第62話 丸眼鏡の正式加入
魔神神殿が復活した後、駆け寄って来たディーノ率いる魔族達に絡まれた三人だが、とにかく疲れているので詳しいことは明日! と言ってゴルモールの街に帰ってきた。
三人はまずシャワーに入った後、宿の食堂で祝杯を上げている。
今日ばかりはと食べたいものをひたすら頼み、浴びるように酒を飲む三人。
「っっくぅううう!! やっぱ地上の飯と酒は最っ高だぜ!!」
すでに一人で葡萄酒を一本開けているマキナは、新たに開けた酒ビンを煽りながら満面の笑みを浮かべていた。
ソーマは麦酒、丸眼鏡はドワーフの血が入っているからかおそろしく酒が強く、大きなビンにアルコール度数の高い蒸留酒を何杯も注いではあっという間に飲み干している。
三人が囲う丸テーブルには沢山の料理が並べられ、三人は好きなものを摘みながら、温かく美味しい料理が食べられる喜びを味わっていた。
「それにしても、今回はちょっと疲れたな。しばらくダンジョンは休みたくなったよ」
「そうだな、やっぱ陽の当たらねぇジメジメした所でずっと戦いながら何日も過ごすってのはきっちぃぜ」
「うむ、特に最下層とボス戦は厳しかったからのう……これからお二人はどうされるのじゃ?」
丸眼鏡の問いにマキナは肉の甘辛煮を摘みながら、ソーマに任せるぜ、と答えた。
「そうだなー、そう言えば丸眼鏡のローブってドワーフ大陸で買ったんだろ? 俺もそろそろ王国標準ミスリル装備をやめたいから、ドワーフ大陸でも行ってみようかな」
「一緒に歩いてても恥ずかしいくらいダセェからな、あたしは賛成だぜ」
マキナが悪びれなくそう言うも、ソーマ自身もマキナや丸眼鏡の装備が実用的且つデザインも良かったので、自覚があるのか特に異論は唱えない。
「丸眼鏡は獣人国に帰るのか?」
「あ? 王国の仕事なんてやめちまってあたしらと一緒に来ればいいだろ?」
マキナはさらにソーマに別にいいだろ? と問う。ソーマ自身も既に一緒に死線を潜り抜けた仲間という認識があり、丸眼鏡の持つ魔法やスキルが非常に有用なのでむしろ来れるなら来て欲しいと言った具合だ。
「う、うむ……わたくしとしてもそれは願ったり叶ったりじゃが……本当に良いのかのぅ」
「おいおい随分しおらしいじゃねぇか、いつものヌフッ! のぉぉおお! ってのが来ると思って期待しちまったぜ」
「魔神戦のことか? 気にするな、俺もああは言ってたけど正直めちゃくちゃビビってた。それにSランク挑戦スキルに対威圧系スキルも取得したっぽいし、今後はああいうことも減るだろ。まあ万が一また丸眼鏡がビビってへたり込んでも俺かマキナが張り手してでも立たせるからさ」
丸眼鏡はひとしきり考え込んだあと、覚悟を決めたのか笑顔で答える。
「では……ハワーヌ=ルイ改め、ココネ=ファウエル=グラベルじゃ。よろしく頼むのぅ」
「おう、よろしくな丸眼鏡!」
「心強いよ、よろしく」
三人は再度乾杯し、今後の行き先も決めた後に祝賀会兼歓迎会を存分に楽しんで、ふかふかのベッドで泥のように眠った。
翌日、三人はぐっすりと眠った後にゆっくりと朝食を取り、ディーノ達が拠点にしている魔族の里を訪れた。
相変わらず認知阻害の結界は張ってあるが、中に入れば認識出来るため、わざわざ解除はしていない。
ソーマ達は里の奥の小さな屋敷にて、ディーノとストライカーと向き合っていた。
「それで、本当に魔神神殿は我々が復活させたということで良いんだな?」
「ああ、俺たちからしてもその方が助かるしな」
ディーノとストライカーはその言葉に安堵したようだ。
「しかし……何故他種族のキサマらがわざわざ魔神神殿を復活させたのだ?」
ディーノの問いにそんなことわざわざ言うわけないだろ、とソーマは取り合わない。
「ふむ……して、キサマらはこれからどうするのだ?」
「そうだな、しばらくドワーフ大陸でゆっくりしようかなとは思っている」
ディーノとストライカーは再びソーマの言葉に安堵している。
その様子がソーマは少し気になった。
「俺たちが魔族大陸にいるとなんか不都合でもあるのか?」
「い、いや、そういうわけではない、ただ気になっただけだ」
(ただ気になるわけないだろ、相変わらず分かりやすいやつだな……)
「俺たちは例え魔族が魔族大陸を取り戻そうとしたとしても関係ないからな。魔神神殿復活で全魔族のステータスが10%上がってると思うし、戦争を起こそうとしててもおかしくないだろ。まあ俺たちのパーティは血だけで言えばヒトにダークエルフ、魔族、ドワーフ、獣人がいるわけだし種族間戦争に関わるつもりはないけどね」
「そ、そうか。しかし……いや、此度の魔族神殿の復活、誠に感謝する」
まあいいや、と魔族に挨拶を交わしたソーマ達は再びゴルモールの街へと戻った。
ゴルモールのギルドに寄った三人は、港町デュラントへの護衛依頼を探し、それが無いと分かると疾風を使ってデュラントを目指すことにした。
ゆっくりしても良いのだが、もう用がない魔族大陸に意味もなく長居するのは気が進まなかった上、旅支度をするにしても観光地のゴルモールより港町のデュラントの方が圧倒的に品揃えも良いので、習熟度上げの一環だ、と走っていくことにしたのである。
そもそも一般的なパーティが全員疾風持ちと言うことはまずあり得ないので、パーティ移動は馬車を借りるか護衛依頼が原則だが、ソーマ達に限っては走った方が早い。
ちなみに出立前に丸眼鏡は獣人国宛に、ソーマとマキナのパーティに加入した旨を書いた手紙を出したようだ。
国に遣える者が手紙一枚で突然退職など許されるのかと心配したソーマだが、丸眼鏡曰く「わたくしに限っては全く問題ない」とのことだった。
夕暮れ前にデュラントに着いた三人は今度は乗船場でドワーフ国行きの船の日時を確認し、宿を取った後は各々シャワーや買い出しに回って共に夕食を食べ、ギルドで酒を飲みながら船出までの間に何をするかなどを話し合った。




