた箇所に手を当てながら答えた。


「貴女っ! 自分が何をなさって来たか分かってらっしゃいますの!?」


 フランソワーズが声を荒げて告げた。


「たべただけ……おなかすいたから……たべただけ……」


「駄目だ。彼女はもう言葉が通じない」


 ユーグは再び魔獣に騎乗し、槍を構え突進チャージ攻撃を仕掛ける。


「援護は頼んだよ」


 ユーグが走り抜ける背後に隠れる様に、クロヴィスとフランソワーズが付いて行き、レリアがマスケット銃を構え、狙いを定める。


 そして、少女の前まで来た途端に魔獣は天高く飛翔し、その背後から現れたクロヴィスが盾で少女を抑え込みながら、壁に激突させる。


 クロヴィスが直ぐに飛び退くと、フランソワーズは2本のレイピアで高速の刺突を叩き込み、彼女が横にズレた所を、レリアが正確に撃ち抜く。専門で学んでいるだけ合って、正しく完璧な連携コンビネーションだった。


 そして、飛翔したユーグが空中からランスで追い討ちを掛ける。ランスが少女の腹部を深々と貫き、致命傷を与えた。


「う……うぐっ……うぅ……」


 少女は激痛のあまりもがき苦しみ、泣いていた。


「な……んで……いつも……こんなことばかり……」


 少女は無数の脚でユーグの魔獣を捕らえ、捕喰して行く。メキメキと肉や骨が抉り引き裂かれる音と共に、グチャグチャと咀嚼する音が鳴り響く。そのあまりの光景に皆恐怖し、硬直してしまった。


「んぐっ……んぐっ……ゴクリ……」


 少女はあっという間に自身の何倍もの体格を持った魔獣を平らげてしまった。そして、右手で口を拭い、ごちそうさまと静かに呟く。


「おいしい! もっとたべたい! みんなたべたい!」


 少女は急に元気になり、与えた筈の傷も回復していた。少女は近くに居たフランソワーズを脚で捕らえ持ち上げる。


「いっ嫌! 離しなさい! この化け物!」


 両手足を掴まれている為、抵抗の仕様が無いフランソワーズ。そのまま無数の脚で身体中を貫き、喰らい付いて行く。


「あぐっ! 痛い! ヤメて! 助けてぇ!」


「やっぱり、しんせんなおにくはおいしいなー」


 痛みに苦しむ彼女をお構い無く抉って行く少女。その顔は幸福に満ちていた。


 そして、ある程度喰らった所で彼女を乱暴に投げ捨て、次の獲物を探す。


 其処にシャロンが再び呼び寄せたガルーダが舞い降りた。その隙にクロヴィスがフランソワーズを抱え、ユーグと共に下がった。


 少女はガルーダを見て目をキラキラと輝かせていた。そして、ニヤリと笑みを浮かべ、ギザギザとした歯を覗かせる。


暴食の牙(ベルゼブブ)


 少女が一言呟くと、身体中がメキメキと音を立てながら複雑に曲がって行き、やがて漆黒の毛並みを持つ、狼の様な姿をした獣へと変貌した。


 ガルーダは羽を飛ばして獣を牽制する。しかし、獣は俊敏な動きで全てを躱した。羽はまるで剣の如く地面に突き刺さった。


 獣は一気に跳躍して、ガルーダへと飛び乗り、首元に喰らい付く。ギェェェッと鳴き声を上げ苦しむガルーダは、空へと舞い上がり風圧で振り落とそうと試みた。


 案の定獣は振り落とされたが、 次の瞬間獣は無数の触手を生やした、見た事の無い化け物へと変化し、ガルーダへ巻き付く。羽ばたく事の出来なく成ったガルーダはそのまま地面へ落下し、未知の化け物に捕喰されてしまった。


「シャロンどうしよう……?」


 レリアは怯えながら訊ねる。一方のシャロンは、良きパートナーであったガルーダの死に涙を流した。


 腹部の痛みは未だ消えないが、シャロンは化け物を睨み、指示を出した。


「こうなった以上徹底してやりますよ、皆さん」


 シャロンは鞭型聖印武装(クラフト・アーツ)を展開して、一度地面に叩き付けて再度化け物を睨む。重症を負ったフランソワーズを脇で寝かせ、残ったメンバーで戦う事を決意した。


 化け物は無数の触手を一斉に伸ばして、シャロン達を襲う。だが、シャロンは鞭を素早く振り回し、その触手を打ち払って行く。クロヴィスは盾を持ち換えて十字型の剣の様に持つ。そして、そのまま投げ付けブーメランの様に使用し、触手を切り落として行く。


 化け物は今度は巨大な蜘蛛の姿へ変化し、周囲に糸を張り巡らせた。レリアは炎の元素で構成された弾丸を装填して、糸に向かって放つ。糸を燃やそうと考えたのだ。


 しかし、糸はまるで鋼の如き硬度を持ち、ピアノ線の様に機能している。


「下手に動けば身体が裂けるぞ!」


 クロヴィスが皆に告げると、シャロンは仕方がないと言わんばかりに目を閉じ、片膝を付いて、祈る様なポーズを執った。


「大いなる力を持つ守護者よ。遥かなる空より来たりて、その偉大なる力で我らに救いを与え給え。慈悲深きその御心に忠誠を誓い、我が心身を汝に捧げ、我、汝の契約者とならん」


 シャロンが祈りの様な物を唱えると、空から一際巨大な影が現れた。燃え盛る焔の如き真紅の瞳に、鎧の様に光沢を放つ銀色の鱗を持ち、強靭な爪と牙、そして、誰もが目を惹く巨大な翼をはためかせ、それは降臨する。


「我がマールブランシュ家の守護龍、『リンドヴルム』!」


 そう、それは伝説上の存在。実在するなど誰もが信じない存在。古より伝わるお伽噺、或いは空想上の存在。しかし、それは今確かに目の前に現れたのだ。


「焼き尽くせ!」


 シャロンの指示に従い、蒼白い灼熱のブレスで糸を焼き切るリンドヴルム。蜘蛛の化け物はその姿を見て、後ずさる。


「そこ!」


 レリアはその隙を逃さず、確実に撃ち抜いて行く。蜘蛛の化け物は全身を焼かれ身悶えている。着実にダメージを与えている手応えを感じる4人だったが、次の瞬間驚愕的なモノを見てしまう。なんと化け物はドラゴンの姿へと変化していたのだ。


 リンドヴルムとは対称的に漆黒の鱗とギザギザの翼を生やし、正に怪物そのものだった。互いに向き合う龍と龍。リンドヴルムは蒼白いブレスを放ち、対称に怪物は赤黒いブレスを放つ。


 そして、衝突した2つの閃光が爆発すると、爆煙の中からリンドヴルムが飛び出し、怪物を押さえ付け、容赦無く攻撃を加えて行く。最後に留めと謂わんばかりにリンドヴルムは飛翔し、空から怪物目掛けてブレスを放った。


 ブレスを諸に浴びた怪物は黒い霧を発生させながら、少女の姿へと戻った。最早立っている余力も無い様で、全身に大火傷を負った少女はその場に倒れ込む。


「あ……あついよ……いたいよ……どうして……」


 少女は虚ろな目で空を仰ぎ、見つめる。


 シャロンはリンドヴルムを消失させ、少女に近付く。


「くるしかった……ずっと……ずっと……だから……みんなきらい……」


 シャロンは少女が貧困層の出身である事を悟る。彼女はずっと虐げられて来たのだろう。


「もう……いやだ……しにたい……ころして……」


 シャロンはレリアから銃を受け取ると、少女の頭に狙いを定め、引き金を引いた。静寂の中で銃声が鳴り響き、少女は眠る様に息を引き取った。


 シャロンはレリアに銃を返し、目を閉じて祈った。


「この子、最後は笑っていたわね……」


 まるで死を受け入れるかの様に少しだけ、微笑んでいた少女の姿を見て、皆が思った。


 自分達がした事は正しかったのか。少女を救う方法は本当に無かったのかと。そして、胸中で呟く。


 "正義"の定義とは、何だろう……と。

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