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運に寵愛された転換転生者【完結済】  作者: 大沢慎
第3章 ドワーフ国編
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第64話 他の冒険者との仕事は初めてでして


 ソーマ達は街の入り口にある馬車の待機場所に足を運んでいた。

 港町らしく馬車の待機場には数多くの馬車が並んでおり、商人や輸送業者、護衛依頼を受けた冒険者達でごった返している。

 ソーマはその混雑している様子に、東京の街並みを重ねどこか懐かしさすら感じていた。


 馬車も派手なものからシンプルなもの、使い古されたものと様々であり、それは商人や冒険者の見た目も同じであった。

 どこの世界、どこの国に行ってもこういった場所で見栄を張り、力を誇示する人達はいるもんだな、とソーマはギルドからもらった護衛依頼の要綱を見ながら少しうんざりした様子である。


 しばらく探し回った後、ソーマ達は依頼主の馬車が停まっている一角を見つけた。

 御者席に依頼人の名前を書いたボードが立て掛けてあるので、初めて取引する冒険者にも分かりやすいようになっていた。

 馬車は積み荷の真っ最中で、忙しそうにしている業者に声を掛けるのも憚られたためソーマは仕事が落ち着くのを待っていると、向こうがこちらに気付いたのか手を停めてやってきた。


「お、あんたら護衛パーティか?」

「そうです。まだ出発まで時間はありますが一応下見と挨拶に来ました」

「そいつは律儀にありがとな。俺は輸送業者だ、依頼人は商人さんでうちのお得意さんになってる。失礼がないようにな。もうすぐ他の護衛パーティも来ると思うからそっちはそっちで顔合わせしといてくれ」


 ドワーフの男は手短な挨拶の後、せわしなく荷積み作業へと戻った。

 いっそ荷積みも手伝おうかと思ったソーマだが、タダ働きすると他のパーティからナメられるぜとのマキナの忠告に馬車の前で他の護衛パーティを待つこととなった。



 半刻ほど周囲を見学しながら時間を潰していると、他の2パーティが現れて顔合わせとなった。

 1パーティはドワーフ主体の男5人構成で、後衛に獣人を据えている。


「ドワーフを拠点にしているCランクパーティ『鋼の絆』のリーダー、ルゴルだ。護衛依頼は慣れてるし回復もいる」


 皆よろしくと挨拶を交わす中、ソーマはマキナに小声で疑問を投げかける。


(パーティにランクってあるのか? あとパーティ名ってみんな持ってるのか?)

(あ? ギルドにはパーティ登録が出来るだろ。パーティ登録する時にパーティ名も登録するし、ランクもそん時決まるんだ。まあ大体パーティメンバーのランクの平均だな)


 困ったな……とソーマは自分たちの紹介までの間、フルに頭を回転させる。


「昨日ドワーフ国入りしたCランクパーティ『ブルーバード』のリーダー、タスマルク。ドワーフの首都で装備を揃えるために来た。土地勘は無いから隊長は辞退させてもらう」


 次に自己紹介したのはエルフ主体の男女混合4人構成のパーティ。目的はソーマ達と同じらしい。

 紹介の済んだ2パーティがソーマ達を見るので、ソーマが居心地悪そうに前に出る。


「Dランクパーティリーダーのソーマです。パーティ名は……ありません。合同護衛は初なので指揮には従います。宜しくお願いします」


 まあこんなもんかな、と無難な挨拶をしたつもりのソーマだったが、エルフのパーティはクスクスと笑い、鋼の絆に至っては豪快に大笑いをしている。

 マズいことをやらかしたか!? と後ろを見るとマキナは顔を真っ赤にしながら睨んでおり、丸眼鏡に至っては苦笑いをしていた。


「ったく、初心者パーティかよ! まあいいぜ、ドワーフ国で最も安全なルートって言われてる道だ。そんじゃあ指揮は俺が取らせてもらう。良いな?」


 鋼の絆のリーダー、ルゴルがそう言うと、ブルーバードのタスマルクは握手で再度挨拶を交わしている。

 ソーマは何が悪かったのかとタジタジであった。


「てめぇちょっと来い」


 案の定マキナに呼び出しを食らうソーマ。


「はい……」

「おまえよぉ、冒険者はナメられたら終わりだろうが。どこに冒険者同士で敬語使うバカがいるんだ? おかげであたしたちまで笑い者だろ!」


 思えば冒険者パーティというものとまともに交流したことが無い事に気付いたソーマは、次から気をつけますからと平身低頭マキナに謝罪する羽目となった。



 午後2時にソーマ達の護衛隊と馬車は街を出発した。

 馬車は5両編成になっており、先頭に鋼の絆、5両目の殿にブルーバード、3両目にソーマ達が付くことになった。

 パーティ名が無いことからソーマ達は新人さんと呼ばれ、マキナはそれにも憤慨しソーマに怒りをぶつけていた。


 他のパーティは数少ない馬車の空きスペースに荷物を乗せ、休憩は御者席に座り他の者は馬車の左右を歩いているが、ソーマ達は荷物が少ないのでその空きスペースにマキナが寝そべり、御者席の左右にソーマと丸眼鏡が座っていた。


「それにしても護衛依頼ってやることないし暇だし遅いし、俺の性に合わないなあ」


 ソーマの愚痴りに御者が笑う。御者もドワーフで、この運送業者で働く者の一人であった。


「兄ちゃん達、街と街の間は普段何で移動してるんだ?」

「え、普通に走ってます」


 ソーマが答えた瞬間、後ろから寝そべったままのマキナが「おい!」と文句を飛ばす。


「あ、ああ、普通に走ってる」


 今までソーマの敬語に目を瞑ってきたマキナだったが件の自己紹介から冒険者のイロハを徹底的に叩き込んでやると凄まれ、まずは敬語をやめる努力をしているソーマだった。

 何度かそのやり取りを見てる御者のドワーフは都度大笑いし、こりゃ兄ちゃん一生尻に敷かれるなと同情されている。


「しかし走るっても結構距離もあるし荷物もあるだろ、なんで馬を使わないんだ?」

「え、走った方が早いから……?」

「なんでえ兄ちゃん! 馬も使ったことないのかい! ったく、今度うちの馬借りてみな、驚くほど早いからよ!」


 どうも御者は馬を使ったことが無いと思ったらしく、ソーマは目立つのも嫌なので適当に話を合わせることにした。


 陽が沈む前に一団は川の畔の平地で野営をすることとなった。

 港町ノルゴールから首都マグラードまでは約一日半の道程となっており、船が朝に着く日は午後から馬車が出て翌日の夕方には首都に物資が届くというのがこの辺りの運送事情らしい。


 商人や運送業者は専用のテントを馬車から取り出して設営し、他のパーティも各々テントの設営を始めている。

 ソーマ達はテントを持っていないので、適当に距離を取ってソーマが地属性魔法で件のかまくらのような即席の建物を作った。

 それを見ていた他のパーティの連中が、なんだなんだと寄ってくる。


「おいこれ……新人の兄ちゃんが作ったのか?」

「地属性魔法かな? これは便利だ、良かったらうちの魔術師にも教えてくれないか?」


 鋼の絆とブルーバードのリーダーは各々ソーマに話しかける。


「えっと……普通に地属性の低位魔法地壁をこの形に作っただけで難しいことはしてないんだけど」


 ブルーバードのリーダーはメンバーの魔術師と思われるエルフを見る。


「いやいや……普通こんなの絶対作れないし朝まで維持なんて出来ないからね」


 エルフの魔術師は絶対無理だから期待しないでよ、と言った感じでリーダーに答えていた。


 さらに夕食時。

 護衛依頼は基本的に食事は各々で準備することになっている。

 大きな商隊のお得意パーティともなれば食事も手当てのうちとなるが、ギルドを通して一般的に募集される護衛依頼に関しては前述のとおりだ。


 大半のパーティや業者は穀物を固めたクッキーのようなものやフルーツなどが主体で、長期に渡ればそれは干し肉や干し芋、木の実などが主食になるが、ソーマとマキナは鋼の絆のリーダーに確認を取ったのち、近場で大きな鹿を一頭仕留めて持ち帰ってきた。

 近場と言っても5キロほど離れた森まで出向いており、こんな芸当はソーマの超広範囲に渡る風探知でも無ければ不可能である。

 一般的なパーティでもたまたま見つけた動物を仕留めることも無くは無いが、それは火を起こす準備をしているパーティか、もしくは火属性持ちがいる場合に限られるだろう。


 早速鹿を解体したソーマは内臓と野菜を使って精力たっぷりのスープをかまどで作り、肉はバーベキュー形式を取った。

 匂いに釣られてやってきた他のパーティと商人、運送業者にも、ソーマ達だけでは鹿一頭は食べきれないのでバーベキューとスープを振る舞い、結果的に全員でかまどを囲むこととなった。

 運送の途中で美味い飯にありつけるなんてことは滅多にないので、運送業者と商人達は喜んでおり、お礼にと酒をソーマ達に渡していた。


「しかし……こんな鉄の鍋なんか持ち歩いてたのか。呆れたな」


 鋼の絆のリーダーはスープを飲みながらソーマに目をやる。


「いや、鍋も地属性魔法で作ってる」

「そんなの聞いたことねえぞ……。じゃあ鍋を沸かす火と水は持って来てるのか?」

「いや、それも全部魔法で……」


 その話を聞いていた周りにいた全員は心の中で全く同じことを思っていた。

 おまえのパーティーは一体全部で何属性いるんだ、と。

 幸い聞かれることはなかったが、答えはソーマだけで六属性である。

 どうやら一般的な中級冒険者のパーティでは魔術師が一人かせいぜい二人、それも単属性が普通らしく、パーティー内でも二属性あれば良い、三属性あれば羨望の的と言った具合らしい。

 当然上位冒険者パーティとなれば全員合わせて三属性、四属性等というのも増えてくるが、ソーマ達のように全員が三属性以上持ってるなんてことはまず絶対に有り得ない。


 マキナが以前言っていた、Sランクスキルと三属性持ちが如何に世の中で希少価値が高いのかというのが、ソーマには今回の合同護衛依頼を通して分かったような気がした。


 エルフのパーティは男二人女二人でそれぞれ仲が良いのか二人の世界を各々作り上げているが、ドワーフのパーティは獣人もメンバーということもあって丸眼鏡に興味津々で、いつの間にか丸眼鏡が囲まれていた。

 丸眼鏡も母親がドワーフであるが、生まれた時から獣人国で暮らしているため、ドワーフとの交流を楽しんでいる様子である。


 マキナに至っては元々の性格もあるが、どこかエルフとは余所余所しく、またエルフ達も意識的にマキナを避けているようなところがあり、エルフとダークエルフの犬猿の仲というのが伺えた。

 よってソーマは一人ちびちびと酒を飲みながら肉を食っているマキナと火を囲み、旅先の夜の時間を楽しんだ。



いつもお読み頂きありがとうございます!

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