第79話 フィオナ仮加入と丸眼鏡の絶望
四人はシスの街の広場でパルテドリンクを飲みながらテーブルを囲んでいた。
ゴールドメイスの屋敷内にフィオナの装備が隠されていたので、それを回収してフィオナは身に着けている。
細身でシンプルな純白のドレスは如何にも高貴なエルフと言った具合で、靴も純白の革のものを合わせていた。エルフであるが武器は弓ではなく杖で、すらりと胸まで伸びるストレートの金髪に宝石のような碧眼、透き通るような白い肌にいつもにこにこと笑顔なのもあり、正統派癒し系美人エルフといった感じであった。
「……して、フィオナ殿はまさかと思うが……ソーマ殿の事が好きなのかの?」
「ええ、好きですよ?」
「……の、のぉぉおおおおおおおお!!!!」
丸眼鏡は先ほどから取り乱しながら頭を抱えたり急に冷静になったり「恋に障害はつきもの」だとか「じゃが強力なライバルの出現にはまだ早い」とか、とにかくパニックである。
「えっと……ココネさんはソーマ様とはそういったご関係ではないんですよね?」
「わ、わたくしはモブキャラゆえ!」
「あら、良かったですわ。ではマキナさんは?」
フィオナがにこにこした顔でマキナを向く。
「あ? 普通に仲間だぜ。っていうかあたしそろそろ稽古行きたいんだけどよ」
マキナは早く不斬剣を取得して剣豪スキルを得たいのか、話している暇があるなら稽古をしたいと言った状態だ。
尚、現在丸眼鏡は会話をしながらも領主邸内の調査も同時に行っているので、ただ世間話をしているというわけではない。
「あら、マキナさんのお稽古の邪魔をしてしまいましたね。では私もソーマ様にお稽古を付き合って頂こうかしら?」
「いや、うん、そもそもフィオナはこれからどうするんだ? 俺たちは一応ギガントタートルの素材が取れればエルフ国に行く予定だから、エルフの国に帰るならちょっと時間掛かるけど送って行っても良いし、もっと早く帰りたいなら護衛依頼とか出して――」
「いえ、私はソーマ様とご一緒したいですわ」
フィオナの意向に三人は言葉を失う。
しばしの沈黙を破ったのはマキナだった。
「あたしは別に良いけどよ、弱えヤツが中途半端な覚悟で付いてきて死んでも知らねぇぜ」
マキナはそう言うと席を立ってどこかへ行ってしまった。
「むむぅ……意外とあっさりしておるのぅ。こうなってしまったらマキナ殿には正ヒロインの意識を持ってもらわねば……」
「何ブツブツ言ってんだおまえは。っていうかエルフの国は大丈夫なわけ? 世界樹の巫女とか言ってたけど国としても結構大事な役割なんじゃないの?」
「良いんですわ、私が決めたのですから」
相変わらずフィオナはにこにことしている。
ソーマも賢者という国の重責から無理矢理逃げてきたので、フィオナの気持ちも分からなくはない。
「なるほどね。とりあえず丸眼鏡、フィオナのステータスとか教えてくれる?」
「うむ……まあわたくしはモブキャラゆえパーティメンバー加入の可否なぞ言える立場じゃないからのぅ」
――――――――――
名前:フィオナ=グレインローズ
年齢:23
職業:世界樹の巫女
レベル:27
ランク:
・ステータス
HP 190
MP 289
ちから 182
すばやさ 216
ぼうぎょ 185
ちりょく 276
こううん 179
こうげきりょく 482(世界樹の杖300(風属性・回復系の魔法、スキル効果上昇大))
ぼうぎょりょく 635(ホーリーワームの絹ローブ+380、ホーリーディアの革靴+70)
・属性
[水][風][光]
・魔法
低位魔法一覧
水 水球(40)水壁(30)
風 突風(22)疾風(11)風壁(30)
光 対物魔結界(18)
中位魔法一覧
回復 ヒール(82)ミドルヒール(71)エリアヒール(35)キュアポイズン(11)キュアパラライズ(9)
補助 戦士の歌(22)守護の歌(29)疾風の歌(19)賢者の歌(20)聖浄の歌(8)
高位魔法一覧
回復 ハイヒール(27)エリアミドルヒール(5)エリアハイヒール(2)
補助 英雄神の歌(2)
※魔法詳細
戦士の歌…HPとちからを上げる(効果大)
守護の歌…ぼうぎょを上げる(効果大)
疾風の歌…すばやさを上げる(効果大)
賢者の歌…MPとちりょくを上げる(効果大)
聖浄の歌…状態異常耐性を上げる(効果大)
英雄神の歌…すべてのステータスを一時的に大幅に上げる
・スキル
S:世界樹の加護
A:
B:精霊の歌い手
C:
D:杖術(17)魔術(42)
※スキル詳細
・精霊の歌い手…自身の声に魔力を乗せ、歌を用いた魔法を使える。
――――――――――
丸眼鏡はムフフの本に、フィオナのステータスを記載しソーマに見せた。
(なるほど、回復とバフの特化型か。レベルが低いせいでステータスは低いけどメンバーとしては強力ではある。それにしても……)
「フィオナはSランクスキルの世界樹の加護を持ってるんだな」
「ええ、世界樹復活の際にこのスキルが発現した者がエルフ国内でも数人いましたわ。世界樹からの賜りものです」
(ふむ、ということは魔神神殿の復活で魔人の加護が発現した魔族も当然いると思った方が良いだろうな)
「ど、どうですか? 私、Sランクスキルも持ってますし三属性もありますし、回復も使えるのでソーマ様達のお役に立てると思うんですが……」
「そうだな……一応俺たちも全員Sランクスキル複数持ちで三属性以上持ってるからね。回復とバフが特化してるのはうちとしてはありがたいけど、ステータスがみんなの半分くらいだし、スキルもかなり少ないから俺たちに付いてくるんならかなり努力しないと厳しいと思うけど、どうする?」
ソーマの言葉にはフィオナも絶句した。
それもそのはずである。Sランクスキルに三属性まで揃っていれば一国の中では英雄扱いだ。もちろんフィオナも例外ではなく、エルフの国では神童として昔から重宝されてきたのであった。
そんなフィオナですらソーマ達のパーティからすれば現時点でお荷物扱いなのだから、ソーマ達のパーティが如何に突出しているかが良く分かる。
「……大丈夫です、必ず追い付いてソーマ様のお役に立てるようになります!」
「そうか。まあ俺たちはかなり稽古もするし、場合によっては強い敵と戦うこともあるかもしれないから、抜けたくなったらいつでも言ってくれ。みんな自分の意志でここにいるからね。あと、俺はパーティ内で恋愛云々をするつもりはないからね」
「ありがとうございます! 大丈夫です、ソーマ様にその気がなかったとしても私が勝手にソーマ様をお慕いしているだけですから、ふふふ♪」
フィオナはいつも通りのニコニコ顔で、そう答えた。
隣では丸眼鏡が「いつも愛想良くて健気で素直に気持ちを表現する……ライバルが強すぎるのじゃ……」とかなんとか言いながらこの世の終わりのような絶望を顔に浮かべていた。
その後、特に領主邸で大きな動きが見られなかったので、三人はマキナの後を追って砂漠へと出ていた。
今はフィオナの歌の効果を確かめるために、ソーマとマキナがバフを受けながら模擬戦をしている。
人外な速度を持つマキナに対し、ソーマは疾風の歌と身体強化を使えば同等の速度を手に入れることが出来た。
尚、歌と言ってもそこまで長くなく、一つの歌でもせいぜい数秒程度ではある。しかしさすがに精霊の歌い手というスキルだけあってか、その歌声は非常に美しいものであった。
「んなっ! すげー速くなったな!? あたしに付いてくんぞ?!」
「元々歌が上昇効果大なのに加えて俺の大精霊の恩寵もステータスアップに上昇補正大が加わるからな、こりゃ良い」
すでに一般人には捉えられない速度で打ち合う中、ソーマとマキナは楽しそうに会話をしている。
丸眼鏡は目で追いながら会話も盗聴しているが、フィオナにこの戦いが見えているかどうかは定かではない。
しばらく打ち合った後、他の歌の効果も確認するために二人は丸眼鏡とフィオナの前に戻ってきた。
「おいエルフ! 今度はあたしにもちから上がるやつやってくれ!」
「マキナさん、フィオナです! フィ・オ・ナ・!」
口を膨らませて怒るフィオナに対し、マキナは悪びれもなくわりぃわりぃと言い、丸眼鏡は「怒っても可愛いんじゃぁああ!!!」と頭を抱えて絶望していた。
汗だくのソーマは冷たい水球を自身とマキナの頭に落として涼んでいる。
「うっひゃーやっぱ水って便利だな! さいっこーに気持ち良いぜ!」
「よし、マキナのちからにバフ掛けてもらったらもっかい行こう!」
ソーマもマキナも久々に打ち合えるのに加え、自身のステータスが一気に上がるのが楽しい様子で、フィオナがマキナにバフを掛けた後はすぐに稽古に戻っていった。
ちなみに歌は対象を任意に選べるとのことで、一人から何千人単位まで歌い手の意識でどうとでもなるとのことだ。
ただし戦争時に何千人といる中で任意に相手を選ぶのは実質不可能で、敵味方の区別も難しいので、大抵は接敵前に味方全員に掛けるのが一般的である。
「あ、あのココネさん。お二人の戦いが半分くらいは見えないんですけどココネさんもあれくらい戦えるんですか……?」
フィオナは不安げな顔で丸眼鏡に尋ねる。
「さすがに無理じゃの。わたくしは補助がメインじゃし、なんなら非戦闘時のスキルの方が得意じゃからのぅ」
その言葉に安堵したフィオナは、その後丸眼鏡との模擬戦でボッコボコにされて落ち込むのであった。
その時の丸眼鏡に私情が絡んでいたのは言うまでもない。
いつもお読み頂きありがとうございます。
連日日間ランキング入れています、ありがとうございます!
フィオナ、賛否両論あるキャラクターですが、小説内で最も精神的成長を遂げるので、生温かく見守って頂けると嬉しいです。
楽しんで頂けたら嬉しいです。




