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ドゥームズ・デイ・クロック  作者: レグルス
パラダイス・ロスト掃討編
12/16

邂逅

パラダイス・ロスト掃討編、開幕!

 寥達は輸送機に乗り込み、極東にある島国の首都を目指していた。


 先程までいた"セントラルアーク"からだと、其れなりに移動距離が長い為、全員が緊張した様子で固まっていた。


「まだ着かないの~? ボク暇何だけど~」


 1人呑気に愚痴るエリン。相変わらずマイペースで、羨ましくも思う。


 寥は以前と同じく敵の強襲に遭うであろうと推測していた。


 目的地が島国故に、移動には飛行機か船を用いらなければ成らず、敵が其処を見逃すとも思えない。


 (しばら)く飛行を続けていると、案の定(やかま)しくアラートが鳴り響いた。


「無数の機影が此方に接近中です! これは……小型無人機?」


 気付くと周囲を小さな飛行物体に囲まれていた。


 それは赤いレーザーで此方に狙いを定めると、ミサイルを一斉に放って来た。


「またこのパターンなのね。寥が来た頃を思い出すわ」


 フレデリカは軽く準備運動をしてゴーグルを付け、大空へと飛び出す。


「行くわよ! タービュランス!」


 翡翠色の光に包まれ、素早くミサイルを破壊して行くフレデリカ。


 勝太は窓を開けて、狙撃銃型の聖印武装(クラフト・アーツ)を装備し、無人機を一機ずつ正確に撃墜して行く。


「そう言う事なら私も!」


 美華は勝太の側に駆け寄り、聖印武装(クラフト・アーツ)に手を添えた。


「何するんだ? 美華?」


(とどろ)く雷鳴よ、()の者に力を与え給え」


 美華がそっと呟くと、勝太のライフル弾に雷属性が付与された。


「凄いな美華! これが美華の魔術か!」


 そう美華は魔術の源とも呼ぶべき魔元素を操り、物体に付与する事の出来る元素系魔導士だったのだ。


 勝太が無人機の1つを撃ち抜くと、電撃が周囲の無人機に伝播(でんぱ)して、一発の弾丸で、複数の機体が()ちて行く。


「あ~! ずるいよ~。ボクにもやらせてよ~」


 勝太達が次々と無人機を撃墜して行くのを見て、ムズムズと身体を震わせるエリン。


「もうムリ! ボクもう我慢出来ない!」


 居ても立っても居られなく成ったエリンは、大剣片手になんと生身で大空へと飛び出して行ってしまった。


「えっ!? 流石にそれはマズいんじゃ……」


 寥は心配したがどうやらその心配は無用だった様だ。次の瞬間寥の目に写ったのは、無数に飛行する無人機を足場にして、跳び跳ねながら次々と無人機を()として行くエリンの姿だった。


「ヤッホー☆ みんな~これ凄く楽しいよ~」


 音速で飛行する無人機に当たり前の様に追い付き、破壊して行く(さま)は彼女自身が戦闘機にでも成った様だった。


「あははっ! まるで玩具(オモチャ)だね! これ!」


 挙げ句の果てには片手で機体の主翼を掴み、他の機体へと投げ付け破壊して行く。その光景はまるで某SF映画のワンシーンの様だった。


「これじゃあ……キリが無いわね。一体何処から湧いて来るのこれ……」


 フレデリカも大分体力を消耗している様で、息を切らせながらも懸命に破壊して行く。


 確かに破壊し続けても、一向に止む気配無く飛来する無人機。エリンはまた急に真面目になり、無人機の上に乗りながら空を見上げて茫然(ぼうぜん)としていた。


「そっかぁ。そう言う事かぁ。敵も案外姑息だね」


 そう呟くと無人機の主翼を無理矢理ねじ曲げ方向転換させ、輸送機の上空で斬り裂き、破壊する。そして、そのまま輸送機の上へと着地した。


「はぁ……これを使わざるを得ないか……」


 エリンは無線機を取り出して、輸送機のパイロットに連絡する。


「もしも~し、キミたちって有視界飛行出来るよね~?」


 明るい何時ものトーンで|訊ねるエリン。意図は読めないが、出来ると返事をするパイロット。


「そっか、りょーかい☆」


 それだけ告げて通信を切る。そしてスカートのポケットから弾丸の様な形状をした鉄の塊を取り出し、大剣の柄の部分を開いて装填する。


 すると大剣は中心部から左右に開き、変形した。そして中心部では電磁力が充填されて行き、激しく青白い(いかずち)(ほとばし)り、やがて一筋の光と成った。


目標捕捉(ターゲットロック)射出準備完了(ストライクスタンバイ)


 まるで"電磁投射砲(レールガン)"の様な姿へと形を変えた大剣を遥か上空、宇宙(そら)へと向ける。そして静かに呟いた。


刺し貫く閃光(スティングレイ)


 彼女が引き金(トリガー)を引くと、切っ先から(まばゆ)い光輪が拡がると共に、一筋の閃光が瞬く間に射出された。そして、大きな花火の様な爆発が起き、途端に無人機が墜落して行く。そう、通信衛星を破壊したのだ。


「ん? 何だ?」


「一体どうしたって言うの?」


 皆が不思議がる中、エリンは大剣を元の形状に戻し、深呼吸をした。そして笑顔に戻り輸送機の中へと飛び込んで来た。


「みんな! 今の見た見た? スッゴい花火だったね☆」


 1人(はしゃ)ぐエリン。そしてフレデリカが帰って来る。


「お疲れ様、フレデリカ」


 寥が笑顔で(ねぎら)うと、少しだけ頬を赤く染めて、ありがとうと一言告げた。


「しかし、酷い目にあったな。それとエリン。お前一体何をした?」


 刀矢が冷静に訊ねるとエリンは(わざ)とらしく誤魔化す。


「先生、先生が何言ってるのかボク分かんないよ?」


「誤魔化さなくて良い。本当の事を話してくれ、美華と同じ様に」


 それでもエリンは(かたく)なに話さない。


「先生だって知られたくない事ってあるでしょ? それと(おんな)じだよ~」


 エリンは少しニヤリとした笑みを浮かべ、続ける。


「それとも先生、放課後ボクに"えっち"な事しようとした事、ここで詳しく話ちゃおうかな~?」


 その言葉に皆がドン引きする。


「不潔、最低、信じらんないわ!」


 真っ先にフレデリカが反応した。


「意外と刀矢も"その()"はあるんだね」


「まぁ、思春期の男子だからなぁ」


「そんな……刀矢先生が……」


 皆から誤解されて戸惑う刀矢。


「分かった……これ以上聞かんから、早く誤解を解いてくれ……」


 遂に(こん)負けした刀矢がエリンに告げる。


「まぁ、つまりそう言う事だよせ~んせい」


 結局、誤解は解かれないまま話は終わったが、皆冗談なのは分かっている。その場を和ませ様と自然と息を合わせていたのだ。


 エリンは自身の事に付いて触れられる事を極端に嫌がる。誰もが普通に暮らして来た訳では無いのだから当然だろう。だから、皆で話題を反らしたのだ。


「全く何で俺がこんな目に……」


 さっきの茶番劇でも、相当メンタルがやられてしまったらしい、刀矢は只項垂(うなだ)れていた。


 其処へ別の機体が近付いて来て、1人のスーツ姿の女性が乗り込んで来た。


「初めまして。残念ですがマスターの指示により、あなた方には此処で死んで貰います」


 女性は瞬時に両手にサブマシンガンを構え、乱射する。


 皆は一斉に散らばり、何とか弾丸の雨を回避をした。


「愚かですね、大事な事を忘れて居ませんか?」


 そう言うと女性は手榴弾を構え、コックピット目掛けて投擲(とうてき)した。


 するとエリンは急いで飛び出し、手榴弾を手に取った。


「何してるエリン!」


 刀矢が叫んだが、エリンは気にしていない。


「大丈夫だよ~先生。手榴弾は爆発までに5秒位掛かるから☆」


 そしてエリンは女性に飛び込み、抑え込む。


「心中する気ですか?」


「まっさか~」


 エリンが飛び退くと、勝太は急いで手榴弾を狙撃し、爆破させる。


 手榴弾の爆発を諸に受けた女性は何とか立ち上がるが、衣服の一部が破け焼け焦げていた。


「ナイスお兄さん☆」


 そこに刀矢が素早く間合いを詰め、抜刀する。


「秘剣、『紅桜(べにざくら)』」


 刀矢の掛け声と共に薄紅色の斬撃が女性を四角く取り囲み、そのまま収束して斬り刻む。


「口程にも無いな」


 フレデリカは素早く近付き回し蹴りを入れ、未だフラついている女性を大空へ突き飛ばした。


「刺客にしては弱すぎるわね」


 女性はそのまま海へと落下して行った。


「まあ普通の人間が聖印武装(クラフト・アーツ)に対抗出来る筈も無いよね」


 寥は冷静に答えた。恐らく無人機の群れと彼女の乱入で、此方の体力を損耗させるのが目的なのだろう。


 極東に着く迄にはまだ時間はある。各自は奪われた体力の回復に努める為、横になったり、壁にもたれ掛かって仮眠を執る事にした。




 一方、パラダイス・ロストの本部では……。


「ニヒヒ……これは素晴らしいデータが採れたねぇ」


 無造作に伸ばしたボサボサの灰色の髪と緑の瞳を持ち、眼鏡を掛けた少女が告げた。彼女は端末を(いじ)り、何かを入力して行く。


「素晴らしい戦闘能力、そしてチームワーク。ニヒヒ……これぞボクの求めていたデータだ」


 少女は作業を終えて、隣にあるベッドへダイブする。


「さて、ボクの仕事は終わったし、後はのんびりしてよーっと」


 少女はそのまま眠りに就いた……。

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