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運に寵愛された転換転生者【完結済】  作者: 大沢慎
第3章 ドワーフ国編
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第66話 パーティ名は決まらない


 護衛依頼を終えたソーマ達は、日が暮れたこともあって真っ先に宿を探した。

 ドワーフ向けの天井や家具の高さが低い宿はどうしても窮屈なため、他種族向けの宿を取り、ソーマは疲れたのか適当に路面販売の料理を持って帰って部屋で食べ、マキナと丸眼鏡はどこかに食べに行ったようだ。


 ドワーフ国の首都マグラードの街並みは石造りが主で、どこか堅牢で重厚な雰囲気を持っていた。

 城下町と城を覆う外壁も石造りだが、大型の弩が並んでいたり外壁の周りに濠があったりと、造りに凝っている。

 では質実剛健でデザイン性が無いのかと言えばそんなことはなく、むしろ逆で街灯のランプの形状や窓ガラスの枠、建物の扉に施された細工やデザインなどはむしろ非常に凝ったものが多かった。


 しばらくするとマキナと丸眼鏡が帰ってきて、各々シャワーに入り始める。

 なんだかんだと結構喋っているマキナと丸眼鏡を見ると、どこの世界も女性は話し好きが多いのかな、などとソーマはぼんやりと考えていた。


 寝る準備を終えた三人は今後について話し合う。

 ちなみに冒険者向けの大半の宿は二人部屋と三人部屋になっており、2~5人パーティに対応している。


「にしても一般的なパーティがどれだけ不自由してるかってのが良く分かる護衛依頼だったな」

「慣れるとそれが普通だから気にならねぇけどな、でもおまえの土魔法住居と料理、丸眼鏡の収納は一度慣れたら普通のパーティがキツく感じそうだぜ」

「わたくしとしては宿も住居もお二人とはべ、別々に……んぬふぅっ!」

「おいチビメガネ、その語尾の『んぬふぅっ!』ってやつで覗き見盗聴する気満々なのバレてるからな」


 ソーマの容赦ないツッコミも既に丸眼鏡の世界に飛んでいる丸眼鏡には届いていないようだ。

 スキルなので証拠は残らないが、見方を変えれば日常的に推しカップルを盗聴覗き見しているただのヤバいヤツである。


「で、明日からは装備屋と鍛冶屋巡りか?」

「そうだな、まずは鋼の絆から聞いた店を回ろうと思う。あ、鋼の絆で思い出したけど、俺たちもパーティ名付けた方が良くないか?」

「良いけどよ、ありきたりなのとか変にカッコつけてダセェやつとかは勘弁だぜ」

「んぬふぅっ!! で、では『プラトニック・ラブ』なんてのは! ずっと夢でのぅ……異種族ハーフカッ、カップルんぬふぅうううう!」


 1人熱く盛り上がる丸眼鏡に冷ややかな視線を向ける二人。


「こういうのって一番難しいよな」

「とりあえず酒でも飲みながら考えようぜ」


 こうして酒を開けた三人はその後思いつくままにパーティ名を出しては大爆笑していた。




 翌日、三人は装備屋と鍛冶屋巡りを始めた。


「おいソーマ、店主に挨拶する時は『んぬふぅーず』のリーダーって言えよ!」


 マキナは思い出しては腹を抱えて笑っている。酔っぱらいのテンションとは恐ろしいものである。


「ううむ……わたくしとしては『堕天使マキナエルとその使徒』の方が好みであるが」

「丸眼鏡、それは厨二系姫ゲーマーとそれを囲う厨二オタク達の地獄パーティみたいだから却下だって言ってるだろ」


 そんなこんなで昨夜の余韻引かぬ三人はまたあーだこーだとパーティ名を出しては腹を抱えて笑いながら街を歩くのであった。酔ってなくても関係なかった。


 一件目はルゴルが教えてくれた装備屋の中では宿から最も近い場所に位置している「ドラゴンソード」という店だ。

 路面店の大きな店で、店構えも美しく如何にも高級店と言った雰囲気である。

 三人が店に入ろうとすると、中からちょうどブルーバードの面々が出てきた。


「ああ、ソーマ達か。有名店と聞いてきたんだが、オーダーはBランク以上しか受けてないらしくてね。いくら物が良くても汎用品よりはオーダーしたいと思っていたから残念だよ」


 リーダーのタスマルクはそう言うと、他の店を回ることにしたようだ。


「なるほどね、まあ一応見てみるか」


 店内に入ると小奇麗な店員が5人ほどおり、各々接客しているようであった。

 まるで日本の服屋さんみたいだな、とあまりファッションに縁がなかったソーマは店内を見て回った。

 並んでいる防具はどれも美しく、壁に掛かっている鎧や剣は装飾が施され、如何にも成金と言った感じだ。

 客層もどこか煌びやかな雰囲気の冒険者が多く、ソーマ達のような観光半分の冒険者はあまり店側から相手にされていないように感じる。


「こういう感じか。ちなみに品質ってどう?」

「うーむ、悪くはないと思うがのぅ……」

「やめとけよ、おまえがこんなの装備してたら気持ちわりぃ」


 概ね三人の意見は一致のようで、早々に店を後にした。


 二件目は先ほどよりラフな印象の「ファイヤードラゴン」という店で、店員も客もワイルドな雰囲気の冒険者が多かった。のだが、どうにもソーマにはその“ワイルドさ”を演出しているような気がしてならなかった。

 店の名前はドワーフ自体が火竜を信仰しているせいか「ドラゴン」と名の付く店が多いらしい。

 ソーマ達が入るも、店員は見向きもしなかった。随分さっきとは雰囲気が違うなと思いつつ、装備を眺めていく。


「さっきの店よりは好みだけど……ヌフーさんどう?」

「なんじゃその呼び名は……うーむ、品質はさっきの店とさほど大きく変わらんのう。価格はちょっと安めじゃが」


 マキナも早々に飽きたようで、三人はすぐに店を後にした。

 三件目もおおよそ似たような店で、そちらはミスリルなどの鉱石を主体とした防具より魔物や動物の革を使った防具が多くデザインでは好みだったが、それでも欲しいと思えるほどの品質ではなかった。


 三人は街の広場の屋台で買ったプリンポリンという甘い玉こんにゃくのようなもの食べながら休憩している。

 どうやらプリンポリンは名物菓子のようで、広場ではそこらじゅうでそれを食べている人たちを見かけた。


「なんか思ったより大したものがないな。ドワーフの国の首都っていうから期待してたのに」

「うむ、わたくしのローブと靴もどこで買ったんじゃったかのう……通りがかりの一目惚れじゃったから覚えてなくての」

「マキナの双剣ってどこに頼んだんだ?」


 プリンポリンをかじりながらマキナは「覚えてねぇ」と答えた。

 そんな折、近くに座っていた剣士風のドワーフの男が声を掛けてきた。


「おいおい兄ちゃん、悲しいこと言ってくれんなよ。どこの店回ってきたんだ?」


 ソーマは今日周ってきた三軒の店を剣士の男に伝えた。


「おお、その三軒の品質を見抜くったぁなかなかやるじゃねぇか。どこも商売っ気が強い店だわな」

「ああやっぱり、店入ってもそんな印象だったな」

「若いくせに良い眼を持ってるねぇ、気に入ったぜ。ドワーフ国の威信に関わるからな、特別にタダで教えてやる」


 その後、ドワーフの剣士は二軒の店を教えてくれたのでソーマ達は礼を言い、早速行ってみることにした。



 結論から言えば教えてもらった二軒も、最初の三軒より品質は良かったものの、わざわざかなりの金額を払ってまでミスリル装備から乗り換えるほどのものではなかった。

 ミスタリレ王国の隊長クラスがどれだけ良いものを装備しているのかが逆に分かる結果となってしまった。


 事実ミスリル装備は鉱石系の装備の中で、一般的に流通している装備の最高級品に位置している。

 マキナの海竜の鎧などの、竜の革素材を使った装備もあるにはあるが、かなり高価な上にミスリル装備より若干防御力が落ちるものばかりで、ファッション性のためだけにそこまでの金貨を払うという気持ちにはソーマはなれなかった。


「こうなると、腕の良い鍛冶屋に直接オーダーするって形になるかな」

「別に火竜の鎧とかでも良いんじゃねぇか? 今の見た目よりは遥かにマシだぜ?」

「うーむ、火竜装備を揃えるにしてもちと金貨が足りんけどのぅ」


(こういう時こそ幸運値の高さの見せどころだろ……歩いてたらたまたま見つけるとか)


 などとソーマが思っていると、看板の出ていないかなり古い店構えの建物の中から何か金属を叩く音が聞こえてきた。

 窓から覗くと数着の装備が壁に掛けてあり、中は工房のようであった。

 ソーマはその装備を見て、何か惹かれるものを感じた。


「ちょっと寄ってみて良いか?」


 マキナも丸眼鏡も了承したので、ドアをノックしてから中に入る。

 店主は気付いていないのか相変わらず作業をしているようだった。


「すみません!」


 ソーマの声に一瞬こちらに視線を向ける店主だが、すぐに何も言わずに作業に戻る。

 マキナは壁に掛かっている防具が気になったのか近付いてマジマジと見始めた。


「おいこら! 触んじゃねぇぞ! 帰れ帰れ!」


 店主が凄い剣幕でマキナを怒鳴ると、またすぐに作業に戻ってしまった。


「すみません、腕の良い職人を探していて、装備を作って欲しいんですが!」


 全く聞く耳を持たない店主に、ソーマは何度も同じセリフを言い続ける。

 7回目か8回目か、ようやく店主は手を止めてソーマの下へやってきた。


「ナメてんのかガキ、こっちは仕事中だろ」

「お仕事中すみません、でも俺も命を預ける装備を探してるんです、遊びじゃありません」


 ほう、と店主は腕を組んでソーマを見据える。

 壮年のドワーフと言った感じで白髪に白髭、大きな鼻が特徴的だった。


「誰から聞いてきた?」

「いえ、窓から覗いて、作ってる防具を見て決めました」

「はんっ、装備屋鍛冶屋なんて町中にあるだろうが」

「ありますね、でも正直言ってガッカリでした。わざわざ遠くからドワーフ製の装備を求めてやってきたのにどこも命を預けるに値しないものばかりです」


 ふむ、と店主はソーマを一瞥した。

 デザイン性の無い質実剛健でシンプルなミスリル装備は好感が持てる。一般的に売られている装備で品質を求めるのであれば結局そこに行き着く、というのがソーマの装備であろう。

 だが地味な見た目を嫌って装飾やデザインを施したミスリル装備も世の中には沢山出回っている。

 そうではなく、あくまで品質だけを求めた結果の装備であり、またそれをきちんと使い込んでいるのは悪くなかった。


「若ぇのに言うことは随分一丁前だな、だが着けている防具は嫌いじゃないぜ」

「じゃあお願いできますか」

「断る。こっちは忙しいんだ、早く帰ってくれ」


 そこまで言うと店主は作業に戻っていき、ソーマも一旦諦めて店を出た。


「感じ悪ぃオヤジだったな。壁にあった防具は良さそうだったけどよ」

「うむ、素材を最大限引き出してると言った感じだったのぅ。でもあの調子だと厳しいかの」


 マキナと丸眼鏡も装備の良さは認めているようだが、ああまで言われては難しいと思ったらしい。


「いや、作ってもらう人は決まったよ。あとは何が何でも承諾を得るだけだ」


 そう言ったソーマは、目に情熱の炎を灯していた。



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