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運に寵愛された転換転生者【完結済】  作者: 大沢慎
第4章 獣人国編
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第80話 マキナのクラスチェンジ


「よし、じゃあとりあえず領主邸へ調査に入るまでの三日間は、俺とマキナは剣豪スキル取得を目指して稽古、フィオナは魔術師スキルをまず獲得出来るように習熟度を上げること。丸眼鏡には申し訳ないけどフィオナの相手しながら領主を見張っておいてくれ」


 四人は宿で今後の予定について確認し合っていた。

 大半の宿は二人部屋と三人部屋の構成になっているので、今回からソーマとマキナ、丸眼鏡とフィオナの二部屋に分かれた。

 丸眼鏡にとってはこちらの方が都合が良いらしい。色々と。


 深夜までの稽古は終わっているので、寝るために挨拶をしてソーマとマキナは共に部屋に戻った。


「しっかしまたヘンテコリンなヤツが仲間になったな。バフは楽しいけどよ、あいつ大丈夫なのか?」

「さあね、俺も良く分かってないよ。まあフィオナの意志で居たいっていうなら拒む必要もないけどね、回復とバフは有用だし。でもどれくらいの気持ちで言ってるのか分からないからな」


 フィオナを除く三人はフィオナの加入に関して、少々懐疑的であった。

 ソーマはこの世界に来てから強くなることそのものが楽しくスキルに恵まれたこともあって「起きている時間は稽古」を体現するほど夢中で強くなり続けている。

 マキナもツラい生い立ちと境遇の中、それでも生き甲斐を求めてソロでトレジャーハンターとしてダンジョンに潜る猛者であり、丸眼鏡も似たような環境の中で本人曰く「理想の異種族ハーフプラトニックカップルに出会った時のため」に情熱を持って努力してきた変質者である。


 それに引き換えフィオナはエルフの国で神童として寵愛されて育った、いわば温室育ちであり、旅先でトラブルに巻き込まれた所をたまたま救ってもらったソーマに一目惚れしてしまった「ちょっと強い女の子」のように三人の目には映っていた。

 そんな彼女がレベルアップジャンキーにお宝大好きバトルジャンキー、変質者のパーティに付いてこれるかというのは三人が皆、疑問に思っていた。


「まあ前にも言ったがあたしは道中であのエルフが死んだって知らねぇぜ。あたしはおまえや丸眼鏡ッちになら背中を預けても良いと思ってるし、おまえらの背中も守ってやるって気持ちで稽古やってるからな。それで自分が死んでも文句ねぇよ。そうだろ?」

「ああ、俺も同じ気持ちだよ。っていうかマキナが丸眼鏡をそこまで仲間として見てるとは思わなかったな」

「あ? ああ見えて丸眼鏡ッち、普段は飄々(ひょうひょう)としてマイペースそうに見えてもパーティのこと考えてるぜ。おまえが一人でも戦えるようにって言ったあと、真面目に高火力の魔法研究してたしよ。ああいう真面目なヤツは好きだぜ」


 意外とよく見てるんだな、とソーマは思った。

 そしてパーティとはお互いの命を預け合いながら戦うものであって、馴れ合いや恋愛感情で一緒にいるものではない、というマキナの言葉にはソーマも同意であった。

 丸眼鏡に関しては他人から見ればふざけているように見えなくもないが、本人は本気である。それをソーマもマキナも感じ取っているので信頼していた。


「まあいつまで付いてくるか分からないけど、俺たちは普段通りやるだけだからな」

「ちげぇねぇな」


 そう言うと、翌日の早朝稽古に備えて二人は眠りについた。

 隣の部屋では丸眼鏡がムフフの耳をそばだて、顔を真っ赤にしながら喜びを噛みしめていた。




 翌日から四人は二人一組になって稽古を始めた。

 丸眼鏡とフィオナは街の外壁の外の砂漠で、丸眼鏡は探知をしながらフィオナの稽古に付いていた。


 フィオナが魔術師スキルを得るには、まずスキル・魔術の習熟度を50まで上げる必要がある。その後大魔術師スキルを得るために、水と風の低位魔法を三種ずつ、習熟度を50まで上げ、ステータスも伸ばす必要があった。

 回復は実質水と風の複合中位魔法なのでそちらの習熟度は充分であったが、水属性魔法は二つしか取得していないので、まずはそれを三つにしながら習熟度を50に上げるまでを目標にする。

 早朝から深夜までの稽古など未だかつてしたことが無いフィオナは必死になって取り組んでいた。


 一方ソーマとマキナは相変わらず鉄の棒を斬らないように斬る訓練である。

 マキナはたまに切断まで至らぬ切り口で済むことが出てきており、不斬剣の取得まではさほど時間は掛からなそうであった。


「にしても斬鉄剣で魔法が斬れるとはな。たしかに概念を斬る斬撃なら可能かもしれないけど」

「おう、単発ならそれでも良いんだけどよ、あん時の炎熱嵐みたいな範囲魔法だと魔眼使わねぇと無理だな」


 マキナはゴールドメイスのボスが放った炎熱嵐の事を思い出して語る。


「なんつーかよ、魔法にも核みてぇのがあるっぽいんだ。それを斬れば範囲魔法でも一瞬で消えるぜ」

「なるほどな。っていうかマキナの魔眼ってそんなに使って大丈夫なのか?」

「あ? そういや言ったことなかったか?」


 どうやら海賊時代、魔眼の使い過ぎで両目が見えなくなったことがあったとのことだ。

 激しい痛みに加えて血の涙を流し、暗闇にひたすら耐えていたのを、父親代わりの御頭がずっと大切にしていた世界樹の粉塵を使って回復させたらしい。

 それからは滅多な時には使わなくなり、痛みが出ることもほとんどなくなったとのことだった。


 ちなみにソーマは知らないが、世界樹のダンジョンにて神樹喰いと戦った時にもマキナは魔眼の使い過ぎで目から血を流していたが、あの時はソーマを治癒させるために使った世界樹の粉塵で回復している。

 一度そう言ったアイテムでリセットすると、しばらくの間は大丈夫らしい。


「そうか、まあこっちには俺も丸眼鏡もいるから範囲魔法は大人しく結界使って防ぐか避けた方が良いね。心配だから今後は魔眼使うのやめようよ」

「まあな、でもあん時のおまえの悔しそうな顔見れただけでも魔眼使った甲斐があったぜ。もう使わねぇよ」


 マキナはそう言うとまた勝ち誇った顔でソーマを見て、ソーマもその視線をジト目で見つめ返していた。

 その時、マキナの鉄の棒が完全に傷が入らない状態で斬撃を受ける。


「……お? お、おおお!!! おい! 不斬剣取得したぜ!」

「おいおいマジかよ……このままだと俺が三人の中で最弱になっちゃうんだけど」


 マキナは目の前に掲げた鉄の棒を何度も剣で斬り付けるも、鉄の棒は傷一つ付いてない。

 直後、ニヤリと笑みを浮かべたマキナが瞬時に間合いを詰めてソーマの身体を右下段から一閃、切り裂いた。

 しかしソーマの身体にも衣服にも、一切の傷はつかない。


「……うっわ気持ちわるっ。剣が身体の中を通った感触はあるのに全然痛くないぞ」


 ソーマは胸の辺りを擦りながら神妙な表情をしていた。


「取得したらちょろいもんだぜ、斬るも斬らねぇも意志次第だ」

「いや、勝ち誇ってもすぐ俺だって取得するからな」

「はーん、じゃああたしがクラスチェンジしたか確認しようぜ」


 マキナがワクワクしながらステータスプレートを確認する。


―――――――――――

名前:マキナ

年齢:19

職業:闇の魔剣士

レベル:52

ランク:Cランク


・ステータス

HP 395

MP 628

ちから 399

すばやさ 502

ぼうぎょ 387

ちりょく 621

こううん 349


―――――――――――


「うおお! あたしもクラスチェンジで闇の魔剣士になったぜ! マジでかっけぇ! ステータスも上がってんな!」

「なるほど、闇の魔術師から闇の魔剣士にクラスチェンジしたことでHPとちからとぼうぎょが10%ほど上がってるね。っていうか世界樹と魔神神殿の恩恵もあってホントにステータスが化け物じみて来てるな……」


 もはやソーマの幸運を除く最も高いステータスの値とマキナの最も低いステータスの値が同じくらいという、まさしくステータスの申し子のような数値にソーマは呆れていた。


「それに剣豪スキルに上がってCランクに“心眼(しんがん)”ってスキルも出たぜ。効果は“斬撃耐性及び物理耐性を無効化する”だってよ」

「そりゃ強いな……火山ウサギも瞬殺出来そうだ。なんにしてもおめでとう」

「おう、おまえのクラスチェンジも早く見てみてぇぜ!」


 二人は拳を突き合わせると、また各々稽古に戻る。

 マキナはこれから大魔術師スキル会得に向けて魔法の習熟度を上げていくのが課題であった。




 三人は早朝から昼前までの稽古を終え、昼食を取りに街まで戻っていた。

 一度宿に戻って各々シャワーを浴び、着替えてから街の広場ですっかりはまってしまったパルテドリンクを飲んで昼食を取っている。


「おう丸眼鏡ッち! あたしもクラスチェンジしたぜ!」

「おお、おめでとうなのじゃ。ふむふむ闇の魔剣士というのかの。ステータスも上がってスキルも増えておるのぅ」

「あんがとよ! ソーマが魔法剣士だからよ、クラスチェンジしたら何になるか見ものだよな!」


 マキナはよほど嬉しいのか丸眼鏡との会話で盛り上がっている。

 その様子を見ているフィオナは笑顔だが、どこか物憂げな雰囲気も帯びている。


「わ、私も早く魔術師スキルを取れるように頑張りますね。まだ水属性の三つ目の魔法は取得出来てませんが……」

「まあ焦らずその調子で頑張ってね。あと移動は結構走るから、疾風の習熟度も上げといてもらえるとありがたいかな」

「わっ、分かりました! 頑張りますっ!」


 こうして昼食を終えた四人はほんの少し仮眠を取った後、楽しい楽しい午後の稽古の時間を過ごすのであった。

 ただ一人を除いて。



いつもお読み頂きありがとうございます。

楽しんで頂けたら嬉しいです!


※誤字報告ありがとうございます!

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