第76話 突撃、ココネ調査団!
現在ソーマ達はギルド内の応接間を借り、獣人王国官吏2人と共に打ち合わせをしている。
官吏は50歳前後と思われる鹿のようなグレッグと名乗る男と、30歳前後と思われる眼鏡の狐のテイラーという女性だった。
「となると……やはりクレイシス卿とゴールドメイスの繋がりはあると見た方が良さそうですね。国内の悪事を他国の冒険者様達からご指摘頂く等お恥ずかしい限りです」
「いえいえ、そちらに連絡したのはココネですし、僕たちもギガントタートルの素材が必要ですから」
ソーマは王国官吏にギガントタートルの洞窟前であった出来事を伝えた。どうやらシスの領主はクレイシスという男爵らしい。
そしてさすがに丸眼鏡の元職場の同僚と思わしき相手の前で「丸眼鏡」と呼ぶのは失礼と思ったソーマはきちんと名前で呼んでいる。
ソーマがココネと呼んだ時に丸眼鏡はちゃんと覚えてたのかと驚き、マキナは一瞬「誰だ?」となっていた。
「王からの命で、今回に限りココネ博士を一度王国の臨時諜報員として任命するとのことです。ですから、ココネ博士が得た情報は例え第三者がいなくてもその情報は信ぴょう性を持ちます。我々はある程度権限を持っておりますので必要なことがあれば随時王国の命として強制調査やギルド依頼なども可能となってます」
「というかココネ博士以上に優れた諜報部員って王国にいないんですよね……」
グレッグとテイラーは調査権限を丸眼鏡に譲り、方針に沿って動くという姿勢を取ったようだ。これはある意味で丸眼鏡に対する王国の信頼が厚いとも言える。
「丸眼鏡って結構良い地位にいたんだな」
「一応長年仕えておったからのぅ……。さて、どうするかの。一応調査権は頂いたようじゃが」
「そうだな……。とりあえずキナ臭いゴールドメイスから突いてみるか。俺とマキナは護衛という名目で官吏の二人と丸眼鏡を連れて聞き取り調査って感じでゴールドメイスのボスに会いに行って、その後どんな会話が出てくるかを丸眼鏡に聞いてもらおうかな」
「うむ、ではそのように進めるかの」
ソーマと丸眼鏡は方針を決めたのち、概要を全員に説明してゴールドメイスの屋敷へと向かった。
屋敷には相変わらず見張りが立っていた。
丸眼鏡が先頭に立って見張りに話しかける。
「失礼、ライル王国の調査団の者じゃが代表に取り次いでくれぬか?」
「あ……? え、ちょ、ちょっと待ってくれ、くだせぇ」
見張りはあまり慣れてないのか明らかにたじろぎ、屋敷へと入っていった、と思ったらすぐに戻ってきた。
「王国調査団っていう証拠はあるのか?」
「ほれ、書類はこの通り。悪いがそちらに拒否権はないのぅ」
「う……ちょっと待ってくだせぇ」
見張りは書類を持って屋敷に再度消えた。今度は少し時間が掛かっているようだ。
丸眼鏡とソーマは風魔法を使いながら仲間内だけに聞こえるよう会話をする。
(何か色々隠しているみたいだな。人の動きが慌ただしい)
(うむ……書類の類かのぅ。さすがに視覚化しても文字までは読めんの)
マキナは終始退屈なのかあくびをしている。
数分後、スーツのような衣服を身に纏ったすらりとした犬系の獣人がやってきて、丁寧な口調で屋敷内へと通された。
屋敷内はかなり広く豪勢な造りだが、やはり王国とは違い成金気質というか、端的に言えばセンスがなく趣味が悪かった。
ソーマ達は武器などを持っていないかの身体検査をされ、大きな応接間へと通される。
なお、武器の類は全て事前に丸眼鏡のムフフの袋に入れてあった。
「これはこれは、王国調査団の皆さまにわざわざご足労頂き光栄です。そちらにお掛け下さい」
出迎えたのは大柄の熊男で、言葉こそ丁寧だが眼光鋭く終始威圧感のある態度だ。
金のネックレスや大きな宝石の指輪などしており、いかにもといった具合である。
「ふむ、突然の調査へのご協力すまぬのう。わたくしは調査団長のココネ、横の二人は補佐官のグレッグとテイラーじゃ。後ろのは護衛じゃの」
「ご紹介ありがとうございます。ゴールドメイスを仕切っているドリアと申します。さて、それで今回はどういったご用件で?」
「うむ、先日ギガントタートルの洞窟に赴いたんじゃが、領主の一存で領内の洞窟の出入りを規制する、これは何ら問題ない。して、その洞窟のガラの悪い見張りがゴールドメイスに雇われていると言っていたものでな、ゴールドメイスは領主から見張りを任されておるのかの?」
「ええ、善良な領主が善良な組織に見張りを任せる、それが何か問題でも?」
なるほど、あくまでもゴールドメイスは後ろめたいことのない一民間組織であるという体を貫くのか、とソーマは考える。
「ふむ、たしかに問題ないのう。では年に一度、ギガントタートルを王国の祭りの際にクレイシス卿から奉納しておられると思うが、それもそちらで狩猟されるのかの?」
「ええ、王国への献上物を狩猟させて頂いており全く以て光栄ですな」
「やはりの、昔はそちらもギガントタートルの仲介もしておったしのぅ。今日はその狩猟に関する調査で参ったのじゃ。その狩猟法と主要パーティを早急に教えてもらおうかの」
ここまでは全てソーマ達の想定内で話が進んでいた。
長生きである亀の王であり獣人国の名物であるギガントタートルは王国の祭りで毎年奉納される神聖な魔物である。そしてギガントタートルは非常に強力な魔物のため、奉納されるギガントタートルを狩猟したパーティは羨望の的となるのが祭りの恒例であった。
「え、ええ。しかし急に言われましてもうちも暇な組織じゃありませんからな、主要メンバーも固定ではありませんし、今は大半が出払っておりますな」
「ふむ、ではいつまでに用意出来るのじゃ?」
「し、少々お待ちください」
ボスは側近と思しき男と小声でやり取りを始める。
勿論丸眼鏡の風魔法によって内容は全員に筒抜けである。
(ジョーを呼び戻せ、なるべく時間を掛けさせろ)
(承知しました)
「そうですな、五日もあれば揃うかと」
「ふむ、では五日後にまた来るかの。ご協力感謝する」
そう言うと丸眼鏡が立ち、官吏二人も続く。
見送りは結構と伝え、五人はその場を後にした。その後広場まで移動し、屋敷内をくまなく探る。
「おお、聞かれてないと思ってボロボロと出てくるのぅ」
「さすがだな、俺はこの距離だと会話もロクに聞こえないぞ」
丸眼鏡は非常に精度の高い探知をしながらムフフの本を出して会話の内容をメモしている。
マキナは退屈の限界が来たのか、パルテドリンクを飲んだあとは椅子に座りながら寝てしまった。
一時間ほど盗聴……もとい、調査を続けた丸眼鏡は話の概要をまとめてソーマと官吏に話した。
ゴールドメイスは、何故今回急に調査が入ったのかという部分で、何やら非常にマズいことを隠しているようであった。さらにギガントタートルの買取先とそのマズいことも関連があるらしく、終始“奴等”という言い方をしていたが、その組織をゴールドメイスは恐れているらしいことも分かった。
さらに数日後、その“奴等”とかなり大きな取引があるとのことで、それを前倒し出来ないかとか、それだけは失敗出来ない、というような内容を話していたとのことだ。
「なるほどな……その奴等ってのと取引する現場を押さえて、隠しているマズそうなこともひっくるめて、まずゴールドメイスから潰した方が良さそうだね」
「ふむ、その後ゴールドメイスから領主に対して聞き取りして、情報が出ても出なくても調査団として今度は領主を突っつくと言う算段かの。たしかにそうなればボロが出そうじゃのぅ」
官吏二人はソーマと丸眼鏡の話を聞いてうんうんと頷いている。
「おそらく取引は三日後の夜じゃの。一応今日からわたくしとソーマ殿で昼夜問わず交代で見張っておるから、グレッグ殿とテイラー殿は王国に掛け合って、ゴールドメイスを一網打尽にした時に速やかに王国に連行出来るよう手配を頼むの」
「分かりました。それにしてもよくあの場で平然としておられましたな……私は足が震えてしまって」
「私もあのボスに睨まれた瞬間すくんでしまいました……」
どうやらゴールドメイスのボスは調査団一行に対して威圧スキルのようなものを使ったらしい。
ソーマは口からよだれを垂らして幸せそうに寝ているマキナを見て、こいつがそれに気づいていたら絶対覇気でお返ししてだんだろうな、と威圧耐性のありがたみを感じた。
いつもお読み頂きありがとうございます。
昨日に引き続き日間ランキング213位入れました!
評価、ブクマして頂けた方々、本当にありがとうございます!
そして、いつもお読み頂いてる方々も本当にありがとうございます!
今後も一日二話更新は続けていきます、楽しんで頂けたら嬉しいです(^^)!




