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運に寵愛された転換転生者【完結済】  作者: 大沢慎
第4章 獣人国編
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第75話 モブキャラのクラスチェンジ

 

 獣人王国からの返答があるまでの間、ソーマ達はみっちり稽古をすることにした。

 ソーマとマキナは剣士スキルを剣豪に上げるべく斬鉄剣の取得に励み、その他に三人は魔術師スキルを大魔術師に上げる訓練も行う。


 剣豪スキル取得に必要な条件は、まず以下のスキルを取得していること。


・斬空剣、斬鉄剣、不斬剣(ふざんけん)


 そしてステータスのHPとちからが350を超えていることだ。

 ソーマとマキナは斬空剣まで取得しており、ステータスに関してもクリアしているので、残りは斬鉄剣と不斬剣である。


 大魔術師スキル取得は以下の条件を揃えること。


・二属性の低位魔法各三種の習熟度をそれぞれ50以上にする。

・上の二属性の複合中位魔法一種の習熟度を50以上にする。

・MP節約関連のスキル取得

・ステータスのMPとちりょくがそれぞれ350を超えている。


 スキルに関しては幸い三人とも大聖霊の恩寵、加護をソーマと丸眼鏡が、闇の加護をマキナが取得しており、それぞれMPを節約する効果を持っているので問題ない。

 ステータスも全員クリアしているが、習熟度に関してはソーマとマキナが圧倒的に足りておらず、丸眼鏡は地属性の礫弾を50まで上げれば到達するといった状況だ。

 これには魔神ダンジョン攻略で爆上がりした鋭礫嵐(えいれきらん)の習熟度が功を奏した。


 またソーマは丸眼鏡に、一人でもある程度戦えるよう攻撃的な魔法の取得も勧めていた。

 世界樹、魔神のダンジョンを踏まえて今後のダンジョン攻略において、パーティが分断される可能性があることも考慮したソーマは丸眼鏡一人でも強敵と戦えるようにしておいた方が良いと考えての案だ。


 丸眼鏡はすぐに大魔術師のスキルを取得出来そうだったので、礫弾の習熟度上げと共に攻撃魔法の開発に精を出すことにした。



 三人は広大な砂漠の中で、時に盛大に魔法を放ちながら稽古を進めていた。


「にしてもよ、斬鉄剣って感覚掴むのが難しいよな」

「そうだね、斬空剣は特に何かを斬る必要がなかったから色々イメージを試しながら出来たけど、斬鉄剣は実際に物を斬るわけだから、つい無意識に斬ろうとしちゃうね」


 ソーマとマキナは地壁で作り上げた鉄の塊をひたすら剣で斬っていた。

 剣豪スキル取得に必要な剣のスキルはいずれも切断の概念を取得するものとソーマは考えていた。

 斬空剣は剣の振りによって斬撃を飛ばすわけではなく、剣によって空間そのものを切断する技である。であれば、斬鉄剣は対象そのものを切断する技だろう。

 刃物で物体を分かつことと剣で対象を切断する、この違いを取得しなければいけない。

 しかし実際に物を斬るという感覚は身に染み付いており、概念の捉え方を変えるのは至難の(わざ)であった。

 ソーマとマキナは議論を交わしながらも黙々と鉄を斬り続けている。


 一方丸眼鏡はついに礫弾の習熟度を50まで上げ、大魔術師のスキルを取得した。


「ううむ……モブキャラのわたくしが一番先に取得してしまうとは不本意じゃったが……」

「おお、おめでとう。そしていつもモブキャラって言うけど、おまえだいぶキャラが濃いからな」

「やったな丸眼鏡ッち! ステータスプレート見てみろよ!」


 ソーマとマキナに祝福された丸眼鏡は礼を言ってステータスプレートを見ると、なんと職業の鑑定術士がアルケミストへとクラスチェンジし、さらにMP、ちりょくが15%上がってBランクスキルに錬金魔術師が発現した。


「ちと最初の表示しか見えぬと思うが、職業が変わりおった。さらにCランクの魔術師がBランクの大魔術師に上がったのは良いのじゃが、他にもBランクスキルに錬金魔術師というのが出ておる」


 これにはソーマもマキナも、そして当人の丸眼鏡も驚愕した。

 職業が変わるなど物語上の大賢者や英雄譚でしか読んだことがなく、さらに新たなスキルまで発現した。

 それほどまでに剣豪、大魔術師のスキルは希少かつ強力ということだろう。

 実際に取得条件などを見つけることなど不可能に等しく、剣豪よりは優しく見えるが大魔術師の取得条件もかなり厳しい為、よほどのことがなければどちらのスキルも発現させることは難しい。


「マジかよ! じゃああたしらも剣豪とか大魔術師取得したらクラスチェンジすんのか!? めっちゃやる気出るぜ!」

「一定の条件を満たすとそうなるみたいだな、ステータスにも上昇補正が付くみたいだし、俺も早く剣豪取得しないとな」

「うむ、わたくしは剣豪スキルは無理じゃろうから、お二人が剣豪と大魔術師を取得した時の職業がどう変わるか楽しみじゃのぅ」


 そして早速アルケミストへとクラスチェンジした丸眼鏡は、どう魔法の使い方が変化したのか試行錯誤を始める。

 色々試した結果、各属性の魔法を多彩に操れるようになっていた。

 これは大魔術師になったことも助けとなっているだろうが、スキルの錬金魔術師の恩恵が大きい。


 水魔法で言えば絶対零度を思わせる極低温の氷から高温の蒸気まで、異常な速度の突風や鋭い風の刃、風探知の範囲拡大や精度、そして土属性では様々な金属を生成出来るようになった。

 勿論金も作れるのだが、魔力が切れると消えてしまうため金貨を大量に作ったところでずっと残るわけではない。

 ただ質量の重い、例えば鉛のようなものも作れるため戦略の幅がかなり広がったと言えよう。

 一方でミスリルやアダマンタイトなどの特殊金属に関しては生成出来ないようである。

 丸眼鏡はその特性を活かして新たな高火力の攻撃魔法を生み出すことに励んだ。



 三人は約五日半、早朝から深夜までの稽古を終えた。

 この間でまずソーマが斬鉄剣を取得し、一日遅れてマキナも取得に成功する。

 合間合間で低位魔法の習熟度を上げながら、次は不斬剣の取得を目指している。なにせ丸眼鏡のクラスチェンジに触発されて自分たちも早く体験してみたいという欲求が湧き溢れているソーマとマキナの稽古に対する情熱は半端じゃなかった。


 丸眼鏡は練魔術を用いて様々な魔法を編み出していた。

 例えば敵を覆う金属の箱を作る魔法“監獄”。これだけであれば魔神戦の地壁に似ているが、その中の空気を取り除く“監獄・真空”や、中の温度を極限まで下げる“監獄・凍結”。そのまま箱を小さくして押し潰す“監獄・圧”。

 そして細い針や弾丸のようなものを大量に風で打ち出す“弾幕”などである。

 実際は地壁と凍土や、穿通礫錐と局所突風などのミックスなので新たな魔法というわけではなくステータスプレートの魔法欄にも載ってないが、十分に強力な組み合わせである。


 また、高位魔法に水属性の大地を凍り付かせる“凍土”や、風属性の“竜巻”なども取得している。

 これらは前述の監獄や弾幕などとは違い、固有の魔法なのできっちりとステータスプレートに残っている。


 実りの多かった五日半の稽古を終えた翌日の朝には、王国官吏もわざわざ2名派遣してもらい、王国官吏を含めて再度領主とゴールドメイスの今後の処遇や対処について話し合うこととなった。



いつもお読み頂きありがとうございます。

楽しんでいただけたら、嬉しいです。

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