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運に寵愛された転換転生者【完結済】  作者: 大沢慎
第4章 獣人国編
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第94話 ライル王都への帰還


 ソーマ達は海人族の島で実に約3週間の足止めを食っていた。

 同じ場所でジッとしているのが苦手なソーマは早く戻りたかったが、船を出してくれている海賊団の意向に反するわけにもいかず、そもそも船が壊れたのも大海竜討伐の影響なので、のんびり過ごしながらも日々訓練に明け暮れていた。

 幸いその間にソーマは大魔術士スキルを取得した。

 職業は大魔導騎士となり、MPと知力が20%上昇し、その他のステータスも5%上昇している。

 おかげでマキナの十八番である灼熱天柱や炎獄嵐、それに大魔術師取得時に取れると思われる高位の単属性魔法である凍土、竜巻、流砂も取得した。


 マキナも大魔術師スキル取得が見えてきており、丸眼鏡は賢者スキル取得に向けて習熟度上げを行なっていた。


 そして長いバカンス(?)の末、ついに船の修復が完了した後は早速王都へと戻ることになった。

 本来であれば港があるラスタに戻るのだが、ソーマ達はライル王都から近い海岸から丸眼鏡の氷の道を用いて途中で下船させてもらい、そのまま王都に向かうことにした。

 ソーマと丸眼鏡はジャックに礼を言い、マキナも久々に親とゆっくり時間を過ごせて満足したのか笑顔でロバーツ海賊団に別れを告げた。


 現在は王宮へと帰還し、王とフィオナが現れるのを応接間で待っている。

 マキナと丸眼鏡はフィオナのことはさほど気にしていないらしかった。そもそもマキナは好きにすれば良いという態度を一貫しており、おそらく興味が無いのだろう。つまり、仲間とすら思っていないのだ。

 丸眼鏡に関してはソーマとマキナの理想の推しカップルのプラトニックラブを育む障害という見方をしているらしくいなければいないで良いと思っていた。つまり、仲間という意識は無い。


 しかしソーマは別であった。性分なのかこの世界の常識に馴染んでいないからかは分からないが、一度縁があって仲間になりたいと言っていたフィオナには、王の訓練で変わって欲しいと思っていた。

 以前のフィオナでは一緒に旅をすることは難しかったと、ソーマは思っていた。

 だが「おまえは弱いから付いてくるな」とは言いたくなかった。でも付いてきていずれ強敵と出会った時にフィオナが死んでしまったり、フィオナを庇うことでパーティが崩れ全滅するのはもっとイヤだった。


(まあいずれにせよ、あの王様の訓練を受ければ付いていくかやめるかくらいの判断は自分で出来るようになっているだろう)


 ソーマは応接間の果物を摘みながらそんなことを考えていると、王とそれに続いてフィオナが応接間へと入ってきた。


「ソーマ様! お会いしたかったです! あれ? なんかちょっと日に焼けました?」


 入ってくるなりフィオナはソーマに、出会った頃によく見せていた笑顔で駆け寄る。

 フィオナの両手と両足には黒銀のシンプルなガントレットとグリーブが装着されており、服も以前は真っ白な絹のドレスであったが今は緑基調の竜と思わしき、革の軽鎧を身に付けている。


「お? なんかおめー随分雰囲気変わったな、装備もだけど弱虫みてーな雰囲気が消えたか?」

「マキナさん、フィオナです、フィ・オ・ナ!」

「のぉおおお!!! 早速ソーマ殿を巡って正ヒロインとの三角かんけぇぇえええいいい!!!」


 ソーマが返事をする前に早速お約束の話が進まない展開、ソーマは苦笑いをしながらフィオナに応える。


「一日中海で訓練してたからちょっと焼けたかもね。フィオナもその様子だと訓練は無事終えたのかな?」

「ああもうソーマ様優しいですわっ! ええ、みっちり訓練受けまして、無事修了しました! このアダマンタイトの装備も王様から卒業記念品で頂きました!」


 フィオナが王の方を見て微笑む。


「うむ、まさか私の訓練に最後まで付いてくるとは思わなかったぞ。フィオナは気持ちが強い、必ずソーマ達の役に立ってくれるだろう。して、大海竜は無事狩猟出来たのか?」

「はい、おかげさまで。書簡もありがとうございました。それにフィオナの訓練も」

「よいよい、私は強い者が好きだ。訓練は半ば私の趣味みたいなものだよ」


 王は笑いながらフィオナの肩を叩き、フィオナも自信に満ちた笑顔でそれに応えている。

 それを見てソーマは、王にフィオナを見てもらって良かったなと心から思った。


「それでライル王、一つお願いがあるのと、一つ込み入った話があるのですが」

「ふむ、では願いの方から聞こう」

「ありがとうございます。まず大海竜ですが、今ココネの収納に入れてもらってるんですけど、ココネが海水に濡れた大海竜の死体を収納に入れておくのが心の底からイヤみたいなので、出来ればウデの良い職人に素材に変えて頂きたいのですが」


 ソーマはかなりの期間足止めを食うと知った後、大海竜の死体が腐敗していくのを嫌ってムフフの袋に入れてくれとお願いした時の丸眼鏡の本当にイヤそうな顔を思い出していた。

 一応火竜王の時と同じように鉄でコーティングしてあるのだが、海水で濡れていたり砂が付いていたりするのもイヤみたいである。

 もしかすると丸眼鏡は少々潔癖なところがあるのかもしれないな、とソーマは思っていた。


「うむ、それは構わん。というか王宮の装備は王都の民間の職人に委託しているからな、あとで紹介するのでそちらで話し合ってくれ」

「ありがとうございます。で、込み入った話の方ですが……盗聴防止の魔法を使って良いですか?」


 王が了承の意を示したので、気持ち強めに風の壁と床の微振動を魔法で起こし、盗聴対策をする。


「ライル王、貴方ですから話すことです。過去にこの話をしたのはローガンさんと、僕の義理の親のみです」


 そしてソーマは世界樹と魔神神殿を蘇らせた経緯、そこで得たスキルの話、魔神と人間の女神との出会いなどを王に話し、本題へと移る。


「俺たちのパーティは種族を気にしませんし信仰もありません。なので今後も各種族の聖地を復活させ、SSランクスキルの謎を解きたいと思っています。それで本題なんですが、海龍神の祠は現存しているんですか? もし崩壊しているのであれば、王が望まれるのであれば是非俺たちに委任して頂きたいんです」


 王は黙ってソーマの話を聞き、俯きながら考え込んでいる。

 フィオナも初耳の話であったが、余りにも壮大な話と信仰する世界樹を復活させたのが憧れのソーマということで目を輝かせていた。

 マキナと丸眼鏡には既に王に話すことは共有している。


(さすがに一国の王ともなると繊細な話題だったかな。海龍神の祠が現存しているなら他国の聖地を復活させるのは獣人族にとってデメリットでしかないし。でも……崩壊してると思うんだけどな)


 ひとしきり考え込んだ後、王は顔を上げてソーマ達と向き合った。


「なるほどな。話してくれたこと、感謝する。話を進めたいのだが、これから話すことは獣人国の中でも最上級の機密事項だ。外部に漏らさないと神に誓う……いやそなた達は信仰を持たないのであったな、外部に漏らさないと仲間の命に誓うのであれば話そう」


 王の真剣な面持ちに、四人は小さく誓うと告げる。


「もちろん私もそなたらの話を外部に漏らすことはないと神に誓おう。そなた達の言う通り海龍神の祠も当然、崩壊しておる。長年海人族の協力を得て、海龍神の祠に関すると見られているダンジョンも発見しておる。しかしそのダンジョン攻略が難航していてな、その過程で私が生み出したのがフィオナに施した特別な訓練なのだが……ちと厳しすぎてなかなか付いてこれる者がいなくてな」


 王は情けないとばかりにため息を漏らす。

 ソーマは一体どんな訓練をフィオナが受けたのかと興味が湧いていた。


「知っての通りダンジョンに入れるのは5人までだが、我が騎士団では太刀打ち出来ない。私が直接行ったこともあったが、やはり王が国を空けるのもそうだが、万が一のことがあってはいけないとあって苦労しておったのだ。そなた達が手伝ってくれるのであれば、非常に助かるのは言うまでもない」

「ありがとうございます。俺たちの目的は俺たちで聖地を蘇らせることなので、王の了承が頂ければ尽力は致します」

「うむ、ただ国にとっても最重要案件ゆえ、臣下達にも確認を取らせてくれ」

「もちろんです。ありがとうございます」


 確認と根回しに少し時間が掛かるとのことで、王から大海龍の解体を受けてくれる職人の紹介を受けたソーマ達は王都へと出ることにした。


 ライル王都は王城を丘の頂上に据え、そこからなだらかな下りに広がっている坂の街である。

 万が一他国に攻め入られても城は常に高さを取れるような設計となっており、さすがは軍事大国と言った所だろうか。

 石造りの街並みと細い三角のカラフルな屋根が特徴的で、街の中心には一本のトロッコが王城から外門まで街を縫うように敷かれていた。

 ソーマ達はそのトロッコに乗って街へと出る。


「へー、トロッコって初めて乗るな、珍しいんじゃないか?」

「うむ、ライル王都は物資の輸送に下りは良いが登りは大変じゃからの、人も乗せれるが主な用途はそっちじゃのう」


 なるほどな、というソーマの横にちゃっかりとフィオナが座る。


「ソーマ様達の旅の目的、初めて聞きましたわ! それに我らエルフの世界樹を復活させたのがソーマ様だなんて、私感動しました! 一緒に旅が出来て嬉しいです!」

「うむぅ……フィオナ殿、ちとくっつき過ぎな上に声が大きいのではないかのぅ」


 ソーマの腕に手を絡めて感動を口にするフィオナに、丸眼鏡は小言を言い、ソーマは黙って引き剥がす。


「にしてもよぉ、随分明るくなったじゃねぇか。そんだけ自信あるならあとであたしと勝負しろよ」

「あら、良いですわね。じゃあ私が勝ったら今後宿で泊まる時の部屋割りはソーマ様と私にしてもらえます?」

「自信たっぷりじゃねぇか、良いぜ、まあ別にあたしは丸眼鏡っちと一緒でも良いけどよ」


 バチバチと視線を交わすマキナとフィオナ。


「のぉぉおおおおお!!! いかんですぞ!! いかんですぞ!! マキナ殿絶対に勝ってくだされ!! こやつは危険ですぞ! ソーマ殿の貞操が!! プラトニックがぁああはぁっ!!」


 そしてついに爆発暴走した丸眼鏡に、ソーマはひたすらに深いため息を吐いてトロッコの行く先を見つめるのであった。



いつもお読み頂きありがとうございます!

楽しんで頂けたら嬉しいです!

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