第53話 ソーマは敵に回したくない
第15層に転移し、早々に灯篭を打ち上げたソーマはすぐに敵を観察する。
前回丸眼鏡と対峙した骸骨剣士は、今回も双剣を携えてホールの中央で待ち構えていた。
「杖は魔法使うくらいにしか使ってないし、そうなると双剣が続くんだな。あ、あとそう言えばさっき渡した宝玉は各自自分の武器の穴に装着しておいてね」
思い出したと言わんばかりのソーマの言葉に、各々自分の武器の穴に宝玉を装着する。
「さて、じゃあマキナ、ドワーフ製のカットラスを二つ貸してくれないか?」
「あ? 良いけど双剣で戦うのか?」
「せっかく双剣の戦い方しか学んでない相手にわざわざ片手剣とバックラーっていう選択肢を与えるのも勿体ないからね。その代わり碧竜刀は預かっててくれ」
ソーマは碧竜刀をマキナに差し出し、代わりに双剣を受け取る。
「へー結構扱いにくそうだな。じゃあ行ってくるよ」
「負けんなよ!」
負けると思ってないクセに、と二人は視線と笑顔を交わすと、ソーマは両手に双剣を構えてホールへと駆け出した。
「んぬふぅっ!! お二人だけのラブリーサイン……頂いたのじゃぁぁあああ!!!!」
ソーマの背後から聞こえるムードをぶち壊す丸眼鏡の雄叫びを合図(?)に骸骨剣士の眼窩に不気味な光が灯り、ソーマに向かって手を向ける。
ソーマが骸骨剣士の右側に回り込むように水平に動くと、骸骨剣士はソーマの元いた場所を中心に鋭礫嵐を放った。
「お、初めて中位の範囲魔法を使ってきたな。まだまだ制御も雑だけど、やっぱり一番使ってる風と地の複合魔法で来たか」
どうやら骸骨剣士は魔法を放つのに手をかざす必要があるため、ソーマはかざす手の方向に注意しながら位置取りを変えていく。
本来、魔法とは杖のような魔力伝導率の高い武器をかざし、詠唱を全て正確に唱えて発動させるものである。
ソーマやマキナ、丸眼鏡が極端に魔法コントロールに熟達しているのであって、マキナのように双剣を持ちながら無詠唱で高威力の魔法を放つなどは稀有な高等技術に属する。
もちろんエルのように熱心な魔術師は無詠唱でも高火力な魔法を実現させることは可能であるが、基本的に前衛と後衛の役割がきっちり分かれた騎士団や一般的なパーティでは、後衛に詠唱する時間的・精神的余裕が生まれるので、わざわざ魔法の無詠唱発動をモノにしてる人は稀である。
ソーマは魔法が放たれる度に骸骨剣士の魔法発動のクセを掴み、即座に範囲から逃れるように動いていた。
二属性複合の中位魔法はイメージや自身の属性を融合させる都合上、低位の魔法より発動に時間がかかり、そう易々と間髪を容れずに連発出来るものではない。
そのおかげかソーマも避けるごとに余裕が生まれていた。
骸骨剣士は焦れたのか低位魔法に切り替え、風刃や礫弾、火球を放ち始めた。
ソーマはそれをわざと大袈裟な動きで回転しながら双剣で弾いていく。
「あ? なんだあいつ、あれはあたしの真似か?」
「ちと華やかさには欠けるが一応マキナ殿の動きを真似しているようじゃの」
その大袈裟で精彩を欠く動きは、まるでソーマが骸骨剣士に“魔法とはこうやって双剣で防ぐものなんだ”と教え込んでいるようでもあった。
戦う側からすれば、丸眼鏡のように最小限の動きで最大効率の回避や防御をするよりは、初回のマキナのように避けれるものでもわざと剣で弾きに来てくれる方が戦いやすい。
その方が攻撃する側から罠を仕掛け、隙を作りやすいからだ。言い換えれば相手をコントロールしやすい。
現在マキナと丸眼鏡との戦闘を学習している骸骨剣士に、再度マキナのような戦い方を見せることで今後の戦いを有利に進められるよう、ソーマは敵の魔法を全て剣で受けていた。
そうこうしているうちに魔法では勝てないと判断した骸骨剣士は、ついに双剣を抜刀し疾風を纏いソーマに襲い掛かる。
前衛としては剣で応戦したくなるが、相手に剣術を盗まれたくないソーマは逆に双剣を納刀し、素手で逃げ回り始めた。
これは丸眼鏡が取った行動とほとんど同じである。
マキナの時はそもそも、ほとんど剣の打ち合いをせずにトドメを刺しているため、相手の剣術は未だ素人同然であった。
ソーマは、相手が剣で襲い掛かってくる時は逃げるものと教え込むように、間合いを取って逃げ回る。
こちらの戦い方をトレースするという特徴を逆手に取る形で、どんどん後半に戦いやすくなるような学習をさせていっているのである。
しばらく逃げ回った後、大振りの一撃を交わした瞬間に一気に詰め寄り、やはり背骨に向けて風と地の中位複合魔法である穿通礫錐を局所的に放ち、一撃で骸骨剣士を沈めた。
ソーマは納刀した双剣を頭上に掲げ、二人に向かって笑顔を見せる。
「ずいぶん普段とは違ぇ立ち回りしてたな、相手が剣抜いた時に納刀した時は驚いたぜ」
「あとで戦いやすくなるように、なるべくこっちが有利になることをトレースさせたくてね」
「ううむ、ソーマ殿を敵に回すことだけは避けたいのう」
「あたしも御免だな。戦いにくそうったらありゃしねぇ」
褒められてるのか貶されてるのか分からないソーマは、とりあえず預かってもらっていた碧竜刀と双剣を交換し、宝箱の元へ二人を促した。
順番的には丸眼鏡が宝箱を開ける順である。
「ううむ、キーアイテムと思われる剣と鎧が出てることを考えると、双剣ならもう一本くらい剣が必要かの。兜もあるかもしれぬし、そろそろ引いておきたいのう」
「おう丸眼鏡、あたしばっかり魔神装備引いてっからそろそろ引いてくれよ」
慎重派の丸眼鏡は早めに揃えておきたいとのことだが、ソーマは別に最後までに揃えば良いんじゃない、と楽観的であった。
「わたくしもそろそろお二人のお役に立てる代物を出したいのう……では」
丸眼鏡はそう言ってパーティ恒例の祈りの言葉を口にした後、宝箱を開けた。
なんとそこには……!!
「……のぉおおおお!! こ、これはまさかっ!!!!」
「なんだなんだ!? おいまさかまたあたしを差し置いてレアアイテムか!?」
「おいおい、俺の防具を差し置いてカッコいい最強のローブとか出してないよな?」
丸眼鏡の驚き様に後ろの二人も何が出たのかと覗き込む。
そこには一冊の本があった。
「こ、こ、これはじゃの!! ツクヨミ=ルイ先生のデビュー作である、あの伝説の初回限定イラスト&直筆サイン入り小説じゃ!! ツクヨミ先生の書く異種族ハーフカップルのプラトニックラブリー冒険モノが大好きでのぅ……しかし余りに人気ゆえ初回限定版の抽選に漏れて……ハワーヌ=ルイ、ダンジョンに潜って今日ほど幸せな――――……ん? ソーマ殿? マキナ殿? あれ……お二人ともどこに……の、のぉぉおおおおおおお!! 置いてかないでくだされぇえええええ!!!!」
一人15層に残された丸眼鏡は大切そうに小説をムフフの袋に仕舞い、慌てて第16層へと転移したのであった。
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