第63話 ドワーフ大陸、上陸
ソーマ達はドワーフ国行きの船のデッキに座りながら、今回の魔族大陸で得たスキルや互いのレベル、ステータスの確認などを行なっていた。
海は凪ぎ、船が静かに波を切って進むその音が心地良い。麗かな陽射しに潮風がちょうど良く、カモメのような白い鳥が船と並走して行く先を案内してくれているようだった。
三人は各々ステータスプレートを眺めながらナッツと丸眼鏡が淹れてくれたお茶をすする。
まず、魔神神殿の復活により魔族の全ステータスが10%上がっている。
世界樹の復活でエルフのステータスも上がっていることから、マキナは約20%ほどステータスが上がっており、三人の中でもステータスに関しては突出していた。
そしておそらく世界樹復活の時のように、全世界の魔物が強化されていることだろう。
そしてついにソーマの闇属性が発現。これによりソーマはおそらくこの世界初の六属性持ちとなる。
これにはマキナも驚きを通り越して呆れていた。丸眼鏡は「まあソーマ殿じゃからのぅ」ともはやなんでもアリのソーマに驚くことすらなかった。
得たスキルはSSランクは『魔族の王』。
効果は『世界樹の救い手』と同じく『???』だ。
次にSランクスキルの『魔神の加護』。
効果は『闇属性の魔法・スキルを取得しやすくなる。闇属性の魔法・スキルの効果が上がり。習熟度が上昇しやすくなる。闇属性の魔法・スキルのMP消費を抑える。闇属性攻撃耐性。(全効果大)』だ。
内容としては世界樹の加護の闇属性バージョンと言った感じで、闇属性を使えない丸眼鏡には恩恵が少ないが、ソーマとマキナにとってはまさしくSランクに相応する効果と言えよう。
そして件の『神に挑みし者』だが、魔神の説明の通り『自分より強い相手と戦う時全ステータス上昇特大』である。
こちらは汎用性が高く効果もシンプルで非常に強力なスキルだ。“自分より強い”というのが何を指すのか分からないが、おそらくほぼほぼ瞬殺した魔神の手先で上昇したのだから、ステータスが自分より高い、という意味ではないかとソーマは思っていた。
さらにBランクスキルの『覇気』。効果は『相手の戦意を喪失させる威圧。威圧耐性小』とある。
ソーマはこの初めてお目にかかるスキルに興味を抱いていた。
まず威圧耐性という言葉。おそらく覇気の下位スキルに威圧というものがあるのだろう。そして耐性小ということはもちろん大や特大もあるので、覇気やその上位スキルも与える効果名は威圧と言うことになり、その効果は戦意を奪うことであろう。
このスキルを取得したのはおそらく魔神のおぞましい咆哮にもめげずに向かっていったことが要因ではないか、と推察している。
ちなみに、もしかするとミスタリレ王も威圧関係のスキルを持っていたのでは、とソーマは考えていた。
あとはマキナと丸眼鏡が魔神から与えられたSランクスキル『限界突破』である。
「神と戦うことで有用なスキルを俺は二つ、二人は三つ得たことになるね。もしかすると特定の敵と戦うことで得られるスキルとかもあるのかも」
「聞いたことあるぜ、強い竜を倒すと『竜殺し』とかな。まあ、本当かどうか分からねぇけど」
「わたくしも一度だけ『竜殺し』というスキルを持った者を見たことがあるのぅ。発現条件はスキル名だけじゃ分からぬが、ヒントにはなりそうじゃの」
なるほどね、とソーマは今回得たスキルなどから情報を分析する。
「にしてもソーマ、おまえSランクスキル諦めて剣士や魔術師の上位スキルの情報だけにして良かったのか?」
「そうだね、まず有効なSランクスキルの存在を知らなかったし、剣士と魔術師の上位スキルはパーティ全員に役立つから、結果的にSランクスキル以上のものを得たと思ってるよ」
丸眼鏡は同意しているようだが、マキナは「あたしならSランクスキルの方が欲しいけどな」と呟いていた。
さて、とソーマはスキル考察を終えて今後の方針に話を移す。
「とりあえず目下の目的は、付き合わせる形になるけど俺の防具かな。それと全員剣術スキルと魔術スキルのランクアップを目指そう。一応俺はほぼ毎日、早朝と夜は稽古するけど参加は自由で」
「夜は参加するぜ、朝は起きれたらな」
「ふむ、ちなみにお二人はかなり熱心に稽古をされるようじゃが、何故強さを求めるのじゃ?」
丸眼鏡の問いに、ソーマとマキナは視線を合わすと各々考え始めた。
「んーそうだね、単純に強くなるのが楽しいってのは大きいかな。まああと今回の魔神戦で結構ヤバかったから、自分と仲間を守りたいってのもあるかな」
「あたしも大体同じだな。あとこれから世界中の聖地を復活させるってんだから、そんだけデカいことやるならいっそ世界最強になりてぇってのも最近思ってるな」
「へー、じゃあ少なくとも俺を倒せないと世界最強にはなれないね」
「あ? おまえはあたしの永遠に勝てないライバルって辺りがお似合いだろうな」
二人は火が付いたのか、ソーマはマキナに負ける気はしないとか、マキナもステータス的には圧倒し過ぎてるから相手にならないとか言い始め、その様子に質問したはずの丸眼鏡は一人大盛り上がりをして興奮していたのだった。
魔族大陸から見てドワーフの国は最も遠い場所に位置する。
まず中央大陸の北西にヒトの領土があり、南にエルフ、北東にドワーフの領土がある。世界樹が復活したのはその中央大陸の中心から南に100kmほどとなる。
人間の国から海を挟んで西側に獣人族の国、そして陸続きで南に魔族大陸があるが、陸続きとは言えその道程は非常に険しいので、獣人族と魔族の国を行き来するには船というのが常識となっていた。
魔族大陸の北東に位置するデュラントからドワーフの国に行くには、獣人属の国と人間の国の間の海を通って北回りになるか、エルフの国の南を通るかとなるが、今回は前者のルートとなっている。
およそ三日間の長い航海を終えたソーマ達を乗せた船は午前10時頃、ドワーフ国北西の港町ノルゴールに着いた。
大量の積み荷が船から降ろされ、様々な場所へ運ばれていく。
魔族は角がある程度でさほど人間と変わらない印象だったが、ドワーフは全体的にかなり背が小さく、そのせいか建物や屋台、テーブルや椅子などの高さも全てが低かった。
街並み全体がそうなので、目新しい光景にソーマは心を躍らせた。
「やっと着いたな。魔族大陸では久々にゆっくりしたいなぁなんて思ってたけど船の上が暇すぎて、なんか色々やりたくなってきたぞ」
「同感だぜ、とりあえず飯食ってギルドでも行くか?」
「うむ、装備なら元火山麓の首都マグラードが鍛治工芸ともに質が良いからの、護衛依頼などあれば良いのじゃが」
三人は伸びをして港町の活気の中、屋台の並ぶ区画へと足を踏み入れた。
ドワーフは酒好き、豪胆というイメージがあったソーマだが、イメージ通りで昼から酒を煽りながら豪快に笑う男たちの姿が目に付く。
丸眼鏡と魔族大陸で行動してた時はは随分背が小さいなと感じていたソーマだが、ドワーフ国に入ると逆に自身やマキナの背の高さが目立ち、それはソーマにとってあまり居心地の良いものではなかった。
「にしても、肉と魚と酒ばっかりだな」
「あたしは好きだけどな、昔はドワーフの国に行くったらこれを楽しみにしていたくらいだ」
「マキナは来たことがあるのか」
「一応海賊だったからな、行ったことないのは魔族大陸くらいなもんで大半の港町は行ったことあるぜ」
なるほど、と得心したソーマは、マキナに店を任せ、おすすめの料理を味わうことにした。
入った屋台は例に漏れず長い髭を蓄えたドワーフのオヤジの店で、常連と思われる客と酒を酌み交わしながらワイワイと切り盛りしている。
マキナが注文すると威勢の良い返事だけが聞こえ、すぐにそれは出てきた。
ぱっと見はビーフシチューのような見た目で肉と芋が豪快に盛り付けてあるそれを、三人は頬張る。
甘辛い濃いめの味付けは酒に合わせているらしいが、肉の旨味がよく出ており、船上の貧相な食事に比べればまさにご馳走であった。
「おう、あんたらさっき着いたのか? 船旅後の食事は格別だろうよ。それにしても時代は変わったねぇ、若い冒険者全員がハーフったぁ俺らの時代じゃ考えられねぇ」
店主の言葉に常連と思わしき客も「違いねぇ!」と笑っている。
どうやらソーマはどこに行ってもハーフに見えるらしいが、だとすると何故王国であそこまでヒト扱いされていたのかが良く分からなかった。もしかすると四属性使いの賢者であれば髪の毛の色以外はヒトであるしそれで押し切ろうという魂胆であったのかもしれない。
女子二人は慣れているのか適当な愛想笑いであしらっている。
美味い飯で腹と心を満たした三人は、店主に礼を言ってギルドへと向かった。
なお支払関係は全て収納持ちの丸眼鏡に任せており、各々自分の手持ちの貨幣を預けることにしている。
ギルドは他の種族と同じ高さで建てられており、中にいる冒険者もドワーフの割合は多いものの他種族もかなり見られ、その様子にソーマは少し安堵した。
「さて、護衛依頼はっと……おお、さすが港町と首都間の護衛依頼、結構あるな」
「そういやおまえ、前回の魔族大陸護衛依頼のあとギルドに行ってないだろ? まずランク上げてもらってからの方が良いんじゃねぇか? 装備もだせぇけどEランク冒険者ってのもナメられるぜ。最低でもCはないとな」
そういうものか、とマキナに従いギルド受付でランク申請を行い、ランクをDに上げてもらう。
その際職員から、Cランクに上がるには一定数の依頼完了ポイントと、貴族や王国からの依頼、それに合同護衛依頼ではなく単独護衛依頼が必要とのことだったが、デュラントからゴルモールへの護衛依頼が獣人国調査団の単独護衛だったので、あとは一定数のポイントがあればCランクに上がるとの説明を受けた。
「あとはポイント貯めればCに上がるって、丸眼鏡もDランクだし、とりあえずポイント貯めるか」
「うむ、わたくしも祖国で王国の依頼と単独護衛依頼は受けておるからの、それで問題なさそうじゃ」
「丸眼鏡って国で働いてたのに冒険者登録もして依頼も受けてたん……あ、ああ……趣味か」
ソーマはそこまで言うと、おそらく数多の冒険者達と交流を持ち、異種族冒険者カップルを追いかけている丸眼鏡の姿を想像して、やっぱり丸眼鏡は丸眼鏡だなと一人納得した。
「んぬふっ! 補助と回復、鑑定持ちは重宝されるのじゃ。じゃが男性が前衛で回復が女性のパーティにはたまに女性から妬まれたのぅ……」
シュンとした様子の丸眼鏡をそのままシュンとさせておくソーマとマキナ。
ソーマはなるべく募集パーティ数の少ない合同護衛依頼の紙を掲示板から剥がし、受付へ持って行った。
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